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スコープはなに?(町内会運営委員会の出来事)

プラネット株式会社 中 憲治 [プロフィール] :7月号

私の住む住宅団地は、茨城県南部に位置し、1980年頃から開発が始まり、約15年の年月を経て約2000世帯の一戸建て住宅で構成されている。世帯主の多くは東京都内への通勤者が多く、私が引っ越してきた1990年頃は、約8割の世帯主がいわゆる「茨城都民」で構成されていた。それから四半世紀の時が流れ、高齢化と少子化の波に襲われている。最初からの住民は高齢化し、その2世は学校卒業後、就職のために別居し、二世帯住宅はあっても、そのほとんどは、80~90歳代の親と50~60歳代の子の二世帯である。
今年は輪番制の町内会班長の役が回ってきた。少しはボランティアもやりなさいとの妻の命令で、総務班の副部長役に手を挙げ、4月から月1回開催される町内会運営委員会に出席している。町内会では、高齢化対策を重点施策として、子育て世代の呼び込み施策や、近隣大学の学生を対象にした、空き家をシェアハウスとして提供するなどの施策を行っている。
6月の運営委員会に於いて、町内会会長から新たな課題が提起された。
「空き家問題」である。空き家になった理由は様々だと思われるが、現在2000世帯の内、約3~4%が「空き家」になっている。この「空き家」がもたらす問題は多い。①樹木・植栽が茂り歩道をふさぐ。②不審者などが入り込み、町の防犯の妨げになる。などである。町内会長の問題提起は、「空き家問題」があることは理解したが、それで、相談の内容が何をしたくて、この問題を提起したのか、目標(スコープ)がはっきりしないままに現状報告のみ行われ、それに乗っかるように運営員会メンバーからは、様々な意見が出てきた。「市行政が行う問題である。」「空き家だけでなく、居住者が明らかな住宅でも、樹木の問題はある。」「持ち主に切らせる方法はないのか。」等々。目標を明確にするどころか、解決策の意見まで出てくる始末で、時間は無駄に費やされた。あまりの問題の拡散状態に陥った状況に業を煮やしメンバーから、「なにが問題なの?」「結局、会長は何がやりたいの?」との疑問が投げかけられたのち、幾つかの質問・回答が繰り返され、状況は収束に向かい、「空き家の実態調査を行いたい。その状況に応じて、市行政への対策の要望を取りまとめたい」こと。「そのために空き家問題対策チーム(プロジェクト・チーム)を編成したい」ことの2点が目標であることが判明した。
この問題にかけた時間は約60分。最初から目標(スコープ)をはっきり提示しておけば 15分~20分で済んだのにとの感想を懐いた。もっとも、「空き家」の正確な把握は行われていなくて、プロジェクト・チーム立ち上げまでにそれを行うとの約束がなされたが、 どこまでを対象とするのか、プロジェクト・チームの中でもまだまだ一モメも二モメもありそうである。

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