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モチベーションを高める力

井上 多恵子 [プロフィール] :7月号

 職場で、やる気が出なくなって困ったことはありませんか?私も時々あります。そんなエネルギーが必要だなと思った時に、元気をもらうために、最近活用しているものをご紹介します。”Alive at Work: The Neuroscience of Helping Your People Love What They Do”という題名の本の表紙を見ることをしています。表紙の写真を下に掲載しました。目が覚めるような原色の黄色に、ピンク色で文字が書かれています。ロンドン・ビジネス・スクールのダン・ケーブル教授が書いた本で、今年の3月末に出版されたばかりです。まだ世に送り出されて間もないので、恐らく日本語訳本もまだ出ていないと思います。題名を和訳すると、「職場で生き生きとした状態でいる!仕事を人々が愛せるように支援するための脳科学」といった感じになるでしょうか。かつてダニエル・ピンク氏が「モチベーション3.0」という本を執筆して日本でも話題になりましたが、この本には、彼の推薦文も掲載されています。

Alive at Work: The Neuroscience of Helping Your People Love What They Do
 
 私自身は、仕事の関係もあって、ロンドン・ビジネス・スクールから届いたメルマガにリンクが貼られていた著者のインタビューに関心を持ち、聴いてみました。その際に、著者のエネルギーに魅了され、「こんな素敵な著者によって書かれた本は、社員のエンゲージメントを高める仕事をしている私にきっと、役に立つはず!」という熱い想いで、本をすぐに海外から取り寄せたのです。先日読み終えた同著から、多くの学びを得ることができました。日本語の訳本がまだでていないと思いますので、先行して、これから何回かに分けて、この本から得た学びとそれから考えたことを皆さんと共有していきたいと思います。
 “People don’t leave the company-they leave their managers.”(人々は会社を去るのではない彼らのマネジャーの元を去るのだ)こういった表現を用いて、マネジャーの大事さについて語っている記事をここ最近何回か目にしました。結構重い表現ですよね。マネジャーの関わり方が、社員が会社に残り続けるか否かを決める、、、辞めないまでも、社員のモチベーションには、マネジャーの関わり方は大きな影響を与えそうです。”Alive at Work”の著者は、サーバント・リーダーシップの実践を薦めています。DIAMOND 2018年05月30日付けハーバードビジネスレビューに、「従業員の能力を最大限に引き出す、サーバントリーダーシップの実践法」と題して、著者ダン・ケーブル氏のインタビュー記事が掲載されているのを見つけましたので、参考までにリンクを貼っておきます。
 ダン・ケーブル氏は、現代のマネジャーの役割は、各人がDNAの中に持っているSeeking System(探求するシステム)をlight up(火を灯す=活性化)することだと言います。彼は、人々が求めている自分自身を表現したり、探索したりする行為を職場で可能にすることによって、社員のモチベーションを高めることができる、ということを脳科学や様々な実験に基づいて、語っています。一方、一般的に多くのマネジャーがやっていることは、各人がDNAの中に持っているSeeking System(探求するシステム)をshut down(シャットダウン)している、というのが彼の主張です。Seeking System(探求するシステム)をshut down(シャットダウン)するやり方が極めて上手く機能した時代もあったけれど、変化が激しくイノベーションが求められている今日では、逆効果であると彼は言っています。
 ”Alive at Work”=職場で社員が生き生きしている状態を目指すための具体的な方法を事例に基づいて、彼は紹介しています。その中で最も簡単に、かつ、コストがかからずにできるなと私が感じたのが、マネジャーが会議の冒頭に言うと良いある表現です。会議の冒頭、業務の進捗確認や、上手くいっていないことをいきなり指摘する代わりに、”How can I help you to be more successful at work?”(あなたが仕事をもっと上手くできるようにするために、私が取ったらいい方法は何ですか?)といったような言葉をマネジャーが述べることを彼は薦めています。サーバントリーダーシップを簡単に実践する方法です。これを継続して行ったある会社では、社員のやる気が俄然変わったといいます。だいぶ前に私が所属していた部署では、定例会議の際に誰かがやり玉にあげられていました。「今度は誰が叱られるのだろう」とびくびくしながら、私を含め部員達は会議に参加していました。そんな中では、クリエイティブな発言なんて出ないですよね。それに比べて、”How can I help you to be more successful at work?”と言われたらどうでしょうか?本気で上司がそう言っている、と感じることができたなら、「上司に相談してみよう。」と思えたりしませんか?そして、「言っても何も変わらない」というあきらめモードから、「もっといい仕事をするために、何が必要だろう?」と一生懸命、そして楽しみながら考えることができるモードに変わりませんか?早速職場で、賛同するマネジャーを探して実験してみたいと思っています。
 皆さんもいかがですか?貴方がプロジェクトマネジャーならば、チャンスです。”How can I help you to be more successful at work?”を繰り返し言ってみませんか?本で紹介されている例でも最初は懐疑的だったメンバーたちも、実際に言ったことが取り上げられていることを見ることで変わっていったといいます。ぜひトライしてみてください!

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