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東京P2M研究会 渡辺 貢成: 6月号

Z. Iさん!
先月号の『子ども自然塾報告書』は面白かった。読者のために簡単に先月号の中から要約を説明しておこう。
子ども自然塾:子ども達が自然を体で感じ、好奇心や創造性を伸ばし、「伸び伸びと遊べる環境をつくる」ことで有志が集まり、2015年7月に会を設立
子どもたちの遊ぶ環境の変化:
i. 以前は子どもたちが地域の中で、仲間と共に生き生きと遊ぶことができた。
  「考える」、「工夫する」「思い通りにいかない」「気持ちを察する」「仲間と共感する」
  「危険を回避する」・・・など様々な力を自然に身に着けて成長してきた。
  「遊ぶことの力」が「生きていく力」になっていた。1960年~80年
ii. 2000年以降:家で遊ぶ
  少子化や社会環境の変化により、自然の中で遊ぶ環境が失われている。
  大人の決めた時間の中で生活している。
  自分でやりたいと決めて、自由に遊ぶことができない。
この時代は偏差値「教育」優先で、大人が教え育てる。大人に意思があり、マイナスな価値は否定された
iii. 自然塾では「遊育」:遊びで育つ根っこの力をつくる
  自然塾は「教育」でなく「遊育」で、遊びを通じて、自分の世界を広げ、深る。
  子供はもっと育ちたい気持ちがあり、それを生かせば、自分で自分を育てる。
  子供がやったことがないことばかりで、限界より少し上をやることに集中する。
  遊ぶことで、根っこの力が付く。
  自分で新たなものを生み出す、集中する、五感を通じて感じる。
  コミュニケーションを取り、ルールは自分達でつくる。異質なものを受け入れる。
まとめ
子ども自然塾は積極的に活動し、ある程度の成果をあげている。このような活動は日本的ムラ社会の人々に一矢報いる有利な材料になると思うがどうかね。
I. 私がこのP2M戦略のエッセイを書いている真の目的とは:
 ご意見ありがとうございます。解説で以前の子どもは地域の中で生き生きと遊ぶことができたとあったが、当時の子どもの遊びには“ガキ大将”の存在が大きかった。ガキ大将は偏差値教育時代以前の子どもで、成績が優秀であったわけではない。P2M的見方で言うと、高IQ型ではなく、高コンピテンシー(実践力)型の人材だった。
 再生協議会で、私が求めているのはこのような人材です。
 日本人がグローバル競争に弱いのは、教えられた戦略を、忠実に駆使し、状況の変化に対する工夫をすることなしに、そのまま継続して使っていたため、敵方に戦略が見破られ常に負けていました。しかし未だにその欠点が理解されていません。それは学ぶということの本当の意味を理解していないからです。
 孫子は自らの兵法を誰にも教えませんでした。兵法を教えたら、戦いに負けるからです。しかし高偏差値型人材が日本の官僚組織を始め、マスコミ、大企業の幹部を占めてしまったため、彼らのプライドは高く、負けても、負けても戦略を変えません。
 P2Mでいう実践力的人材(PMR)の戦略とは、まず、現状の把握を重視します。自分が実践したい事柄を成功させるには、現在の環境の中で、協力してくれる人材を見つけ、綿密に計画し、時が来るのを待ちます。大切なのは時が来る、その潮時を感知できる能力が実践力の一部です。私の経験からすると、潮時がわかります。新聞にそれに関した記事が出始める。出版の新聞広告が出始める。町中や車中の広告でよく見かけるようになる等です。
 今の私が再生協議会で鳴りをひそめながら時期を待っています。その理由は日本の多くの組織は「メンバーシップ型組織」で、人を管理する組織だからです。そのため経験のない案件、手の込んだ案件は取り扱いません。
 欧米流の戦略論では「ジョブ型組織」で、政策が決まるとそれに適したプロジェクトが結成されます。彼らの社会では多くの場合先手必勝だからです。
Z. Iさんがこのエッセイを書いている真の理由が、戦略とは学んだ通りには運ばない。
タイミングが重要であるということを伝える目的であった。今までの行動を見ていると歯切れの悪いやり方のように思えていたが、ある意味で分かった気がする。
I. 再生協議会の6つの部会のプロジェクトは本年度で終了します。そして6つのプロジェクトは現在のところ目標通りの成果を収めることになります。
Z. それは目出度い話だ。それでは町の財政が拡大できるという話になったわけかな。
I. ここが日本的ムラ社会の特徴です6つのプロジェクトの目標は達成されますが、町の収益が向上することはありません。
Z. この町の戦略的課題とは『人口減による町の収入減を解消する新しい収入源を定めるプロジェクトが実施されたのとは違うのかね。
I. 再生協議会はプロジェクトの目標を定めましたが、P2Mでいう、使命・目的・目標の3部作の内、ビジョン、目的は決定しませんでした。
Z. 何故かね。
I. 都道府県では昔から素晴らしいビジョンを提示しています。しかし、内容をみますと、どの県でも同じようなビジョンで「明るい県政、住民に優しい政策」などと絵空事が書かれています。従ってビジョンという言葉を口にすると、人人から大法螺吹きと認定されてしまいます。また、多くの日本のプロジェクトは目標を設定しますが、目的を書かないことが多いようです。今の再生協議会は立派に目標を達成しています。しかい、町が求めている目的は『人口減による、町の収入減を、何らかの細工をして。予算低減を食い止めることです。しかし、プロジェクトが求めていたのは、決められた工期と予算という目標です。この目標は達成されています。しかし、目的の町の予算の削減停止は達成されていません。
Z. それでは目的が達成されないではないか?
I. 再生協議会が故意に行ったわけではないのですが、すべて日本の官僚組織は目的を曖昧にすることで、権力を保持しているわけです。協議会も官僚機構に反対することはできません。目的抜きでプロジェクト目標値を示せば、曖昧のまま課題をかくすことができます。
Z. Iさんはどのような対応をするつもりですか。
I. 幸い、この11月が町長選挙です。その対応として、近々町長が再生協議会の成果について報告することがあるようです。
Z. それは絶好の機会ですね。
I. その通りですが、提案の仕方を間違えると、これまでの努力が水泡に帰します。そこが難しいところです。戦術としては、再生協議会を持ちあげて、次に進むという手法を採用します。
Z. それではムラ社会的ではないかね。
I. 思案のしどころです。私の周辺に仲間が2人いたら、切り込みます。すでに企画案がありますから。しかし、現在企画案を誰にも見せていない状況なので無理でしょう。
Z. 日本的ムラ社会的手法ではどうするのかな?
I. 現状のチームは優秀な人材の宝庫です。しかし、高度なプロジェクトマネジメントの経験はありませんでした。協議会は今回の経験を積んだため、より高度な要求に対応できると思いますと推奨します。
Z. 慎重に行動してください。期待しています。

以上

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