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「エンタテイメント論」(123)

川勝 良昭 Yoshiaki Kawakatsu [プロフィール] :6月号

エンタテイメント論


第 2 部 エンタテイメント論の本質

6 創造
発想阻害排除法④-4
④優れた発想は、発想を阻害する「環境」を排除し、発想に集中する事に依って生まれる。
●発想と失敗
 前号で発想を阻害する現状維持主義、権威主義、官僚主義、既得権益主義について論説した。また現存する多くの発想法は、①「優れた発想(思考)を如何に生み出すか?」と云う事ばかりに偏重していること、②「優れた発想を如何に実現させ、成功させるか?」と云う「優れた発汗(行動)」への考察を全く欠落させていること、③優れた発想(思考)と発汗(行動)を根底から失敗させ、破壊する人物の「失敗工作や破壊工作を如何に防止し、排除するか?」への考察も全く無いことを述べた。更にこの失敗工作や破壊工作を防ぐ方策を説いたものが「(抗)悪夢工学」である事も紹介した。悪夢工学の詳説は、本稿の目的に照らし、別の機会としたい。

 本号では「失敗」と「発想」の関連について論説する。結論を先に言う。誰しも失敗する。失敗しない人物はこの世に存在しない。しかし失敗を許さない環境や組織では、誰しも失敗を恐れ、優れた発想(思考)と発汗(行動)をしなくなる。その様な環境と組織こそが発想の阻害要因になる。

出典:失敗とは failure&fr=uh3_news_web 出典:失敗とは
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●失敗する事と失敗させられる事
 失敗する事と失敗させられる事は、天と地の差がある。失敗の結果は同じでも、失敗の本質は異なり、その原因も異なり、それぞれの失敗から生み出される影響も全く異なる。前者の失敗は不注意であっても、所謂「善意の失敗」である。後者の失敗は、意図的で所謂「悪意の失敗」である。どの様な組織でも、残念なことに、悪意の失敗が実存する。

 前者の「善意の失敗」を防ぐための「在り方」と「やり方」を説いたものが「失敗学(畑村洋太郎)」である。後者の「悪意の失敗」を防ぐためのそれらを説いたものが、既述の通り、「悪夢工学」である。この両者は、お互いに補完関係に合って「失敗」を防ぐ事を筆者と畑村教授は別途確認し合っている。従って「夢のプロジェクト」は、「夢工学」や「夢工学式発想法」だけでなく、「失敗学」と「悪夢工学」の助けに依って実現させ、成功させるのが早道であると確信する。

出典:失敗学のすすめ 畑村洋太郎 出版:講談社 出典:夢と悪夢の経営戦略 (悪夢工学を含む)川勝良昭  出版:亜細亜大学・購買部
出典:失敗学のすすめ 畑村洋太郎
出版:講談社
出典:夢と悪夢の経営戦略(悪夢工学を含む)
川勝良昭  出版:亜細亜大学・購買部

●優れた発想(思考)と発汗(行動)を阻害する「環境」
 失敗しない人物は、この世に存在しない。従って誰しも「優れた発想と発汗」に失敗する事は避けられない。しかし筆者は、その様な事を主張しようとしている訳ではない。主張したい事は以下の事である。

 自分自身に起因する失敗、他者に起因する失敗、他者の悪意で失敗させられた失敗のいずれであっても、「失敗」そのものを絶対に許さない環境、一度失敗すると二度と敗者復活できない環境の下の組織やグループでは、誰しも失敗を恐れ、「自由発想」をしない。たとえ優れた発想を生み出しても、その実現と成功の為に「汗と涙と血」を流す様な挑戦的行動をしない。

 「失敗」を容認し、再度、挑戦させる機会を組織として、グループとして与えない限り、人は動かない。

 最近の日本の企業は、国際競争力を大きく失った。また過去30年間で世界に誇れる、世界に普及した新しい商品、製品、サービス、そして事業は殆ど生まれなかった。その原因の一つが自ら「失敗」する事を覚悟し、部下の「失敗」を容認し、共に再挑戦する経営者が殆ど居なかったためである。情けない限りである。しかし失敗すると内外から批判ばかりする。No Blaming運動を起こさない限り、優れた発想(思考)と発汗(行動)は起こらない。

出典:失敗を容認する運動 organization+not+allowed+failureuploads 出典:失敗を容認する運動
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●失敗を容認する環境作りと組織作り
 人の失敗を密かに喜ぶ心理、人を蹴落とし自分さえ良ければと密かに思う心、人が困っているのに助けない自己中心主義など、所謂「利他心ゼロ%、利己心100%」の人物で構成されている組織やグループは、歪んだ目的、利己の目的で「思考」し、「行動」する。この様な組織やグループは優れた発想も、優れた発汗に依る新規事業を生み出せないが、既存事業や既存行政などの中で「ヌクヌク」と生き永らえる。

 以上の様な利己心の人物は、共通して周囲に自分の「本性」が悟られない様に細心の注意を払う。そして「最大の利」を得るための思考と行動を実践する。この点では「優れた悪意の発想と行動」に長けている。そして「自分の失敗」は他者に容認させ、「他者の失敗」は厳しく糾弾する。この種の人物は、悪夢工学では、最強最悪のB型の人物と定義している(血液型とは無関係)。

 失敗を容認する環境作りと組織作りには、利己心の人物を識別し、排除する一方、利他心の人物を識別し、参画させることが基本中の基本である。しかし会社、官庁、大学などに於いて、実際にその様な環境作りと組織作りをすることは、容易ではない。なお悪夢工学ではこの識別の在り方とやり方を説いている。興味のある読者はPMAJ事務局を通じて筆者にコンタクトする事が可能である。

●組織内教育
 大企業でも、中小企業でも、その会社の社長や役員が利己心の人物である場合は、その悪影響が部下の管理者や一般社員に浸透する。そして遅かれ早かれ、その様な悪影響の蓄積が「社内不祥事」の形で表面化する。と同時にほぼ絶望的な結果を招く。

 多くの日本の企業、官庁、大学等は、上記の不祥事問題を含め、深刻な問題を解決するため、また将来への発展のため「役員教育」、「幹部職員教育」、「管理者教育」、「一般社員教育」、「一般職員教育」などを熱心に実施している。

 しかし筆者の知る限り、受講者は教育を受けた時は「やり気」を起こすが、元の職場に戻ると、「元の木阿弥」となり、殆ど効果を出していない。これらの組織内教育に協力している教育会社だけが儲けている。

 ついては、多くの教育会社が全く実施していない「新しい教育」を提言したい。

 それは「利己心認識&排除教育」、「利他心獲得&活用促進教育」、それに基づく「創造性開発&活用促進教育」などを実施することである。またこの教育を受けた人物が元の職場に戻った時、その教育内容を他の役員や社員等に教える責任を負わせることである。ちなみにKJ法やNM法は、このやり方で全国に普及した。

●武士道の教育
 ケント・ギルバートは、昨年(2017年)、「儒教に支配された中国人と韓国人の悲劇」を出版した。彼はその著書の中で以下のことを主張している。

 現在の中国人や韓国人は、彼等の伝統の教えである「儒教」を曲解し、「利己主義」ばかり主張する国民に成り下がり、多くの悲劇を生み出している。しかも多くの国の人々から多くの批判を受けている。

 一方日本人は「儒教」の良い面を取り入れる一方、世界に誇れる「利他主義」を根幹とする「武士道」を確立させ、その精神が現代の日本人の精神構造に伝承されている。その結果、多くの日本人は、礼節を保ち、思いやりのある行動をすると多くの国の人々から高い評価を受けている。

 彼は、「日本人よ、誇りと自信を持って、アジアの超先進国として世界に向き合い、世界を指導せよ」と訴えている。

 筆者は、上記の提言に以下の事を追加提言したい。

 日本の企業、官庁、大学等に於ける役員教育、幹部職員教育、管理者教育、一般教育などに日本の精神伝統である「武士道」の「あり方」と「やり方」を導入してはどうか。その導入に際しては、現代の若者、中高年を問わず、誰にでも分かり易い形での言語表現の教育内容に置換する必要がある事は言うまでもない。

出典:ラスト侍&武士道 last+samurai+images&fr& bushido&fr=uh3_news_web 出典:儒教に支配された中国人と韓国人の悲劇 ケント・ギルバート著 出版:講談社
出典:ラスト侍&武士道
last+samurai+images&fr&
bushido&fr=uh3_news_web
出典:儒教に支配された中国人と
韓国人の悲劇
ケント・ギルバート著 出版:講談社

つづく

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