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「エンタテイメント論」(122)

川勝 良昭 Yoshiaki Kawakatsu [プロフィール] :5月号

エンタテイメント論


第 2 部 エンタテイメント論の本質

6 創造
発想阻害排除法④-3
④優れた発想は、発想を阻害する「環境」を排除し、発想に集中する事に依って生まれる。
●発想を妨げる現状維持主義、権威主義、官僚主義、既得権益主義
 先月号では、「島国根性」のネガティブな側面が発想を妨げ、ポジティブな側面が発想を促進する事を種々の観点から解説した。是非、参考にして欲しい。

 今月号では、発想を妨げる「現状維持主義」、「権威主義」、「官僚主義」、「既得権益主義」について解説したい。また発想を妨げる要因を如何に排除し、発想を促進するか?も解説したい。

出典:アイデア・キラー person+who+kill+an+idea Fmedia.licdn.com 出典:アイデア・キラー
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●現状維持主義
 現状維持主義とは、変化を恐れ、未知や未体験を避け、現状を維持する事こそが最善と判断して行動する「在り方」を云う。

 「新しい事を考え、工夫する暇があるなら、眼の前のお客様を捕まえ、今の売上を死守せよ!」と社長からの激が飛ぶ。社員は「その通りだ。新しい事は俺の部の仕事でない。新規事業部の仕事だ」と、アイデア創出も、工夫も止め、今まで通りの知識や経験を基に頑張る。どこの会社でも見られる現状維持の光景である。

 一方世界は今、国家間、都市間、企業間で、多くの分野で、本格的、挑戦的、激烈な競争をしている。多くの日本人はその事を正確に認識していない。

 例えば新しい都市開発競争では東京は完全に「蚊帳の外」である。「そんな事はない。東京はオリンピック2020を基に新都市開発をしている」と反論するだろう。しかしそもそもオリンピックは「単なるイベント」に過ぎない。終われば「宴の後」となる。オリンピックなど本来は関係ない。

 一刻も早く、本格的、挑戦的、「夢」のある新都市開発に挑戦しないと世界に追い付けない。新都市こそが世界から優れた人材、アイデア、技術、資本、そして事業を集めるからだ。現在、世界の人口の半分が都市に集っている。2050年には都市の人口が世界の人口の3分の2に達するのである(国連2012年発表)。東京再生こそ最優先開発国家戦略とすべきである。そんな事を誰も主張しない。

 更に日本人の多くが認識を欠如させている事がある。日本は、明治維新と戦時を除き、ほぼ全ての分野と階層に於いて現代史上初の「構造的危機」に直面したことだ。筆者は、この事を約30年前から指摘してきたが危機脱出の試みは殆どなされていない。多くの日本人が好まない「革命的」な「自己改革」を断行せず、「今のまま(現状維持)」で推移すると、日本は遠からず、アジアの小国に凋落する(危機内容は別の機会に説明)。この様な主張も聞かれない。

 安全・安定・安心の「現状維持経営」は、完全に「後退経営」である。自社が現状維持で幾ら頑張っても、自社を取り巻く事業環境が日々激変して先に行く。新しい挑戦をしないと「蚊帳の外」になる。ならば「現状改善経営」はどうか? 改善のレベルを遥かに超える革命的な進化が起こっているから、改善でなく、挑戦でなければ、真のビジネス・イノベーションを実現できない。

出典:成長の為の挑戦(詩)sorenlauritzen.com challenge-green-leaves 出典:成長の為の挑戦(詩)
sorenlauritzen.com
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 不安全・不安定・不安を覚悟し、未知基準の挑戦型の「夢実現経営」こそ時代を先取りし、競争に勝てる経営になる。この勝利には「優れた発想(思考)」と夢実現に汗と涙と血を喜んで流す人物に依る「優れた発汗(行動)」が不可欠である。

 現状維持主義は、既述の通り、激変の現在では、まさしく後退を意味する。言い換えれば、現状を維持すること自体が出来ない事態になっていると云う事である。従って是が非でも、既存事業分野でも、新規事業分野は当然として、新しい事業を開発し、激変に耐える、「夢」の未来の事業を創り出さねばならない。

 現状維持を打破するには、クリ―カットな解決策はない。上記の基本認識を、例えば会社の場合は社長が、役所の場合は知事が管理者に、管理者は末端社員や職員に、それぞれ、常々、執拗に、徹底して教え込み、行動させることである。この徹底方法以外に「優れた発想(思考)」と「優れた発汗(行動)」を生み出す方法は実存しない。この事も社長や知事や管理者が認識する事は更に重要である。

●権威主義
 権威(Authority)とは、相手に自発的、自主的に同意や服従を促す様な能力や対人関係を云う。一方権力(Power)とは、相手に威嚇、脅迫、武力等によって他発的、強制的に同意や服従を促す様な能力や対人関係を云う。なお権威は、特定の分野などで精通して専門的知識・経験を有する人を称する場合もある。

 権威主義とは、権威に服従すると云う個人の思考や行動、またその様な個人が形成する組織体制の思考や行動の「在り方」をそれぞれ意味する。権威を重視する個人や組織は、権威を軸にしたヒエラルキーを形成し、「エリート主義」も醸成する。

出典:権威主義 Authority differencebetween. Fimages 出典:権威主義
Authority
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 権威主義の具体例では、外国の学者の権威に頼る日本の学者、権威に弱く、庶民に横柄なジャーナリスト、権威に頼る無批判の一般人、社長のトラの威を借りて部下を使う管理者、職場の上司の意向や言動を盲目的に受け入れる部下、部下に反論を許さない上司、上司にはペコペコするが、部下に威張り散らす管理者となどを云う。

 権威主義が組織内に醸成されると、権力主義や歪んだエリート主義を生み、固定化され、長期化される。その結果、「発想」を阻害するだけでなく、「個人の自由」を奪い、「個人の自発性」を抑圧し、「組織運営の障害」を招く。それが続くと、遂には「組織の崩壊」をもたらす。崩壊とは会社の場合は倒産を意味する。

 権威主義を打破するには、クリ―カットな解決策はない。しかし会社の場合は社員が、役所の場合は職員が一人、一人自らの仕事を見直し、オープンに発言し、議論し、お互いを尊重する姿勢を貫き、新しい事に挑戦する事を多くの学者やコンサルタントが説いている。

 以上の様な立派な社員や職員がいる場合は猶更、社長や知事は管理者に、管理者は末端社員や職員に、それぞれ、常々、執拗に、徹底して権威主義を排除せよと教え込み、行動させることである。その結果、以上の様な立派な社員や職員の言動を後押しすることになる。この徹底方法以外に「優れた発想(思考)」と「優れた発汗(行動)」を生み出す方法は実存しない。この事も社長や知事や管理者が認識する事は更に重要である。

●官僚主義
 官僚主義とは、政治家、官僚などが政治組織や官僚組織で特有の思考と行動をする「在り方」を云う。

 官僚主義の特有の思考と行動の具体例とは、権威服従、先例主義、独善性、秘密主義、形式重視、新しい試みへの拒否主義、業界横並び主義、手続重視主義、派閥意識、縄張り根性、役得利用、傲慢、威張るなどである。
出典:身動きさせない官僚主義 red+tapes wordpress.com. 出典:身動きさせない
官僚主義
red+tapes wordpress.com.

 官僚主義は、日本の官庁、大会社 大学、病院など多くの組織にのさばる。日頃から何らかの対策を打たないと直ぐに蔓延する厄介な主義である。それは、権威主義や権力主義と容易に結び付く。それは「発想」を阻害するだけでなく、「個人の自由」を奪い、「個人の自発性」を抑圧し、「健全な組織運営」を阻害する。これが続くと、「組織の堕落」が起こり、遂には「組織の崩壊」に直面する。崩壊とは会社の場合、倒産を意味する。

 官僚主義の打破には、クリ―カットな解決策はない。上記と同様、社長や知事が管理者に、管理者は末端社員や職員に官僚主義にならない教育をし、行動させる事を徹底する。この徹底方法以外の方法は実存しない。

●既得権益主義
 既得権益主義とは、特定の個人や地域社会の集団が何等かの根拠で以前から得ている権利に基づき利益を守る「在り方」を云う。何等かの根拠とは、法的な理由や慣習などを云う。

 さてこの「既得権」は、そもそも法的に保護されるべきものか?また如何に保護されるべきか?立法論上と解釈論上で議論された。近代自然法論者は、私的所有権として自然法上の当然「不可侵性」を持った保護されるべき権利であると主張した。しかし法実証主義者、社会連帯主義者、社会主義者などから厳しく批判され、現在は「不可侵性」を持った当然保護されるべき権利とは認められていない。

 しかし法律改正や解釈の変更などが生じた時、既得権をどのように扱い、どの様に保護されるべきか?が議論され、しばしば紛糾する。その時は、既得権益擁護運動が既得権益団体から、それに対抗する非擁護運動が様々な団体からそれぞれ起こる。

出典:取得権益者の権益維持団結 WebFropyal-commission-vested-interests
出典:取得権益者の権益維持団結
WebFropyal-commission-vested-interests

 社会活動に於ける既得権者と非既得権者の争いは周知の通りであるが、企業の社内活動に於いても同様の争いが起こる。

 例えば、社内基幹コンピューター・システムを全く新しい基幹システムに置き換える場合に起こる社内反対勢力の抵抗である。特に社内の情報システム部門が反対勢力になる場合はやっかいである。

 新システムになると、長年かけて構築してきた既存システムの隅々まで熟知している彼らは自分達の存在意義や社内ポジションが一挙に無くなる可能性が生じる。そのため反対運動は過激になる。彼等はあらゆる手段を考え、理論的根拠や社員感情論などを提示する。また反対のための反対の感情的反対運動まで加わり、社内は大紛糾する。もはや「優れた発想」を発揮する機会など消え失せる。

 社内や役所内の既得権益グループなど反対勢力による大紛糾を解決するには、社長や知事の力だけでは難しい。管理者や社員の協力が必要である。しかし現状維持主義、権威主義、官僚主義に関して社長や知事が管理者に、管理者は末端社員や職員に、日頃徹底した教育指導と行動指導をしておれば、既得権益グループの反対の可能性を事前に察知し、対策を講じる事が出来るはずである。もし不幸にして社内紛争が起こったとしても、社長や知事は、多くの管理者や社員又は職員の支援を受け、事後でも円滑に問題解決はできるだろう。要は常日頃の教育指導と行動指導が重要であると云う事だ。

●世の中に発想法への疑問
 最近流行りの「デザイン思考」、その他の「各種の発想法」は、どの様にして「優れた発想(思考)」を生み出すか? この方法論ばかり教えている。発想こそが最も重要だと認識するからだろう。しかし発想するだけで十分であろうか?

 不思議な事に、以上の発想法では、思い付いた「優れた発想」を如何なるプロセスと方法で、実現させるかと云う「優れた発汗(行動)」の方法論が説かれていない。また実現したものを如何なるプロセスと方法で成功させるかと云う「成功論」が全く説かれていない。これだと「発想」しただけで終わってしまう。

 もっと不思議な事に、「優れた発想」を妨害する人物が実存する。またそれを具現化する行動を潰す人物がいる。それを如何に予防し、妨害や破壊を如何に排除するか? この方法論は、全く説かれてない。これでは「優れた発想」は、妨害者、破壊者の犠牲になるだけ。実現など、成功など不可能になる。

 デザイン思考やその他の発想法を説き、指導する人物は、新しい事業プロジェクトを考案し、計画し、建設(構築)し、夢や目的を実現させ、事業基盤で夢や目的の事業を成功させた本物のプロジェクト実践経験を持つ人物であろうか?

 「優れた発汗」の方法論を説くのがP2MとPMである。「夢」を起点に発想~計画~建設(構築)~運営~事業基盤の実現~事業基盤上事業の成功までを一貫して説くのが「夢工学」である。夢工学式発想法は、夢工学を基盤にした発想法である理由がここに在る。

 ちなみに「夢」や「プロジェクト」を破壊する人物から「夢」や「プロジェクト」を如何に守るかを説いたものが「(抗)悪夢工学」である。

つづく

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