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「エンタテイメント論」(121)

川勝 良昭 Yoshiaki Kawakatsu [プロフィール] :4月号

エンタテイメント論


第 2 部 エンタテイメント論の本質

6 創造
発想阻害排除法④-2
④優れた発想は、発想を阻害する「環境」を排除し、発想に集中する事に依って生まれる。
●日本人の島国根性
 「優れた発想」を阻害するものは幾つもある。その1つに日本人の「島国根性」がある。

 島国根性は、「田舎者根性」とも言われ、21世紀の日本になっても多くの日本人から払拭されていない。その根性は、「よそ者排除」、「外国人排除」、「移民排除」、「異国文化排除」、「異国制度排除」などの問題を引き起こしている。その様な問題の下では、自由闊達な議論も、優れたアイデアも生まれてこない。

出典:話さない、見ない、聞かない島国根性 insularity&fr=uh3_news_web 出典:話さない、見ない、
聞かない島国根性
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 島国根性は、その本質は、異質性への排除心である。自分と異質タイプの人物に対して「話さない、見ない、聞かない」と云う度量の無さだけでなく、感情的反発さえ持つ。それが高じると、英語使用拒否運動、英語教育反対運動、グローバリズム反対運動(アングロサクソンの陰謀論)などの社会的思想運動にまで発展する。

 更に困ったことがある。日本人が外国人や外国企業に強い敵愾心を持つことは理解されるが、他の日本人や他の日本企業にまで強い敵愾心を強く持つことは問題である。最初は、特定の異質タイプの人物の意見を排除するが、暫くすると不特定の人物の意見まで排除する様になる。

 また前号で日本人の「対人感情の歪み」を解説した。これも「島国根性」が成せる結果である。この歪みとは、自分が主張した事に「質問」されると「疑われた」と心底で感じること、「意見」を述べられると「反対された」と感じること、「批判」されると自分の人格まで否定されたと感じることである。

●外国での「島国根性」
 島国根性と云う言葉が日本でいつ定着したか定かではない。しかしその根性を心底では「恥ずべきこと」、「反省すべきこと」と考えている人物は結構いる様だ。しかしその様に考えるべきだろうか? と筆者は疑問視している。何故なら島国根性は日本特有のことでなく、外国にも存在するからだ。

●農耕民族的島国根性と海洋民族的島国根性
 日本人だけでなく、外国人にも「島国根性」を持つと云うなら、その違いは何か? この違いの文化人類学的な探求は、そもそも本稿の目的に沿わない。しかしその違いを知ることは「創造性発揮の阻害」を知る上で重要である。

 ついては、布施克彦(★)の著書「島国根性を捨ててはいけない(出版社:洋泉社、2004年)」の内容を基に島国根性の違いを解説したい。
1947年東京生まれ。一橋大学商学部卒業。大手総合商社・鉄鋼貿易業務に従事。ナイジェリア、ポルトガル、アメリカ、インドなどに15年駐在。その後、精密機器メーカー社員を経てフリーの作家に。著作活動、貿易実務などの各種セミナー講師、講演などを活動中。

 彼は、諸外国の島国根性の実態を調べ、それが農耕民族的島国根性と海洋民族的島国根性の2種類が存在することを明らかにした。

出典 農耕国 agricultural+nation&fr=uh3_news_web 海洋国 seafaring+nation&fr=uh3_news_web
出典 農耕国 agricultural+nation&fr=uh3_news_web
  海洋国 seafaring+nation&fr=uh3_news_web

 彼は、英国人が世界の海に乗り出し、多くの植民地支配を行った事などから海洋民族の特徴を強く持つ「海洋的島国根性」の国民であると指摘した。この事は誰もが容易に理解する。

 さて多くの日本人は、自分たちは「農耕民族」と認識している。しかし彼は極めて興味深いことを指摘した。日本人は農耕民族の特徴を持つと同時に周囲を海に囲まれた「海洋民族」の特徴も併せ持つと指摘した。従って日本人は「農耕民族的島国根性」と「海洋民族的島国根性」の両方を持つ国民である。この様な指摘をした人物は、筆者の知る限り、他に知らない。

●農耕民族的島国根性のマイナス面とプラス面
 農耕民族的島国根性のマイナス面は、既述の通り、よそ者排除、外国人排除、移民排除、異国文化排除、異国制度排除、異質性への排除心、感情的反発、歪んだ他人感情などである。このマイナス面の根性は、「優れた発想」を生み出そうとする「創造性の発揮」に極めて大きい障害になることは言うまでもない。
出典:プラス面とマイナス面
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 一方プラス面は、協調性、探究性、組織的責任性、正確性、緻密性、気配り性などに優れていることである。 これらは農耕の閉鎖的社会で育まれた結果である。このプラス面は、「優れた発想」を具現化し、実用化するプロセスで大きいプラス効果を発揮する。「日本人はアイデアを創るのは弱いがアイデアを実用化するのは強い」と言われてきた事に通じる。しかし筆者はアイデアにも強いと考える。

●海洋民族的島国根性のマイナス面とプラス面
 海洋民族的島国根性のマイナス面は、農耕民族的島国根性と逆で、農耕民族的島国根性のプラス面を持っていないこと、一方プラス面は、農耕民族的島国根性のマイナス面を持ってないことである。

 海洋民族は、世界の海に進出し、未知の国と接触する。この様な開放的社会で育まれた結果、開放性、発展性、知略性、冒険性、未知挑戦性などの根性を生み出した。このプラス面は、「優れた発想」を生み出そうとする「創造性の発揮」に絶大な効果を生み出すことは言うまでもない。

●多くの日本人の民族認識
 多くの日本人は「我々は農耕民族」と認識している。しかし布施克彦の指摘を待つまでもなく、日本人はそもそも「海洋民族」でもある。にも拘わらず、その様に認識するのは、徳川幕府の約300年の鎖国政策で培われた認識パターンが現在に生きる日本人のそれに影響しているためか?

 日本人は、古来から海洋に乗り出し、活躍していた海洋民族でもある。このことは歴史を見れば一目瞭然だ。日本人が諸外国との海洋交易を盛んにやっていたからこそ徳川幕府が鎖国政策を実施した。しかし一方では海洋交易を独占していた。

 徳川幕府が崩壊し、明治維新で新しい国家が誕生した途端、日本人は、解き放たれた様に海洋民族として特質を発揮し、世界との海上交易を振興させ、発展させた。そして朝鮮半島、中国大陸、台湾、南洋諸島、インド、米国、欧州、南米などに破竹の勢いで海外進出を果たした。

 一方日本人は農耕民としての特質を遺憾なく発揮し、日本の経済、産業、事業を目覚ましく発展させた。その経済力、産業力、事業力を基盤に日本は先進欧米諸国と肩を並べる国家に成長していった。

 しかし日本人の海洋民族として国際社会で活躍した期間は、明治維新後の僅かな期間であった。そのため国際経済界、国際産業界、国際事業界での経験に乏しく、それに輪を掛けて国際政治界での経験不足が目立った。にも拘わらず、日本は海外進出と海外活動をやり過ぎた。

 その結果、先進欧米諸国から政治面、社会面、経済面、産業面で強烈な反発と圧力を掛けられた。一挙に開放された海洋民族の特質を持つ日本人は、その反発と圧力に耐えかね、セルフ・コントロール・パワーを失った。日本人は農耕民族であり、海洋民族であるが、海洋民族としてあるべき「在り方」を学ばず、やり過ぎ、その経験不足から、愚かな太平洋戦争を始めた。

出典:戦艦大和の最後 pacific+war&fr=uh3_news_web 出典:戦艦大和の最後
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 余談であるが、比較する積もりも、擁護する積もりも、毛頭ないが、日本人が北朝鮮の金正恩を批判するだけなら、多くの国から経済封鎖を受けても、米国に対抗する彼の図太さ、狡猾さ、戦略性などを理解するべきである。更に余談だが、日本の学者、評論家、ジャーナリスト達は、TV番組で彼を批判するだけ。そんな事なら子供でもできる。本当にバカ連中だ。そもそも何でそんな連中をTV出演させるのか?

 もし戦前の日本の指導者達が金正恩の様な国際政治姿勢、国際対決姿勢、国際脅迫姿勢を持っておれば、太平洋戦争を回避し、国難を解決したであろう。当時の日本は、今の北朝鮮とは異なり、世界が驚く経済大国に成長しつつあり、軍事大国に既になっていたのである。従って何でも出来たのである。戦争は最後の最後の最後の切り札であった。

 日本の指導者達が軍部の開戦圧力に抗し切れず、開戦せざるを得なかった時、何故最強の米国を相手とせず、オランダ国を相手に開戦し、「次はお前だ!」と脅す図太さ、狡猾さ、戦略性を発揮出来なかったのか。子供でも勝てないと分かっている相手とは絶対に喧嘩を避ける。こんな当然の理を当時のリーダー指導者達は分からなかった。それほどバカだったのか? 猛烈な海洋民族的島国根性が支配したのか?

●日本人の持つ「優れた発想」と「優れた発汗」
 日本人の島国根性の二面性を「夢工学式発想法」の観点から観ると、日本人は、「優れた創造」を容易に発揮できる極めて優れた国民である。

 「創造」は「創」と「造」で構成されている。英語のCreationより遥かに含蓄がある。創と造の両方が適時、適切に実行されて初めて「創造」が実現し、成功する。

 この「創」とは、新しいことを「ひらめく(Inspiration=インスピレーション)」ことを意味する。またこの「造」とは、ひらめいた事を具現化させ、実現させるために「汗をかく実行動(Perspiration=パースピレーション=発汗)」を意味する。前者を可能にするのは「海洋民族的島国根性」のプラス面であり、後者を可能にするのは「農耕民族的島国根性」のプラス面である。

出典:発想と発汗のエジソン Thomas-Edisonnews_web 出典:発想と発汗のエジソン
Thomas-Edisonnews_web

 日本人は、島国根性の2つのマイナス面を克服し、プラス面を活かし、大いなる「夢」を持って、「夢」の実現と成功に挑戦すれば、必ず「優れた発想」が生まれ、「優れた発汗」によって「夢」は必ず叶えられる。

●米国人の根性
 米国は、周知の通り、その歴史は英国の植民地から始まる。従って米国人は当初から海洋民の特徴を強く持つ英国人の海洋民族的島国根性を受け継いだ。その後、米国人は欧州、その他の諸国との海外交易を発展させ、海洋国としても一大発展を遂げさせた。と同時に東部~南部~西部と国内の開拓を進め、農業国として一大発展させた。

 以上の発展過程で米国人は、海洋民族的島国根性と農耕民族的島国根性の両方を持つに至った。自由の国を標榜する米国は、トランプ大統領が出現するずっと昔から2つの島国根性の国であった。黒人排除、黄色人種排除などその実例に事欠かない。また米国は世界の警察官の役割を果たす一方、多くの戦争に介入し、自らも参戦した。

 トランプ大統領は、就任早々から米国ファースト政策推進、TPP脱退、米国とメキシコ国との国境フェンスの建設など、まさしく他国排除の島国根性の象徴的存在となった。この島国根性は、米国以外の外国では英国が典型であるが、オーストラリア、キューバなど、その他の国にも実在する。

出典:トランプ大統領のメキシコ国境フェンス
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  メキシコ国境フェンス
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 トランプ大統領が選出された理由は、米国や日本の評論家やジャーナリストがいろいろと解説している。筆者は、その根本的理由は、米国人の二面的島国根性から彼を選出したのではないかと考えている。

 米国はあらゆる分野で世界のための指導的役割を果たすと同時に、自国の利益を最優先する保守的な在り方を世界に示す。この極端な両面性は、農耕民族的島国根性と海洋民族的島国根性の両方を持つためだ。いずれにしても米国人は創造性に於いて極めて優れた国民である。「米国人はアイデアに強いが、実用化に弱い」と云う考え方に筆者は賛同しない。

 米国人と日本人が今後も協力し、二面的島国根性のプラス面を活かせば、世界の経済、産業、事業に大いなる貢献ができると確信している。

出典:日本人VS米国人 american+vs+japanese&fr=uh3_news_web 出典:日本人VS米国人
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●日本の構造的危機と将来の凋落
 筆者は、本稿も含め、機会ある度に次の事を主張してきた。日本は明治維新と幾多の戦時を除き、近代史上初の構造的危機に直面した。

 「今のまま」で推移し、直面した構造的危機を脱出せず、日本の再生を実現しなければ、そう遠くない将来、アジアの小国に凋落する。

 しかし日本人は、マイナス面でなく、プラス面の「島国根性」を大いに活かせば、「優れた発想力(思考)」と「優れた発汗力(行動)」によって輝かしい日本に発展させることは十分可能である。何故なら、日本人は、明治維新後、日本を大発展させた。太平洋戦争の敗戦後、日本を大発展させたからである。

 現在の日本は、構造的危機に直面したとは言え、明治維新時よりも、敗戦時よりも、遥かに恵まれた環境下にいる。一人でも多くの日本人が「本心、本気、本音」で日本再生に挑戦すればよいのだ。

つづく

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