例会部会
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『第232回例会』報告

須貝 均 : 5月号

【データ】
開催日: 2018年3月23日(金) 19:00~20:30
テーマ: 「”Made in Japn”はなぜ崩れたのか?」
 ~品質問題を引き起こす罠~
講師: 横河電機株式会社      枝窪 肇氏 [PMR]

~はじめに~
 今回の例会では、昨年秋以降に日本企業による品質関連の不正が次々明らかになった状況を踏まえ、PMとして関心が高い品質問題という話題性のあるタイムリーなテーマ選定をおこないました。
 講演では「品質問題を引き起こす罠」のテーマで、どのような背景で発生したかを紐解きながら、そもそも品質は、いつ・誰によって・どのように作り込まれ、どのように維持されるのかを整理し、それを踏まえて品質問題が起こりにくくするにはどうすべきかを事例をふまえ、品質問題に詳しいPMRの枝窪さんを講師に迎えて熱く語って頂きました。

~講演概要~
1. 昨今の事例
日産自動車:無資格者による完成検査
神戸製鋼所:性能データの一部を改ざん
JR西日本:車両台車に亀裂の重大インシデント
2. 品質活動とは
品質活動とは「品質」を高める活動そのものであるがフェーズや立場によって捉え方は異なる。
「スキーム決定」「作り込み」「出荷ゲート」「保守・運用」という4つのフェーズと、品質を確実なものにするための「監査」に分けて考える事ができる。
3. 品質問題はどこで
1.項で示した事例が2.項の4つのフェーズのどの要素が関係したのか
整理し解説頂いた。

上記の事例で共通的に言える事は、
ステークホルダーからの「要求事項」がトッププライオリティではなくなった
自分たちが保有する能力を超えた契約をしてしまった
何のための作業(手順)なのかいつの間にかすり替わっていた
レビューや監査が機能しない組織となった
経営と現場のコミュニケーションが不足していた

4. 品質の根底にあるもの
現場は、顧客要求の実現こそが第一命題であり、顧客要求に見合った手順を遵守し変化に合わせて見直すことが重要である。
経営は、組織が品質活動を遂行するために必要な環境を提供する。
そのためには、風通しの良い組織風土を形成しコミュニケーション良く顧客要求の実現に取り組む様に組織運営を行う必要がある。

5. Made in Japnaを支えた技術力
ここまでの講演では、技術力が一切語られていないが一連の品質問題は技術と全く無関係であると考えるのは妄想である。国際技能五輪の結果を見ても日本の技術力は世界上位クラスであるが、保持している技術に慢心することなく、最新技術を習得し自分達のものとし後継者へ伝承していく姿勢が必要である。

~所感~
 今回の講演の冒頭では、P2M標準ガイドブックにおいても「品質」についての記述は十数ページ程度の記述量である旨の説明があり、これは品質には「王道」が無く、品質改善に近道などなく「継続は力なり」が唯一の解決策であるからと講師の枝窪さんから解説頂きました。プロジェクトの現場でマネジメントする機会の多い参加者の方々も、品質改善の重要性は十分理解しているが現実には納期とコストとのバランスで苦労されている事と思います。今回の講演の最後では「Made in Japan」は「技術」と「顧客志向」「QMS」の3本の柱で成り立っている旨の説明があり、我々PMは経営と現場が一体となった取り組みに積極的に働きかける事が肝要であるとあらためて力説頂きました。

年度末の多忙な時期にもかかわらず、品質問題に対する強い危機感をお持ちの枝窪さんに無理なスケジュールを承知で日程調整を頂き、あらためて心より感謝申し上げます。

最後に、我々と部会運営メンバーとなるキーパーソン(KP)を募集しています。
参加希望の方は、日本プロジェクトマネジメント協会までご連絡ください。

以上

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