第231回例会 報告
PMAJ例会部会 生越 直人 : 4月号
【データ】
開催日: |
2018年2月23日(金) 19:00~20:30 |
テーマ: |
なぜ、「デザイン思考」が注目されているのか?
~創造的破壊は起こせるのか?~ |
講師: |
中谷 英雄 氏
(株)ピーエム・アラインメント 取締役ビジネスコンサルティング部長 |
【第231回例会 報告】
~はじめに~
講師からいただきました講演概要には、「新たなイノベーション創出手法(デザイン思考)」と記述されていました。
自分たちの仕事においても、イノベーションの創出を求められており、そのための手法としてデザイン思考という言葉は聞いていました。しかし、「デザイン思考とは何か?」実はよく理解できていませんでした。
デザイン思考とはどのような手法なのか?何故、デザイン思考が注目を集めているのか?を理解するために、今回の例会に参加しました。
講師からは、90分間と言う限られた時間でしたが、熱く様々なお話をお聞きすることができました。しかし、ページの都合から、特に自分の印象に残った「デザイン思考のプロセスとモード」について報告させていただきます。
~講演概要~
■デザイン思考とは?
デザイン思考のプロセスとモードとは、①目的を見出す、②コンテクストを知る、③人々を知る、④インサイトをまとめる、⑤コンセプトを探求する、⑥解決策を練る、⑦製品・サービスを実現するである。各モードの概要は以下のとおり。
問題をリフレーム(再構成)する。そのためには、変化の状況を感知することが必要である。このプロセスでの最初の質問は、以下の3つである。
Q1: |
私は、何に貢献するのか? |
Q2: |
何処を見れば良いのか? |
Q3: |
どの方向に向かって行けば良いのか? |
市場課題、ソーシャル課題を大きくつかむ。
本当に困っている人々の行動やニーズを理解しようとする。共感、観察、傾聴という全てのスキルが発生する。困っている人々の立場になって、彼らの問題を理解したいと強く思い、どうしたら問題を解決できるだろうと考える。
市場課題、ソーシャル課題を「自分ごと」にする。
困っている人々の周りにあることを全て理解するモードに入る。人は、顕在意識による認識は氷山の一角(5%)に過ぎない。人間の認識は少なくとも95%が無意識で起こっており、ここに本当の欲求や願望がある。
人を知るためには、困っている人々の声を聴く、ステークホルダーの声を聴く、活動家の声を聴く。そして、声を記録・編集・共有する。
現場から学んだことを全て見て、抽象的な世界で先を見通す力を得ようとする。観察したことのパターンを見つけ、リサーチの中で出てくるかも知れない多くの答えを見つけようとする。
デザイン思考では、インサイトの合意形成が要となる。生活者の意識や行動を深く掘り下げ、彼らが気づいていない意識を見抜くことが必要である。
アイデアを出し、何かを作らなければならない。何かをクリエイトし、生み出すための行動をとらなければならない。
人々や背景、ブレーンストーミングから得た洞察力に、現地でどんな新しいことができるか、常に良いアイデア、賢いアイデアを追い求める。
社会に役立つ体系的なソリューションを出そうとする。色々なアイデアを一緒にして、アイデアのコンビネーションを創る。
現実可能なアイデアのシステムを作り、判断と評価を行い、どのアイデアがどこで貢献するのか、実現可能性を比較する。
プロトタイプを作り何度も繰り返して、実験から学びを得る。実社会でどのように実現するか?実現する価値はあるのか?スケーラブル(規模の拡大)可能か?について評価する。
以上の説明を聞いただけではよく理解できないため、IDEO社が行ったプロジェクトの内容をまとめた動画を見て理解を深める。
2000年にテレビ番組の特集で紹介された、わずか5日間で新しいショッピングカートのデザインを行う様子である。
「人々を知る」では、ショッピングカートは単なる商品を運ぶカゴではなく、「買い物」という行為の一部であることを観察した。
「インサイトをまとめる」では、インサイトを「必要時に、いつも食料が家にあるようにするため、生活を計画したい」と捉えた。
「解決策を練る」では、取り外し式のカゴを備えた大きなカートを作った。これは、大きなカートと小さなバスケットという2つの伝統的な形態の中間にあるものの提案である。
■デザイン思考の長所・短所は?
・ 長所
ユーザにできるだけ接近し、その観察からユーザの考え方や感じ方にできるだけ共感することで、イノベーションを推進する「マーケット・プル」の方法論が採用されている。そのため、デザイン思考は、モノゴトの改善によってゆるやかな変化を促す、「斬新的なイノベーション」に向いている。
・ 短所
デザイン思考を実践する場合、「問題の領域自体を自分達で探求していけるかどうか」が大きな問題となる(デザイン思考の弱点)。
実際にイノベーションを導こうとする実践では、その問題が存在する領域自体が明らかでないことがほとんどである。
■デザイン思考
問題の明確化からユーザへの共感、試作品の完成までを通じて、創造的問題解決を図るのがデザイン思考である。
~まとめ~
例会に参加して、デザイン思考のイメージを理解することができ、大変勉強になりました。しかし、まだまだ不明な点が多く、実際に使えるようなレベルには至っていません。
デザイン思考を自身でも使えるようにするため、基礎編:1日、実践編:2日の研修会にも参加してみたいと思いました。
最後になりましたが、ご講演いただきました中谷様には、大変お忙しい中、PMAJ 例会部会にご協力いただきましたこと、心より感謝申し上げます。
また、我々と共に部会運営メンバーとなるKP(キーパーソン)を募集しています。参加ご希望の方は、日本プロジェクトマネジメント協会までご連絡下さい。
以上
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