今月のひとこと
先号   次号

 報道PM 

オンライン編集長 深谷 靖純 [プロフィール] :4月号

 遅くまで雪があったにも拘らず、今年は早い開花となりました。4月を待たずに葉桜が目立つようになった地方も多いのではないでしょうか。満開の桜を追って南から北へと旅する人が増えているそうです。各地の桜の名所で、ご当地の日本酒を愛でる・・たまりませんね。

 学校用地の不正取得疑惑は、某誌のスクープ報道からかなりの日数を経て、未だ全容解明に至っていません。もどかしい思いで推移を見守っている人も多いと思います。もどかしく思わせる要因はどこにあるのでしょうか。解明されている事実が僅かで、しかもそれらの中に核心にせまる事実が含まれているかも判然としないということ自体がもどかしさをもたらしているのだとは思いますが、マスコミ報道の姿にも要因があるのではないでしょうか。
 PMAJジャーナルの編集を担当していますが、編集子自身はマスコミ(報道機関)の仕事がどのように行われているかは全く承知していません。知っているのは、新聞あるいはテレビ、ラジオ、WEBに映されている姿だけです。そういう前提ですので、見せられているものだけを対象にして、プロジェクトマネジメントに照らして考えてみたいと思います。
 まず、把握された事実がスクープとして報道されます。この段階では、その事実が何を意味するか判明していなくても「何だか変」ということが伝わればいいのだと思います。報道機関が報道の対象とすべき「何だか変」なことが起きていると理解されれば、この段階でもどかしい思いは発生しません。
 プロジェクトでいえば、立上げ前のプロジェクト要件がしっかりと固まっていない段階です。さらに関連事実を積み上げ、ミッションプロファイリングによってプログラムミッションを組み立てるように、「何だか変」が「事件(または事件の可能性)」に昇華していくのではないでしょうか。ミッションプロファイリングでは「As-Is」と「To-Be」を明確にすることができなければ、ミッションの組み立てはできません。
 報道でも、「As-Is」に相当する関連事実の洗い出しができないと「To-Be」に相当する事件の形が見えてこないのだと思います。今回、もどかしさの原因は時間が掛かっているにも関わらず、「As-Is」が不明確なままだからではないでしょうか。以下のようなことが原因だと考えられます。
事実が徹底的に隠されていて、「何だか変」の発信以降、追加の事実を積み重ねる事ができていない。
「To-Be」の方向性の設定について根拠が示されていない。何が対応する「As-Is」か不明瞭である。
(例えば、大疑獄事件の可能性を喧伝するが根拠となる事実が示されていない)
「何だか変」を含め、発信時に事実以外の情報の追加、事実の削除・書き換えが行なわれているようで、何が正しい事実なのかよく分からない。  等々
 プログラム(プロジェクト)マネジメントに通じた読者諸兄は、「As-Is」の明確化段階で迷走するプロジェクトに様々なアドバイスを思いつかれることでしょう。しかしながら、これらのことは報道を受ける側として見せられた範囲での事実認識に過ぎません。これだけお粗末に見えるプロジェクトであれば、報道する側が「もどかしさを与えてもいいから伝えられないと判断するような事実」を表に出していないのではと考えてしまいます。
以上

ページトップに戻る