今月のひとこと
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雪の城下町

オンライン編集長 深谷 靖純 [プロフィール] :3月号

自宅の蛍光灯が切れるとLEDに切替えてきました。LEDは明るさや照明の色を変更できる器具が多いことから、リモコン式のスイッチを採用しているものが多いようです。明るさや色など一度設定してしまえば、そう変えるものでもないので、やがてリモコンはどこかにしまい込んでしまうと思っていました。ところが、これが結構便利なのです。冬至前後の頃、真っ暗な時刻に起きなければならないのですが、枕元にリモコンがあると簡単に明かりをつけることができます。春はあけぼの・・となって、朝の点灯は不要となりましたが、リモコンを枕元に置く習慣は残ってしまいました。

所用があって、雪の城下町を訪れました。
積雪の予報があり、交通機関が乱れてもいいようにと前日から入ったのですが、駅を降りると車道も歩道も深い雪で覆われていました。北陸の豪雪ほどではないのですが、普通の革靴では歩行困難で、まだ閉店前の駅前スーパーに駆け込んで長靴を求めました。一つだけですが、サイズが合うものが残っていたのは幸運でした。早速、ホテルに荷物を置き、長靴に履き替えて街中に出ました。地酒が自慢という居酒屋を見つけ、おいしい燗酒と地元の食材を使った肴を楽しみました。
翌朝、2㎞程の道を歩いて目当ての先を訪れました。その昔は20分間隔程度でバスがあったはずですが、今は1日数本となっています。雪の所為かタクシーも少ないとの情報もあり、城下町のそぞろ歩きを楽しむことにしました。お城付近の土産物店の前の歩道は、雪かきがされていましたが、商店街では老いた店主に雪かきの元気もなく、雪の中を歩く羽目になりました。交差点などところどころ踏み固められており、滑りにくい長靴が役に立ちました。昔ながらの喫茶店で暖を取りながら訊ねると、雪かきをするような人は殆どいなくなったとのことでした。会社勤めでもないので出かける用事もなく、そのままにしているのだとか。
お城の脇のお堀には水鳥が群れていました。氷が張っているので白鳥も陸に上がったと同じように全身を晒しています。時折、雪がぱらつき、抒情が有るといえなくもないのですが、足を見せている白鳥というものは滑稽です。
要件を済ませ身軽になって、再び城下町をぶらぶらと駅に戻りました。雪の中をぶらつく人は少ないようで、町屋の切れ目から時折見える天守閣も静かに佇むといった風情です。空気が冷たいので、より静かに感じるのでしょうか。

仕事抜き、観光抜きの一人旅というのも偶にはいいものです。今回は、所用があって城下町を訪れたのですが、観光名所を訪れるほどの時間もなく、街中の空気を吸って帰ってきただけです。それでもほっとする一瞬を味わえたように思います。

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