PM研究・研修部会
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テクノロジーが主導する変革の時代に向けて

PMAJ PM研究・研修部会員
(株)JSOL シニアコンサルタント 大泉 洋一 [プロフィール] :3月号

1. 今昔のプロジェクトマネジャーの関心事
 「人工知能、Smart社会、デジタルビジネス、デジタルトランスフォーメーション、イノベーション、IoT」、これらの言葉の共通点は何か。直近過去2年間のPMシンポジウム(2016、2017)の基調講演、特別講演で取り扱われたキーワードである。
 では「製品開発、国際競争力、ITプロジェクト、企業経営、グローバル化、生産方式、ソフトウェア開発」、これらはどうであろう。答えはその10年前、PMシンポジウム2006、2007の基調講演で扱われたキーワードである。プロジェクトマネジャーの関心事がこの10年で大きく変わったことが見てとれる。多様化・複雑化し成熟していく社会に対して、テクノロジーの革命的な進化が変革を起こす。そのような変革の時代が始まりつつあるという時代認識が背景にあるのだろう。

2. プロジェクトマネジャーは役立てるのか
 では、テクノロジーの進化が主導する変革の時代において、プロジェクトマネジャーはどのように役立つことができるのだろうか。我々が基本スキルとして身に着けてきた既存のプロジェクトマネジメント知識体系を単純に当てはめるだけでは、これまでのように存在感を発揮し続けることは出来なくなるのではないだろうか。
 テクノロジーの進化が主導する変革の時代においては、プロジェクトの対象となる活動自体がこれまでとは大きく変わってくると思われる。IT分野が最も顕著と想像されるが、他の分野にもその影響はおよぶことだろう。プロジェクトの対象となる活動自体の変化にあわせて、そのマネジメントの枠組みも当然ながら変わっていかなければならない。PMBOK®ガイド 第6版にアジャイル手法が大きく取り入れられたことも、このような動きの表れだろう。
 テクノロジーの進化が主導する変革の時代において、プロジェクトの対象となる活動自体が変わってきている。プロジェクトマネジメントは、既存の知識体系に何等かの方法論を追加していくことだけで、これから時代に対応していくことができるのだろうか。次の時代に役立つプロジェクトマネジメントの枠組みは、まだ闇の中にあり、その輪郭をはっきりと認識することはできない。
 しかし、一方で明らかなこともある。「既存のプロジェクトマネジメント知識体系だけでは、変革の時代に対応するには限界がある」ということである。この危機感を我々プロジェクトマネジメント界に身を置く者達が共有しているのではないだろうか。

3. フレームワークの効力
 話が少し飛ぶ。一般的にPP&PM(プロジェクト、プログラム、ポートフォリオマネジメント)の枠組みは、プロジェクトマネジメントの知識体系を、事業戦略を軸にして上位概念であるプログラムマネジメント、ポートフォリオマネジメントと結びつけた概念である。事業戦略を軸として上位概念と結びつけることで、プロジェクトマネジメント手法を「単なるプロジェクトマネジメント手法」から、戦略的事業価値を高める枠組みの一環として昇華させることに成功している。
 このように、ある方法論は、何等かのフレームワークの一環とし再定義することで、新たな価値を生みだすことができる。炭鉱における定置動力として発展してきた蒸気機関が、船や鉄道などの交通機関と結びつくことで、革命的な発展を遂げたように。
 我々は、今の世を生きるプロジェクトマネジメントを生業とする者として、テクノロジーが主導する変革の時代に対応するプロジェクトマネジメントの枠組みについて、何等かの解を探求する義務を負っているのだと思う。PP&PMに代わる新たなフレームワークを生み出し、その中でプロジェクトマネジメントを再定義する必要があるのだと思う。そのことにより、変革が生み出される次の社会の中での新たな価値を発揮していくことができる、そう考えている。
以上

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