PM研究・研修部会
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P3O ( Portfolio, Programme and Project Offices ) 概要紹介

PM研究・研修部会員 木下 雅治 [プロフィール] :1月号

1. はじめに
2017年10月20日にPM研究・研修部会セミナーでAXELOS社のポートフォリオ、プログラム、プロジェクトオフィスP3O(Portfolio, Programme and Project Offices)を紹介した。P3Oガイダンスは組織内の意思決定を可能にし、すべてのビジネス変化のビジネスモデルを支援するマネジメントオフィスを取り上げたものでありP3O定義、構築、運用方法を提供する。本稿はこのP3Oの概要を紹介する。

※ P3Oをはじめ一連の英国政府におけるPM標準類に関する IP (Intellectual Property : 知的財産) 管理は、英国政府とアウトソーシングプロバイダであるCapita社とで共同で設立したジョイントベンチャーであるAXELOS社が所有している。

図 P3Oの位置づけ
図 P3Oの位置づけ
注 : 他にもRESILIA(サイバーレジリエンスとサイバー攻撃からの保護)、PRINCE2 Agileがある。

2. ポートフォリオ、プログラム、プロジェクトについて
P3Oは、ポートフォリオ、プログラム、プロジェクトにまたがって支援する仕組みであるためそれぞれの定義を以下にまとめた。

<1>ポートフォリオ、ポートフォリオマネジメントの定義
<1>ポートフォリオ、ポートフォリオマネジメントの定義
ポートフォリオマネジメントに関する詳細はManaging of Portfolios(MoP)を参照

<2>プログラム、プログラムマネジメントの定義
<2>プログラム、プログラムマネジメントの定義
プログラムマネジメントに関する詳細は、Managing Successful Programmes(MSP)を参照

<3>プロジェクト、プロジェクトマネジメントの定義
<3>プロジェクト、プロジェクトマネジメントの定義
プロジェクトマネジメントに関する詳細は、Managing Successful Projects with PRINCE2を参照

3. P3Oとポートフォリオ、プログラム、プロジェクトとの関連
P3Oとポートフォリオ(Pf)、プログラム(Pg)、プロジェクト(Pj)との関連は以下の通り。ポートフォリオマネジメントサイクルには組織ポートフォリオオフィス(PfO)が対応する。プログラムライフサイクルは始めと終わりを組織ポートフォリオオフィスが対応し、定義、能力の提供、便益の実現はプログラムオフィス(PgO)が対応する。プロジェクトライフサイクルは始動と終結はプログラムオフィスが対応し、立上げと提供はプロジェクトオフィス(PjO)が対応する。センターオブエクセレンス(COE)はポートフォリオ、プログラム、プロジェクト全般を通じて対応する。

図 ポートフォリオ、プログラム、プロジェクトライフサイクルに沿ったP3Oモデルの要素
図 ポートフォリオ、プログラム、プロジェクトライフサイクルに沿ったP3Oモデルの要素

P3Oではプロジェクトライフサイクルとプログラムライフサイクルの枠組が特徴的である。プロジェクトライフサイクルについてはPRINCE2では7つのプロセスとして定義しているが、この7つのプロセスを別の切り口として上述の「始動」「立上げ」「提供」「終結」の4つに再定義している。プログラムライフサイクルも同様にMSPでは6つの変革フローとして定義しているが「特定」「定義」「能力の提供/便益の実現」「終結」の4つに再定義している。
このようにP3Oはマネジメントオフィスのあり方を理解することに加えて、ポートフォリオ、プログラム、プロジェクトとは何か、またどのような関連があるかを理解する機会を与えてくれている。

4. P3Oの概要
P3Oの概要を紹介する。はじめにP3Oの定義は以下の通り。
<1>P3Oの定義
<1>P3Oの定義
※ 強調したい箇所は筆者が赤字にした

P3Oの定義として特徴的であるのは、ポートフォリオ、プログラム、プロジェクト全体を支援する仕組みとしてP3Oという概念がある点である。後述するがP3Oの組織や機能は単一/複数、物理的/仮想的、常設/一時的、中央/ローカルなどの観点で個々の組織が自らに合う形で設計することになる。

<2>P3Oの視点
P3Oはどのような視点を持つか以下にまとめた。
<2>P3Oの視点

P3Oは上記4つの視点を持つ。ビジネス変革戦略は戦略に関して、ビジネス変革設計は設計がそれぞれ適切に計画されているかを確認する視点である。一方のビジネス変革実施は提供内容や仕組みが適切に実施されているか、ビジネス変革価値は適切に価値を提供できているかそれぞれ結果を確認する視点である。
このように計画と結果の双方が適切であるかを視点として取り上げていることは興味深い。例えばPRINCE2では、ビジネスケースのテーマの中でベネフィットレビュー計画を取り上げているが、これは文字通り便益(ベネフィット)の計画と結果(便益が実現したか)という視点と合致する。

<3>P3Oモデル
 P3Oモデルは以下の通りいくつかの組織に再分化される。センターオブエクセレンス(COE)を組織ポートフォリオオフィスに含めるか下図のように別組織とするか、またハブポートフォリオオフィスを設けて組織ポートフォリオオフィスを分権化するかなどはそれぞれの組織の状況に応じた対応になる。

<3>P3Oモデル

以下はP3Oモデルの例である。このモデルではセンターオブエクセレンス(COE)は組織ポートフォリオオフィスから独立した組織のモデルとなっている。

図 P3Oモデルの例
図 P3Oモデルの例

図 P3Oモデルの機能とサービス
以下はP3Oの機能やサービスを計画、提供、COEの3つに分類した図である。
図 P3Oモデルの機能とサービス

5. おわりに
PM研究・研修部会セミナーを10月20日に開催する約半年前からP3O勉強会を開始してP3Oに関する理解を深めてきた。従来よりPRINCE2,MSP,MoPなどAXELOS社のPPMガイダンスを取り上げてきた経験を踏まえて、P3O勉強会ではP3Oガイダンスの内容を要約した小さな冊子である“Project, Programme and Portfolio Office Pocket Book“の内容を理解することから着手した。はじめにP3Oの全体像を俯瞰することで理解が進んだ。P3Oに限らずAXELOSのガイダンスを理解したい場合は、まずはPocket BookやExecutive Guideと呼ばれる各ガイダンスを要約した冊子を参照することをお勧めする。または資格取得を含めて本格的に理解したい場合は研修会社がファンデーションコースやプラクティショナーコースなどを提供しており数日という期間で正確かつ効率的に理解することができる。
実際にP3Oの勉強会や部会セミナーではPocket Bookや研修会社が提供する教材なども参考にした。

P3OガイダンスやPocket Bookは、上述したとおりP3Oはポートフォリオ、プログラム、プロジェクトの基本的な知識とそれぞれの関係性について説明している。P3OガイダンスはPPMを理解することにも非常に役立った。さらにP3Oガイダンスの第4章では、組織にP3Oを導入するやり方を紹介しているが、このP3Oの導入そのものをプログラムとして捉えており、MSPに沿った説明をしている点は非常に興味深かった。P3Oの導入をMSPのケーススタディとしてMSPが定義するビジョン、青写真などをいつどのように作成、利用するかの理解を深めることができた。
以上

※ 本稿で使用した略語は以下の通り
本稿で使用した略語

<参考 過去のオンラインジャーナルより>
◆ MoP ポートフォリオマネジメントについて
  リンクはこちら
◆ MSP プログラムマネジメントについて
  リンクはこちら
  リンクはこちら
  リンクはこちら
◆ PRINCE2 プロジェクトマネジメントについて
  リンクはこちら

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