理事長コーナー
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近未来の自動車と自動車産業

PMAJ理事長 光藤 昭男 [プロフィール] :2月号

 毎年1月初旬に、家電の展示会が、米国ラスベガスで開催される。CES(International Consumer Electronic Show)であり、年々開催規模が大型化している。今年は、1月9日~12日に、出展企業が約4,000社、参加者が20万人を超えて開催された。一時はスマートフォン・メーカーの競争だったが、今はこれ以外に、スマートシティ、ロボット、ドローン、そして、自動運転などとテーマが多様化、細分化している。これだけ大規模だと全貌を俯瞰するのは、ほとんど不可能に近い。目的や興味が異なると、全く違った展示会に見えるだろう。好奇心の旺盛な人にはたまらない。

 中でも自動運転が注目された。自動車メーカーは、トヨタ、ホンダ、日産、メルセデス・ベンツ、フォード、ヒュンダイ等などがブースを構えた。電子技術を支える部品サプライヤーは、ボッシュ、デンソー、日立オートモーティブ、ルネサスなど主要部品メーカーが顔を揃えた。それぞれに最先端のエレクトロニクス技術を持ち込み、未来のカーライフを示唆する展示を見せたようだ。中でもトヨタは、「e-Palette Concept(eパレット・コンセプト)」という自動運転機能を備えたボックス・カーで、“EVコンセプト”を発表して注目を引いた。 “ロボットカー”がコンセプトで、個人ユーザー向けでなく商用に絞った。「自動運転車が24時間走り回り、無人タクシーやピザの宅配を事例として、幅広いサービス提供会社になり、『トヨタはクルマをつくる会社から、モビリティサービスの会社に変わる。可能性は無限大だ』と豊田章男社長が自ら宣言した」(朝日朝刊@2018.1.24)。

 昨年、フランスは、2040年を目途にガソリンやディーゼル、いわゆる内燃機関駆動の車の販売を禁止する方針を発表した。他の欧州主要国、中国、インド、米国カルフォルニア州も類似の宣言をしている。EVの部品点数は、内燃機関の3万点から、約1/10の3千点程になるという。それにより車の製造工程が大幅に簡素化され、他業界からの新規参入者も増えるといわれている。その先頭にAmazonや Googleがいる。今年は、「スマート・ホーム」が中心で、「Google Home」や「Amazon Alexa」といった“AIアシスタント”に対応する家電類だったが、2社の重要ターゲットは自動運転だ。この動向をみて、ボストンコンサルティンググループは、2035年には自動運転車が世界の自動車販売の2割超になると試算している。EVと自動運転機能というAI、さらには道路整備、3次元地図とGPS、気象情報など自動運転が影響を及ぼす周辺技術は広範囲で、その市場は巨大だ。

 「自動運転車を制御する構成部品は、従来の車体・車両に加え、モーターと強電制御、センサーやカメラ、通信機器、そして頭脳としてのAIだ」。世界レベルの競争はスピードを要求する。「自動車メーカーも得意分野に強い部品メーカーに頼らざるを得ない」のだ。日本電産の永山会長(兼社長)も「いちど産業革新が起きると、極めて速くなる。従来の自動車メーカーの時間軸では、勝てない」。(朝日朝刊@2018.1.25)

 異なる技術や製品開発力をもっている企業や大学との連携によるプロジェクトの素早い立ち上げ、適切な計画と着実な遂行を実現するマネジメント力が必須である。巨大な市場の獲得を目指す企業、知を支える大学、政府の連携ゲームだ。当面、誰が、どのような目標を設定してプロジェクトを創り、困難を乗り越えてそれを実現させて行くのか、興味が尽きない。

以 上

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