東京P2M研究部会
先号   次号

イベント開催報告書について

鎌賀 信吉 : 2月号

 前回は「あいちトリエンナーレ2013」の開催報告書においてどのような実績情報が報告されているか見ていきます。今回は次回開催への重要な引き継ぎ項目になるような情報について触れていきたいと思います。

 一般的に、イベントの企画・推進・運営においては多くの人との擦り合わせが必要となります。企画メンバーによるアイデアをコンセプトとしてまとめていく企画フェーズに始まり、コンセプトを空間・プログラムに具現化していく制作フェーズ、制作したプログラムを実演する運営フェーズと、多くの人が関わってくる過程の中では、企画者としての当初想定は様々な想定外の事象に直面することになります。それを柔軟に対応していくことで具現化していきます。着想した対応策を変更の影響を検討しながら行っていくことになります。このような推進中のダイナミックな擦り合わせの流れは、次回以降の重要なインプット情報となりますし、関わっていた個々人にとっても、経験を確認する大切な記録となります。しかし、各自の発言を一字一句間違えなく議事録を作成するようでは、時間・労力がかかりすぎ現実的ではありません。タイムリーに記録を確認・合意していきたいものです。あいちトリエンナーレとは比べ物にならない小さなイベントSIGではありますが、なんとか楽しみながらタイムリーに記録できるように、討議内容をホワイトボードや模造紙に記載し、背景などを付箋で追記した画像を、討議風景とともに記録するような試行錯誤を行っているところです。

 さて、あいちトリエンナーレですが、毎回、芸術監督がそれぞれのテーマを設定して企画されています。2010年は「都市の祝祭」(芸術監督 建畠哲氏)、2013年は「揺れる大地-われわれはどこに立っているのか:場所、記憶、そして復活」(芸術監督 五十嵐太郎氏)、2016年は「虹のキャラバンサライ 創造する人間の旅」(芸術監督 港千尋氏)となっており、企画体制スタッフはほとんど変わっています。そのような中で、あいちトリエンナーレとしての基本スタンス・事業意識を変わらず継続させていくためには、事細かな情報を記録・アーカイブしていくことが必要となります。そのことは報告書でも確認ができます。
開催概要
  主催以外の様々な関係者(後援、助成、協賛、協力、会場提供、認定)、実行委員会の組織図
企画体制
  個別のプログラムに対しての担当・役割等
展開概要
  各種会場でのプログラム(特に普及・教育関連)の開催地となった学校・プログラム等
自治体との連携事業の内容・効果等
サポート体制(ボランティア)等
実行委員会の状況等
  実行委員会規約等

 まずは実行委員会における役割、活動内容さらには総括がなされていますが、続いて、ボランティアについても記載されています。ボランティアリーダー、会場運営ボランティア、ガイドツアーボランティアといった活動区分別に登録者・活動回数を拠点ごとの集計、登録者の年代別・性別集計がされています。さらにはボランティア研修会の日時・内容が、流れにそって記載されていて次回以降に参照できる内容になっています。
 そして、イベント開催には欠かせない自治体との連携についても記載がされています。あいちトリエンナーレ2013においてはベロタクシー運行事業、まちなか展開拡充事業等 自治体との連携事業を行っています。どのように取り組み、事業を展開したか そして どのような効果があったかは記載しておくべき重要な情報なのです。

 数回にわたって、あいちトリエンナーレの開催報告書を詳細に見てきました。多種多様な団体・人を巻き込んでイベントを継続していくためには、開催報告書においてもイベントのコンセプト そして 達成できたこと そして 今後の展開を語ることで、主催者だけでなくすべての関係者に新たなる参加意欲を喚起することは重要なことです。これほど詳細な開催報告書を目の当たりにして、つい事細かに読み込むことになってしまいました。実際にイベントSIG活動においても、この中で学んだことを活用する場面がいくつもあり、個人的にも参考になった連載となりました。

 東京P2M研究会では、イベントSIG以外にも様々な活動を行っておりますので、来月からは新たな内容をテーマに投稿していきたいと思っております。
以上

【出典】
あいちトリエンナーレ2013開催報告書
あいちトリエンナーレ2016開催報告書
「基礎から学ぶ、基礎からわかるイベント」  日本イベント振興協会

ページトップに戻る