東京P2M研究部会
先号   次号

イベント開催報告書について

鎌賀 信吉 : 1月号

 前回は「あいちトリエンナーレ2013」の開催報告書の概要をご紹介しました。今回は、この中でどのような実績情報が報告されているか見ていきます。

来場者の状況等
1 来場者数
2 チケット販売状況
3 アンケート調査結果
 (1)来場者アンケート
 (2)関係者アンケート
 (3)文化芸術関係機関等アンケート
4 有識者意見
5 経済波及効果
6 パブリシティ効果

 まずは、来場者数について、開催地域別、プログラム別での総数集計だけでなく、様々な分類項目での集計がなされています。
一般/大学生/高校生/中学生以下/招待者別集計
有料、無料別集計
男女比率、年代別比率、居住地別比率(名古屋市・愛知県内・県外・海外)
次に、チケット販売状況です。チケット販売枚数について集計がなされています。
チケット種類別 券種別集計
一般/大学生/高校生別集計
プログラム別 券種別集計
さらに、アンケート調査結果が報告されています。プログラム別に来場者に対して行われたアンケート、ボランティアへのアンケート、関係機関に対するアンケートという順番で、それぞれにおいて定型質問とプログラムごとにユニークな質問がされ、結果が集計されています。
そして、有識者へのインタビュー結果が次回開催への示唆としてまとめられます。
最後に、経済波及効果の算定とパブリシティ効果を報告して、実績報告が完了します。

 このような体系的な実績の報告は、あらかじめ収集項目と収集方法が十分に検討されていた成果といえます。チケット販売・事前申込サイトを準備する場合は属性を比較的容易に収集できますが、参加自由であるプログラムになると来場者の属性をつかむことが難しくなります。そこで、来場者が楽しみながらアンケートに答えてくれるゲーム形式のアトラクションなどを検討することがあります。ゲーム形式で回答していく簡単なアトラクションを設置するだけで、アンケート用紙を配布するだけよりも回収率をあげることができます。あいちトリエンナーレ2013においても出入口にタブレット端末を準備するといった工夫がされています。
 また、有識者へのインタビューについても、次回開催に対して示唆を与えてくれるものとして実施することが望ましいものです。しかし、これも有識者を会場に招待してプログラムを説明するといったプロセスが必要になるため、告知の段階から計画の中に含めておく必要があります。

 このような実績情報は、出演/展示者に対するフィードバックに用いられます。あるコンセプトをもってプログラムを制作した担い手へのフィードバックは必要なものです。また、ボランティアで参加いただいた方へ次回開催時にも参加いただくモティベーションづくりにも欠かせません。さらに、支援・協賛団体/企業へ今回の成果(経済波及効果・パブリシティ効果等)を伝えるとともに次回開催での協力を依頼するために重要なエビデンスとなります。

 「あいちトリエンナーレ」は3年ごとに行われるアートイベントです。そのため、今回実施して次回までの間にどのような行動変容が起こったかは長期間のイベントの影響を把握することになり、重要な意味を持ちます。参加した子供たちがイベントへの来場・プログラムへの参加によってアートに興味・関心をもち、その後もアートに触れる機会を増やしているかといった追跡的な調査などが含まれるのはそのためです。

 イベントの実績には、開催期間中に収集できるものから、少し時間が経ってから収集すべきものがあり、どちらもイベントによる影響・効果として、関係者に報告することをイベントマネジメントの評価(振り返り)プロセスにおいて行うことが有効であることを今回はご紹介いたしました。
 次回は、実績以外の次回開催への重要な引き継ぎ項目になるような情報をテーマにできればと思います。
以上

【出典】
あいちトリエンナーレ2013開催報告書
あいちトリエンナーレ2016開催報告書
「基礎から学ぶ、基礎からわかるイベント」  日本イベント振興協会

ページトップに戻る