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「エンタテイメント論」(119)

川勝 良昭 Yoshiaki Kawakatsu [プロフィール] :2月号

エンタテイメント論


第 2 部 エンタテイメント論の本質

6 創造
発想阻害排除法③-3
③優れた発想は、発想を阻害する「発想ルール」、「発想マニュアル」等を避け、発想に集中する事によって生まれる。
●筆者のKJ法とNM法の免許皆伝
 筆者は、新日本製鐵勤務の20代後半の係長時代、「KJ法」を川喜田二郎先生(東京工業大学名誉教授)から厳しい訓練を伴った直伝で学び、何とか「免許皆伝」を得た。また「NM法」は、中山正和先生(創造工学研究所所長)から「NM法」を同じく厳しい訓練を伴った直伝で学び、何とか「免許皆伝」を得た。

出典:免許皆伝 ぷよぷよクエスト攻略 gamerch.com 出典: 免許皆伝
ぷよぷよクエスト攻略
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 最近、日本で評判の「デザイン思考」は、上記の両先生の厳しい訓練とは程遠いが、駆使できる様になるためには相当の訓練を求められる。しかしKJ法も、NM法も、デザイン思考法も、その発想法を習得するためには大変な努力、時間、それに比例した費用が掛かる。

●筆者のKJ法とNM法への解釈と活用
 天国の川喜田先生と中山先生から「川勝、ばか者!」とお叱りを受け、免許皆伝を取り消される事を覚悟して、ある「乱暴な解釈」を行い、両発想法を同時に駆使すると云う「ずるい発想法」の使い方」をした。それは、KJ法を「帰納的発想法」、NM法を「演繹的発想法」と解釈し、以下の使い分けをした。

 KJ法は、カオス状態の問題群の中で「何が真の問題か?」「解決すべき問題は何か?」を明らかにしたい時、威力を発揮する。即ち問題の本質を掴む時にはKJ法を活用する。

 NM法は、解決すべき問題をヒントになる「鍵言葉(Key Word)」とその「背景情報(Back Ground Information)」を基に演繹(シネクティクス的)して問題を解決する時、威力を発揮する。即ち問題を解決する時にはNM法を活用する。

 最近、筆者は、夢工学式発想法ばかり活用している。けれども問題の本質をなかなか把握出来ない時、KJ法を活用する。そして本質が分かると、以前の「発想の癖」からNM法を使って問題を解決する時がある。

 どの発想法が一番優れているか?などに筆者はあまり関心がない。何故なら発想法を活用する目的は、「優れた発想」を生み出すことにあるからだ。自分の思考パターンや思考の癖に合致している発想法を活用して「優れた発想」を達成できれば、その発想法こそ一番優れたものである。

●筆者のKJ法の社内研修
 KJ法では野外調査結果で得た情報を一件一葉でカードに書く。その枚数が数千枚になっても構わない。その膨大な蓄積データの各カードが自然に自分に語り掛けてくる事を待つ。そして徐々に問題の本質に肉薄すると云う帰納化作業を行う。時に気の遠くなるほど大変な作業を伴う。

 筆者の新日本製鐵(株)勤務時代、KJ法の免許皆伝を得たので、本来職務と兼務でKJ法を他の社員に伝授する職務を上司から命じられた。そのため同社の全国にある各製鉄所を巡回して多くの社員に教えた。教えるのも大変であったが、学ぶ方も大変で、数日間の昼夜続行の研修を行った。しかし各受講者は、体力的には過酷であったが、何故か、知的作業の面白さに魅了され、明るく、楽しく、時に苦しい知的格闘を行った。

出典:社内研修のテーブルと研修風景デザイン batesville.Training.jpg & leadershub employee_training
出典:社内研修のテーブルと研修風景デザイン
batesville.Training.jpg & leadershub employee_training

●筆者のNM法の社内研修
 NM法は、KJ法の様に数千枚のカードに書くことは要求されない。しかし頭に浮かんだことは直ちにカード化するので相当な数の情報量になる。それらのカードを組み合わせながら、様々な事をシネクチックス的に演繹化してアイデアを発想する作業を行う。この発想技法を習得するためには大変な作業を伴った。

 筆者の新日本製鐵(株)勤務時代、NM法の免許皆伝を得たので、KJ法と同様、本来職務と兼務で数多くの社内研修を実施した。KJ法ほど体力的には過酷ではないが、KJ法の時と同様に、各受講者は知的作業の面白さに魅了され、明るく、楽しく、時に苦しい知的格闘を行った。

●古今東西、数多くある発想法
 古今東西、アイデアを作り出す所謂「発想法」は数多く存在する。これらの発想法は、それを発案した人物の発想への「在り方(基本的考え方)」や「やり方(具体的方論)」で構築されている。従って「在り方」と「やり方」の種類と数だけ発想法が存在することになる。

 それらの発想法のほんの一部を以下に名前で例示した。しかし筆者が考えた基準でそれらを分類すると分類された発想法に先入観や誤解を生み、発案者に迷惑を掛ける。そのため分類せず、順不同の単純な羅列にとどめた。

●発想法の名前
>ブレ一ン・ストーミング法、逆ブレーン・ストーミング法、カード・ブレーン・ストーミング法、モンタージュ・ブレーン・ストーミング法、MBS法、グラフィカル・ブレーンストーミング法、Mブレーン・ストーミング法、ブレーン・ライティング法など。

出典:ブレーンストーミング法&関連法 Clixmarketing&Original
出典:ブレーンストーミング法&関連法 Clixmarketing&Original

>NBS法、 クイック思考法、入出法、グループ・インタビュー法、アイデア・.ビット法、 水平思考法、 SAMM法、 工リア・シンキング法、 あべこべ思考法、一対連関法、 ビジュアル・モチベーション法、 フォース・フィールド法、 深層面接法、 フォーカス・グループ・インタビュー法、シミター法、バイオニクス法、 メカニックス法、クロス法、 SKS法、 デシジョン・テーブル法、 パレード図法 ヒストグラム法、ファイリング・システム法、 クラスター分析法、 PERT法、ビジネス・デザイン法、ストーリー法、関連樹木法、PATERN法、 FTA法、 YM法、 ZK法、 パイプリッジ法、 KPS法、クロス・インパクト・マトリックス法、 ステップ・リスト・マネジメント法、 FBS法、 NID法、 システム・ダイナミックス法 ISM分析法、RSVPサイクル法、 N2法、 マンダラート法、京大型カード法、ポスト・イット法、 CSシート法、 VA法、 IE法、 FMEA法、 TT-HS法、ED法、 コンピュータ・ネーミング法、 KEY WORD法、 デマテル法、 メディテーション法、イメージ・コントロール法、 トランプT法、 ゴードン法、 チェック・リスト法、 特性列挙法、属性列挙法、特性要因図法、要素分析法、 発展的討論法、 シグナルT法、 Uの木発想法、比較発想法、 比較分析法、 マトリックス法、 アークタルス法、 大学法、 7×7技法、DT法、言語的思考法、図式的思考法、方程式的思考法、 システム合成法、 アインシュタイン法、 アリストテレス法、CE法、 GO-STOP法、 フィリップ六六法、SET法、エジソン法、バズ法、IF法、親和法、スクランブル法、逆設定法、アナログ発想法、条件転換法、ワークデザイン法、 目的手段分析法、形態分析法、 欠点列挙法、 オバキュー法、エジソン法、希望点列挙法、カタログ法、KZ法、焦点法、T法、YK法、希望列挙法、コザネ法、超発想法、催眠法、霊感法、瞑想法、自律訓練法、禅式発想法、ヨーガ式発想法、交流分析法、エンカウンター法、カウンセリング法、ST法、SK法、心理劇法、ロールプレイング法、クリエイティブ・ドラマティックス・シナリオ・ライティング法、 デルファイ法、シティックティックス法、アイデア・マラソン法、デザイン思考など
>等価変換理論、KJ法、NM法、夢工学式発想法など

●夢工学式発想法を考えた背景
 筆者に限らず、多くの人は、ある発想法を活用したい時、当該発想法が求める発想ルール、発想マニュアル、発想手順などの発想技法を習得せねばならない。また実務に活用する時もいろいろな発想技術を獲得せねばならない。

 フランスの数学者、数理物理学者、天体力学者で多くの重要な基本原理を生み出したジュール・アンリ・ポアンカレ(1854年~1912年)は、何かを意識的に考えている時又は無意識に考えている時、頭脳は不必要なアイデアの組み合わせや意味のアイデアは自然に頭の中で淘汰されるという意味のことを述べている。

出典:ジュール・アンリ・ポアンカレ Fimg.khoahoc.Fnha-toan-hoc-9 出典:ジュール・アンリ・ポアンカレ
Fimg.khoahoc.Fnha-toan-hoc-9

 以上の様な意味合いから、自然に、苦労せず、無理せず、発想できる所謂「ずるい発想法」がないか? 発想ルール、発想マニュアル、発想手順、発想トリセツ(取扱説明書)などの発想技法を習得する必要がない発想法がないか? もっと自由に、ルールに縛られず、実用性があり、有効性のある発想法がないか? など「ずるい発想法」を懸命に探した。しかし結局は見付からなかった。そのため仕方なく自分で考えることにした。それが「夢工学式発想法」である。

●自由な発想を妨げるもの
 如何なる「発想法」を活用する時でも、筆者が主張したい点は以下の点である。

( 1 ) 自分の思考パターン、思考の癖など自分に合った発想法が一番良い発想法である。
( 2 ) 発想ルール、発想マニュアル、発想手順などの発想技法の習得を求める発想法を活用する時、その技法を忠実に実行すれば「優れた発想」が必ず生み出せると期待する事は問題である。生み出せる時もあるが、出せない時もある。むしろ後者の時が多い。
( 3 ) 「優れた発想」を生み出せない時、発想ルール、発想手順など発想技法を忠実に実行しなかった為と反省し、何度も繰り返す。上記の期待があるためだ。その結果、発想技法に縛られて自由な発想が著しく阻害されてしまう。これでは方法論の駆使が目的化する。そんな時は、当該発想法から離れて自由に発想することを薦める。
( 4 ) 発想を促す発想法の発想技法が自由発想を阻害しては本末転倒である。従って発想ルール、発想マニュアル、発想手順など発想技法が複雑で、その習得に時間、労力、費用などが掛かる「発想法」を活用することは薦めない。
( 5 ) どうしても発想法を使って「優れた発想」を得たいなら、我田引水だが、面倒な発想技法がなく「ブレーンストーミング」を使わない「自由発想」の「夢工学式発想法」を活用することを薦める。

つづく

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