図書紹介
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未来の年表  人口減少日本でこれから起きること
(河合雅司著、(株)講談社、2017年8月28日発行、第12刷、206ページ、760円+税)

デニマルさん : 2月号

今回紹介の本は、アマゾンの書籍売れ筋ランキングで現在上位にある。筆者が買い求めた昨年8月時点では、それ程の人気はなかった。しかし、内容が良く示唆に富んでいて、今の日本で解決しなければならない問題を鋭く指摘している。著者は、それを「静かなる有事」という。副題にある通り、日本の人口減少問題を分かり易く纏めている。具体的には、現在の日本の少子高齢化にある問題の本質から恐るべき未来を予測して、日本の存亡の危機が迫っていると示唆している。少子化(例えば出世率の減少4.54から1.44)や高齢化(高齢者比率の増加26.6%から38.4%)の問題が叫ばれて政府は色々と政策を打ってきたが、どれも効果的な成果を上げるに至っていない。この本は、その問題の本質と具体的な解決策の提言も書いてある。だから政治家や霞が関のお役人やマスコミ関係者等々出来るだけ多くの人に読んで貰いたい内容が満載されている。直ぐ解決出来る問題ではないが、深刻な問題である。多くの人が自分の将来も考え、現在我々が成すべきことを指摘した本である。

人口減少カレンダー         ――人口減少の問題を俯瞰――
この本の第一部に人口減少カレンダーが書かれてある。2016年から年度毎に人口減少の推移を追って、その結果我々の身近な生活にどんな変化が起きるかを列記している。現在の少子高齢化が深刻化する中で、医療費や社会保障費等々の経済的側面や社会的問題に目が向いている。しかし、このままの状態で50年、100年後には、日本の人口が半減して存亡の危機に直面するという。机上の計算とは言え、このまま放置出来ない深刻な問題である。

2025年問題の次とは何か        ――人口減少最大の問題点――
現在の人口問題で、政府は2025年に危機的状況になると言っている。それは団塊世代の人達が75歳以上になり、医療・介護費が増大して現行社会保障制度の維持が危ぶまれている。しかし、人口減少はそれ以降も確実に減少傾向と予測される。総人口が減少して、高齢者比率が更に高くなり、少子化で生産人口が減少している状況にある。更に、団塊ジュニアの世代が高齢化する2042年以降は、もっと事態が深刻化すると著者は強く指摘している。

人口減少の解決策は        ――著者が唱える処方箋――
この迫り来る「静かなる有事」に、著者は『小さくとも輝く国にするための第5の選択肢』と具体的な解決策を提起している。高齢化や少子化の現状解消の即効薬は無いが、元気な高齢者や少ない働き手を戦略的、有効的に活用出来る施策を多くの人の参加で実行していく。その為には問題解決を人任せではなく、若者から高齢者を交えた多くの人が考え、実行すべきであると著者は強く訴えている。全く同感で、多くの人にこの本をお薦めしたい。

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