PMプロの知恵コーナー
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ゼネラルなプロ (87) (実践編 - 44)

向後 忠明 [プロフィール] :1月号

前月号ではC社からの各種情報をもとにブレーンストーミングを行い、問題となっている項目をある程度まとめるところまでの話をしてきました。
 すなわち、C社及びモデレータ(筆者)も気にしていること、すなわち「感心事」をグループ化したことになります。
 今度はこの「感心事」の関連性と整合性を見てこれらを一括してまとめます。

例えば、
菓子の売り方や魅力度アップの問題(消費者意見の反映による商品の絞り込み、デザイン、ブランド化、店舗の絞り込み、通信販売等々)
財務的な問題(販売店の売り上げ調査による店舗の絞り込み、故障または止まっている機械のリース契約の見直し等々)
 このように大きく2つのグループに分けられました。そしてこれらを「何が問題、なぜそう言えるか?」「何のために?」そして「どうする必要がある」等を各グループごとに考えてみる。
については売り上げが減少していることが問題のための施策であり、きめ細かい商品やマーケット戦略が必要となる。
は生産設備機械の無駄(故障の多い、かつ止まっている機械)の放置や各店舗の売り上げ減少状況と利益率の調査、そして場合によっては店舗のリストラ要否検討等、会社全体の財務的検討が必要と考えられる。
 ここまでの情報収集及び状況分析がブレーンストーミングによる問題抽出とその結果によって示された「なすべき施策」となります。しかし、この時点ではあくまでも仮説的な施策であり、以降は当事者(C社)の経営管理者が最終判断をする必要があります。

 なお、ここまでのブレーンストーミングについての流れを理解しやすくするため、以下にその説明とその手順を図示します。
情報収集
これはC社の社長や従業員からのヒアリングからの情報とモデレータの考えやアイデアを含めた情報の収集の結果を箇条書きにそれぞれの意見を以下のようなルールで示す。
「批判はしない」「自由な発想」「なるべく多くの情報や観察結果」「アイデアを連想、結合し便乗する」
グループ化
情報収集したものはかなりランダムな情報となっているので、これを似たようなものにグループ化して、そこからこのことは何を言わんとしているのかみんなで考える。
関連性.整合性
グループ同士が何らかの関連または整合のある感心事を整理したほうが良いだろうと思うものが出てきたら、その関係を考えてまとめる。そしてまとめたものに関連性があれば関連づけをして、なるべく小グループにしておく。
ただし、その時は「何故また何のためそのように」言えるのかの原因や理由も明確にしておく必要がある。

ブレーンストーミング

 しかし、このブレーンストーミングの思考方法は問題解決に非常に有効であるがこれまでの話では問題抽出までの検討で終わってしまいます。
 そこで、C.Hケプナー博士の思考法である問題解決のための4つの領域と思考スキルが参考になります。
 この方法は筆者がエンジニアリング会社にいた頃、じっくりと研修させられたもので、その後のプロジェクトの進め方で多いに役に立ったものです。以下にその概要を説明します。
 その4つの領域というのは:
状況を把握する領域 (Situation Analysis)
「感心事」を列挙してそれを具体的課題としてセットして、実施の優先順位を決定する領域です。これは情報収集、グループ化する部分と同じステップです。

問題発生の原因を究明する領域 (Problem Analysis)
適切な解決策を講ずる前段階として問題の真の原因を究明することである。
①及び②の部分はすでにブレーンストーミングの作業として検討される感心事のグループ化と関連性・整合性の処理を行う部分と同一です。

 以降がブレーンストーミングの結果を見て行われる思考工程となります。
 それが下記に示す③及び④に示す作業となります。
対策を立案し、最適案を選定する領域 (Decision Analysis)
問題を解決するには何らかの対策を講じなければならない。取るべき対策が自明の場合は別として、対策の立案、選定は管理者の最も重要な思考領域である。
将来問題を想定して対策を検討する領域 (Risk Analysis)
この思考領域は事業計画の策定プロセスや特定のプロジェクトについて将来問題を列挙、評価し事前に検討することです、

 よって、これからは③及び④に示されている内容の作業はC社の問題の対策、最適案の検討に必要であり、当事者すなわちC社が行う作業となります。
 それでは具体的にどうするのかということになりますが、これらの領域に関する思考方法にはいくつかの分析フレームがあります。物事を決めるにはまずC社自身が自分の会社組織の対応で、できることなのか、そして、決めた対策にリスクがないか等を検証することです。
 分析フレームにはいろいろありますが今回はそのうちで最も代表的なものとしてSWOT分析というものをC社に採用し検証することにしました。このSWOT分析は問題解決法において最も多く使用されている手法です。
 本題に入る前にSWOT 分析とは何かについて説明しておきます。
 SWOT 分析はこれまで行われてきた情報収集をもとに行われてきたブレーンストーミングでの結果、ある程度現状がわかってきたところで自社の取り巻く内部環境や外部環境を考慮して現状と実際に行動した場合のギャップを見ていく分析手法です。
 まず、内部環境の観点から、自社の能力を見ると何とかできる部分(強み:Strength)、そしてできない部分(弱み:Weakness)を検証する必要があります。
 一方、外部環境の観点から設定された対策が自社の弱みとなるものでも将来を考えた場合チャンスが出てくる要件(機会:Chance)や問題やリスクとなる要件(脅威:Threat)等も同時に検証する必要があります。
 上記で示した英語の頭文字を取ってSWOT 称しています。
 それぞれの内部及び外部環境面からの観察や検討を行い、それぞれに当てはまるプラス要因とマイナス要因を対象企業に当てはめて、それぞれの最終的な対策を見つけていく手法です。

 下記にSWOT 分析に関する 図を参考に示します。

 すなわち、下記に示すような施策方針が設定されたわけであるが、これをSWOT分析にて検証することになります。
 この時の分析作業はC社の経営管理者が中心となり、モデレータ(筆者)のアドバイスに従いこの分析をやりました。

    となる要因   となる要因



  強み

  (Strength)
  弱み

  (Weakness)



  機会

  (Opportunity)
  脅威

  (Threat)

 さて、ここから元の本題に入り上記のSWOT分析に従い実際どのようになるか、モデレータの立場から検証してみることとします。(実際はC社がやる)

 すなわち、下記の冒頭に掲げた仮説的な施策方針から最適案を選定する領域および問題発生の原因を究明する領域についてSWOT分析にて検証することになります。
 この時の分析作業はC社の経営管理者が中心となり、モデレータ(筆者)のアドバイスでやることになりました。

売り上げが減少していることが問題のための施策であり、きめ細かい商品やマーケット戦略が必要となる。
生産設備機械の無駄(故障の多い、かつ止まっている機械)の放置や各店舗の売り上げ減少状況と利益率の調査、そして場合によっては店舗のリストラ要否検討等、会社全体の財務的検討が必要と考えられる。

 次回は来月号に・・

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