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「日本再生“アベノミクス”を成功させるために何が必要か」 (45)
高齢化社会の地域コミュニティを考えよう (21)

東京P2M研究会 渡辺 貢成: 12月号

Z. 読者の皆さん。本年も師走になってしまった。このエッセイはすでに45回となり、2014年4月から始まっている。このエッセイの面白みはPM戦略家が、長年の研究で、自分が学び、考えてきた戦略を駆使することでどのような課題がでてくるかを実践していることであり、戦略理論と実践との間にどのような問題が発生するか、どのように乗り切るべきかを考え、修正して対応している生の実践状況の報告だからである。

このエッセイは10月号で公園改修(STEP1:誰でもが簡単にできる企画を意味する)プロジェクトが中央公園に新しい花壇をつくり、住民が50名で、楽しく花の苗を植え付けたことで終了したことを報告をした。
ところがこのあと11月号で、突然、町の応募に応えて出した提案に関する説明があった。読者は多分奇異に感じたことだろう。なぜなら、この提案は公にならないまま、すでに没になっているからである。

これには、いきさつがある。公園改修STEP1終了後、来年度の予算についての討議があった。結果的には来年度は“アベノミックス”の予算があるから問題はないが、その次の年度予算がついていない。ではどうするかという議論になった。

 Iさんは持続可能性のある提案を最初にしたが、協議会幹部から難しいテーマに挑戦しないことを約束させられた。幹部が困ることを主張すると彼の居場所がなくなるので、まず、簡単にできるテーマに取り組み(STEP1と呼ぶ)、ここで実績を示すことに専念した。ここで彼の考えたわかりやすいテーマをSTEP1と命名し、このテーマで進めることを了承した。しかしこのSTEP1方式を続けていくと、次年度の予算不足が浮上してくる。彼はムラ社会の人々がSTEP1の実践で、持続性可能な解決ができないだろうと予測した。その時は発想を変えて、STEP2予算を提出することを考えた。幹部が自分の決断によって予算が捻出できないことを、実践事例で理解してもらう手法を採用したからである。一部の幹部からは住民が50名も参加して花壇の出現を喜んでくれた。それが成功だと述べた。
 この発想はIさんが言う日本的ムラ社会の発想で、2年後の公園予算は現在の町の予算より縮小されるはずである。折角の花壇化が予算減で縮小されることになったらSTEP1は「元の木阿弥となる」。IさんはこのプロジェクトSTEP1を関係者で成功させたが、予算不足に直面し、自ら考えて、STEP1の継続ではなく、発想を変え、STEP2とし、いかにして公園の維持管理可能性を高めるかを考えようという提案にしたいと考えていた。
 しかし公園だけでその問題は解決できないが、以前提案した案ならば、複数のテーマをプラットフォームに載せることで、維持管理可能体制が獲得でき、一歩前進できるという意見を皆に示したかったため、その内容を11月号で提起した。

 今月は年末の12月号と年末である。IさんのいうSTEP2について、もし可能性があるならその可能性を検討するため、提案を取り上げてみた。

1. Iさんの提案
 Iさんの提案はこの町の現状の多くを取り込んでの価値創出を考えている。
( 1 ) 町の小学校児童の増加を図りたい。
( 2 ) 公社の空き部屋解消への貢献のため、若いカップル向けのリフォームとしてアパート間の空き地にテラスを設け、居住者の相互交流を高める工夫をこらす提案である。
この案はすでに実績があるので検討が楽しみだ。
( 3 ) 共稼ぎ子育てカップル、共稼ぎカップル等の入居をふやす仕組みをリフォームに取り入れる。
( 4 ) 就学児童を増やすことで幼稚園、保育園の経営の安定化が実現し、その代償に彼らに新しい教育方式を提案する。(ペリー方式小学校就学前教育IQ方式からEQ方式の採用。この町の将来性に貢献できる案)
( 5 ) 知恵袋高齢化老婦人のコミュニティが幼稚園児、保育園児の送り迎えへの参加協力方式を考える。(子育て家族への温かい支援)
( 6 ) 公園での遊び等での利用法を考え、利用者の活性化を図る。(住民の自己努力による自己活性化)
( 7 ) 小学校のコミュニティスクール化への協力(新しい効率的な考える教育の導入)が提案された。
( 8 ) 高偏差値教育(覚える教育)からPISA方式(考え、議論し、協力することで成果を出す教育)を提案している。この方式を採用して日本の学童の協力による問題解決が成果を発揮し、N01になったという最近の新聞報道があった。
( 9 ) 発展する脳科学を活用した教育方式の採用(コミュニティ・スクールの目玉)

Iさんの提案の骨子は日本を成功に導いたモノづくり戦略から早く離脱したい。
コトづくりや、これまでの発想を変える脳内改革の実現に努めたい。
また、戦略を重要視はするが、現在の日本的ムラ社会の住人は理想的な戦略は知っているが、環境に合わせて、人材が不足の場合は性急な理想案を避けることも必要となる。

Iさんの第二の提案は町のためにモノづくりをすることではなく、コトづくり、あるいは未来に適応する発想への自己改革、住民の自己改革への努力を求めている。

Iさんは海外プロジェクトを経験し、プロジェクトの責任者として活動したからいろいろなことを勉強した。一番勉強したことはシェル石油(他のメジャーも同じ)のバックアップ資料が充実していることであった。石油精製建設の必要事項、機器、部品までの詳細が文書化されており、仕事を早く処理することができた。そのプロジェクトでIさんはシェルに勝つためには、何をするべきか考え、最も難しい変更管理を的確に実行するシステムを創り上げ、変更管理に成功し、変更の少なさで多くの成果を勝ち得た。その結果、変更を下請けの人々に的確に伝達したことで的確な製品が届き混乱を免れた。
すなわち、ある仕組みを作って変更を極力避ける。変更があれば変更を追跡するシステムを構築し、建設工事に臨んだ。奇跡的にトラブルなしの試運転で、一か月連続無事故運転に成功し、客が用意した3か月の試運転期間で、4月発売予定の石油製品を満タン化し、試運転を短縮させた。
教訓: 海外の企業との仕事ではプロフェッショナルである必要性が高い。
これからは国内向けでもプロフェッショナブルな活躍が望まれている。

次回は諸外国の経済問題、グローバリゼーションで莫大な金儲けを試みている金融資本の実態。EUドイツ一人勝ちという実態。米国経済の実態の理解。日本経済の問題点を理解した上での討論を始めたい。

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