生きていくあなたへ ―105歳、どうしても遺したかった言葉―
(日野原重明著、(株)幻冬舎、2017年9月30日発行、第1刷、210ページ、1,000円+税)
デニマルさん : 12月号
今回の紹介は著者が今年7月にお亡くなりになり、それを悼んで特別出版された本である。著者はあの日野原先生であるが、その半年前にご自宅でインタビューされたものを「忠実に再現した本」と編集者が記している。日野原先生と言えば「生涯現役」の医師として、最後まで講演や執筆や趣味の音楽を含め幅広く活動されていた。その生前のご活躍を悼み、「親交の深かった皇后さまが弔問に訪れ献花され、遺影と対面」(毎日新聞)、「葬儀には、親交のあった文化人や医療関係者、一般の高齢者ら約4000人が参列して別れを惜しんだ」(朝日新聞)等を報じた。中でも印象的な報道に「望ましい生き方と人生の終え方を提言された日野原先生が、それを実践した生を終えられた」と聖路加病院の福井院長が記者会見で話したとある。具体的には、延命治療(身体に管を入れて栄養を取る径管栄養や胃ろう)を拒否されたとのこと。105歳まで元気に生きられた先生が、人生の終え方を自らの提言された通りに実践された。その先生が遺された数々の言葉が、この本に凝縮されている。
生涯現役の医師 ――百歳は次のスタートライン――
この本の冒頭に「105歳という人生の中で、いつも私を支えてくえたのは『言葉』でした」と対話の大切さを書き、この本でそれを成し遂げるべく「言葉を杖にとぼとぼ歩く」と表現されている。他にも講演でのお話や、数々の著書での文章にも先生のお言葉が、今でも我々の心に残っている。先生が百寿祝で書かれた本「悩めるあなたに贈る『至福の百話』」に“百歳は次のスタートライン”と記されている。まさに生涯現役を有言実行されている。
いのちの授業 ――命は私たちに与えられた時間――
先生は、70歳後半から「命の大切さ」を伝えるために、全国の小学校に出向かれて「命の授業」をされた。NHK教育テレビでも放映され200以上の学校で実施された。その授業で、「命とは、どこにあるか」と訊ねると、子どもの答えは心臓や頭の辺りを指しますが、「命というのは、君たちが使える時間の中にある」と答えていると、この本で書いている。命とは何であるかを問うて、自分達の生き方が子供達の手本となる生き方を訴えたという。
遺したかった言葉 ――感謝に満ちた気持ちでキープオンゴーイング――
この本を作成する為のインタビューで、「死ぬのは僕でも怖いんだよ。自分のことは一番分からないから、一生かけて発見していくものだよ」と語っている。そして、この本の最後に先生からのメッセージ「生きていくあなたへ」がある。その一部に「私は『キープオンゴーイング』、この『言葉』を若い人と一緒に、皆さんと一緒に口にして、皆さんと一体化して行動すること。感謝に満ちた気持で、キープオンゴーイング」と書かれてある。(合掌)
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