図書紹介
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バッタを倒しにアフリカへ
(前野ウルド浩太郎著、光文社新書、2017年7月20日発行、第7刷、378ページ、920円+税)

デニマルさん : 11月号

今回の紹介する本は、色々な意味で異色である。それが話題性を高めているとも言える。先ず、本のタイトルと表紙が人目を惹く。「バッタを倒しにアフリカへ行く」とは、その詳細内容は後述するが、バッタって昆虫のバッタなのかと中味を確かめたくなる。次に、その表紙だが、緑の布らしき服を纏って虫採り網を手に持っている写真だ。更に、顔を緑色に塗り、2本の角のあるカツラを付けている。次に著者名にウルドなるカタカナが付いていて、何者かと気になって本を手にした。そんな理由で、この本を紹介したくなった。この異色の本だが、第4回(2013年)「いける本大賞」を受賞している。更に、今年度の「新潮ドキュメント賞」の候補作品に選ばれた。それと著者だが、日本の青年がアフリカでの活躍を認められて、ウルド(現地の子孫である尊称)なるミドルネームを授けられた。地味なバッタの研究をド派手に分かり易く、且つ熱く燃えた研究記録を纏めたエッセーである。

バッタ博士の誕生          ――ファーブル昆虫記に魅せられて――
著者は国際農林水産研究センターの研究員で、通称:バッタ博士と呼ばれている。現在37歳であるが、波乱万丈の人生である。幼少時に「ファーブルの昆虫記」に魅せられて昆虫学者を志した。更に、外国で観光客がバッタに緑色の服を食べられた記録に興味を持ち、「バッタに食べられたい」願望を強く抱き、大学でバッタの研究に没頭した。そしてバッタの相変異(昆虫の群密度の変化による形態の変化)で学位を取得してバッタ博士となった。

バッタを倒しにアフリカへ      ――サハラ砂漠のモーリタニアまで――
この本でのバッタはサバクトビバッタで、漢字で砂漠飛蝗と書く。このバッタが、大発生して、アフリカや中東や東南アジアで農業に大きな被害(蝗害と言われる)を与えている。その被害を食い止めるために、西アフリカのモーリタニアにある国立研究所では種々バッタの研究をしている。その研究所にバッタ博士が単身乗り込み、バッタ撲滅に挑んだのだ。バッタの大量発生で定評のあるモーリタニアだが、その発生兆候を探すのも研究である。

バッタは倒せたのか       ――「神の罪」に挑んだヒューマン・ドラマ――
サバクトビバッタはアフリカの半砂漠地帯に生息する害虫で、「群生相」という飛翔能力に長けた状態になると群れで長距離を移動して農作物を食い荒らす。その数百億匹が一群となり、東京都内全域を覆う位の脅威らしい。だからバッタの来襲を「神の罪」と恐れられている。著者は幼少からバッタに食べられたい願望で、広いアフリカでバッタの群れを探したが苦労の連続である。果たしてバッタと巡り会えたのかは、読んでのお楽しみである。

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