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「エンタテイメント論」(115)

川勝 良昭 Yoshiaki Kawakatsu [プロフィール] :10月号

エンタテイメント論


第 2 部 エンタテイメント論の本質

6 創造
発想阻害排除法①-4
①優れた発想は、発想を阻害する「固定概念」や「先入観」を排除する事で生まれる(その4)
●固定概念 & 先入概念、固定観念 & 先入観(念)
 前号で固定概念や先入観を脱出する「在り方(基本的考え方)」や「やり方(具体的方法論)」に関して数多くの説や意見などがあること、それらを本誌でとても書き切れないことを伝え、敢えてそれ以上の説明を打ち切った。

 しかし打ち切る意志が強く働いたためか、前号の最終に「完」と書いた。間違いである。「つづく」が正しい。訂正して詫びたい。

出典:固定概念と先入観は差別観を生む Stereotypes-updated.jpg&action
出典:固定概念と先入観は差別観を生む
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 さて固定概念や先入観からの脱出の夢工学式な「在り方」と「やり方」を説明する前に、明らかにすべき事があった。しかしそれを無視して先に進もうかと思ったが、聡明な読者を意識すると先に進めなかった。今しばらくお付き合い願いたい。

 それは「固定概念と先入観」の言葉の意味に関することである。正しくは固定概念と先入概念、固定観念と先入観(念)の2つに分けて議論すべきであった。しかし世間では固定概念と先入観とクロスして表現している。筆者もこの表現に従った。間違いではない。簡略化されただけだ。

 概念と観念とはどう違うのか? 簡単な方から説明する。「観念」とは、物事に対して個々人が持つ主観的な考え、感覚、イメージを云う。一方「概念」とは、物事に対してその本質的な特徴、基本的な特質など捉え、個々人を超えた、客観的、普遍的、共通的な思考の枠組みを云う。これには感覚やイメージは含まれない。

 例えば「魚の観念」と云えば、「寿司」や「釣り」などの感覚やイメージを云うものだ。一方「魚の概念」と云えば、「魚とは何か?」と云う社会的定義や生活的定義、「魚のDNAは何か?」と云う科学定義などを伴う思考の構造を云う。

出典:魚 thegraficsfaiy com 出典:魚
thegraficsfaiy com

 以上の区別をすると、今まで取り上げてきた「固定概念と先入観」の議論を「概念と観念」に分けて再度議論せねばならない。理解するのも複雑になる? と思いきや簡単である。「固定」と「先入」と云う観点から議論すると、共に新たな発想を妨げる要因であることで共通し、固定された概念と固定された観念、先入された概念と先入された観念と分けると簡単に理解されるだろう。

 さて概念と観念も新たな発想を左右する源である。言い換えれば、各人の過去から現在に至る過程で獲得された概念と観念こそが我々の基本的思考と行動の源になっている。前号でそれらを生存のための「基本律」と定義した。

●理性と感性の自由な交互往来又は瞬時往来
 固定概念と先入観で行き詰まった思考と行動を開放するための所謂、夢工学式の「固定概念と先入観の排除方法」は何か? 長年探究した。いろいろな方法を見つけた。しかしいろいろな方法があるとどれを活用してよいか? 分らなくなった。

 そのため絞りに絞って、単純性、有効性、活用性、実用性のある方法を何とか探し、結論付けた。それは「理性と感性の自由な交互往来又は瞬時往来」である。何の事か? 順序立って説明したい。

 アインシュタインは、理論を考える事に疲れると、「数学ゲーム」の「遊び」に興じたと言われている。また将棋の羽生名人は、将棋を考える事に行き詰まると、「詰め将棋」の「遊び」に興じたと本人自身が某雑誌のインタビューで語った。他にも大勢の科学者、工学者、事業家が同様の事を語っている。

●遊びの効用
 レゴ、ビデオ・ゲームなどの「遊び」は、面白く、疑似体験が出来るため熱中になる。理屈で考えて(理性発揮)上手く行かない時や失敗した時は、勘や直感を働かせ、理屈に合わない様なデタラメな事を考え、やってみることだ(感性発揮)。遊びのため失敗が可能で、何度も試行錯誤ができる。

出典:レゴ lego-appeal.png
出典:レゴ lego-appeal.png

 しかし勘や直感やデタラメでやっても(感性発揮)上手くいかない時は、徹底して理屈で考え(理性発揮)、順序立ててやる。そうすれば、上手くいく。

 行き詰まった時に、遊びに興じる効用は大きい。「遊び」は、視野を広げ、いろいろな事に関心を向けるので、難問を解決する思いも寄らない優れたアイデアを導き出す。

 繰り返し述べたい。何らかの物事を、理性(機能)を発揮し上手く行かなかった場合、直ぐに感性(機能)を発揮することである。一方感性を発揮しても上手く行かなかった場合、直ぐに理性を発揮することである。

 要するに「理性機能発揮」とは、「理詰め(現実視)」で物事を考えること。「感性機能発揮」とは、「デタラメ(空想視)」に物事を考えることである(別途説明)。この両方を駆使しないと長年身に付いた「基本律」の一部を一時的(発想する時)でも変える事は難しい。

 以上の様に理性と感性の機能が交互にシーソーの様に往来して発揮すると固定された概念や先入観は消える。更に強力な方法は、理性と感性の機能がほぼ瞬時に往来させる。中々難しいが慣れれば可能となる。瞬時とは両者を「同時・同質」に発揮すること。こうすれば、固定概念と先入観に囚われた思考や行動は自由に開放される。

 「理性と感性の交互往来又は瞬時往来(同時同質)」が固定概念や先入観を打ち破る。その往来能力は「遊び」で培われる。何故なのか? 学問的に証明されていない様だ。従って信じて貰う以外に無い。

 なおチェスの様なゲームは、勝敗を競うので、熱中し、他の事は考えられなくなる。この熱中した後にアイデアが浮かぶ。もっともチェスを仕事としている人物は、チェス以外の「遊び」に徹することが必要である。

出典:チェス www.chess com 出典:チェス
www.chess com

 理性と感性のシーソーを働かせ、発想を生む「遊び」には、レゴ、ゲームの他に「道楽」、「趣味」、そして「エンタテイメント」が含まれる。更に「芸術」にまでになると益々、優れた発想を生む。 以前、本誌で紹介した「黄金の三角ピラミッド」が以上の事を象徴する(別途説明)

 ちなみに筆者は、ピアノ、ベース、ドラムスのトリオ+女性歌手で出演、ジャズ・ピアノを演奏する道楽を持っている。しかも東京都内のジャズライブ・ハウス「東京倶楽部」に毎月「箱出演」と云う幸運に恵まれている。

 出演時、演奏に熱中し、お客様からお酒を奢って頂き、演奏後は出演料まで頂いている。一石三鳥である。演奏中やお客様と雑談している時、ふっとアイデアが浮かぶ。更にお客様にそのアイデアを話すとそれを実現してくれる会社まで紹介してくれる。こうなると一石五鳥となる。

出典:筆者の東京倶楽部での出演風景
出典:筆者の東京倶楽部での出演風景

つづく

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