今月のひとこと
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プログラムマネジメントって分りますか

オンライン編集長 深谷 靖純 [プロフィール] :10月号

PMシンポジウムが終わるとすっかり秋です。やや汗ばむ日はあるものの、いつのまにか日が落ちる時刻が早くなっていました。10月1日は日本酒の日です。ちょっと寄り道して、あるいは早めに帰宅して、好きな銘柄をチビリ。「秋あがり」とか「ひやおろし」とか、季節限定のおいしい日本酒も出回り、左党にとってはたまらない季節です。くれぐれも飲み過ぎないように気をつけましょう。

久々のPM「欠陥」探りです。
PMシンポジウム2017の大会テーマは「次世代への共創~イノベーションを支えるプロジェクトマネジメント」でした。P2M的には、イノベーションを支えるのは「プロジェクトマネジメント」ではなく「プログラムマネジメント」というべきではないかという声が聞こえてきました。実は、PMシンポジウム実行委員会においてテーマを検討する際にも、どちらにするかの議論が行われていました。P2Mガイドブックの初版が出たのが2001年、「プログラムマネジメント」の世界標準(ISO)化も間近といった状況ではありますが、P2Mを知らない人々に伝わるようにと「プロジェクトマネジメント」に落ち着きました。
しかしながら、プロジェクトに関わるマネジメントの呼称が複数あって、どの呼称を使うかその都度検討しているという状況は、やはり好ましくない状況ではないでしょうか。
モダンPMがカバーする領域だけではプロジェクトのマネジメントが成り立たないので、不足する部分に関してプログラムマネジメントと呼ぶ新たなマネジメント体系を構築し世に問うたという点で、P2Mには大きな意義があります。マネジメントの前に「プログラム&プロジェクト」と付けたネーミングも、その主張を象徴的に示す素晴らしい戦術だったと思います。しかしながら、それはモダンPMに携わっていた人を念頭に置いた部分最適な戦術であって、プロジェクトのマネジメントとしてP2Mを普及していくうえでは、難度を高くしていたのではないでしょうか。

P2Mガイドブックをじっくりと読むと、「プロジェクトマネジメント」や「プログラムマネジメント」の概念を理解することはできます。もっと言えば、じっくりと読まないとその概念は理解できません。ここがP2Mの普及を阻んでいる要因の一つではないでしょうか。前後の修飾語は省略しますが、P2Mガイドブックではプロジェクトを「価値創造事業」、プログラムを「複数のプロジェクトが有機的に結合した事業」と定義しています。プロジェクトマネジメントは「実践的能力をプロジェクトに適用すること」、プログラムマネジメントは「プログラムミッションの達成を目的とするマネジメント」です。こうした定義では、相互の関係が表現できていません。
例えば、次のような定義としてみてはどうでしょうか。
プロジェクト:価値創造事業
プログラム:プロジェクトのうち、以下をマネジメントの対象とするもの
  プロジェクトの上流及び下流
  有機的に繋がる複数のプロジェクト
プロジェクトマネジメント:プロジェクトに関わるマネジメント
プログラムマネジメント:プロジェクトマネジメントのうちプログラムに関わるもの
現状のガイドブックの内容とは大きく異なりますので、問題点は多々ありますが、こういうことであれば、相互の関係を理解しやすいのではないでしょうか。

プロジェクトを実践する者の立場からは、マネジメントの呼称が何であろうとどうでもいいことです。マネジメントが必要な場面で、適切なマネジメントを適用することができればいいのです。イノベーションということであれば、シーズあるいはニーズからスタートするとして何かを創造しようという意思が漠然と明らかになってきたところから、プログラムマネジメント(ミッションプロファイリング)の適用が始まります。そして、イノベーションの達成に向け、1つあるいはいくつか複数のプロジェクトが立ち上がるのです。こうした活動を支えるマネジメントを「プログラムマネジメント」と呼ぼうが「プロジェクトマネジメント」と呼ぼうが、こだわりはありません。P2Mガイドブックには、P2Mの世界での「プログラムマネジメント」と「プロジェクトマネジメント」の関係が記載されていますが、P2M資格者を除くと大多数はガイドブックを読んだ事がないのです。

P2M発表当時に比べ、プログラムマネジメントの認知度は、PM専門家の間では十分に高くなっています。モダンPMとの違いを強調するためにとった戦術を見直す時期に来ているのではないでしょうか。PM(プロジェクトに関わるマネジメント)の普及をミッションとするPMAJにおいて、P2M普及プロジェクト(またはプログラム)の計画を早急に組み立て直さなければならないと思うこの頃です。

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