今月のひとこと
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  続・愚直マネジメント  

オンライン編集長 深谷 靖純 [プロフィール] :9月号

 南の海に台風が続々と発生しそうだとか、不気味な噂が聞こえてきます。8月には、猛暑が続くとの予報が外れたので、台風の予報も外れて欲しいと願っています。それにしても、こんなでたらめな天候の季節にオリンピックなんて、おもてなしの精神に反するのではないかと気を揉んでいます。

 先月に続いて、愚直マネジメントです。
 どうして人は決めたことを、そのまま実行できないのでしょうか。特にIT系のプロジェクトで目につきます。プロジェクトマネジャーも知らないうちに、機能の追加・削除が行われていたり、タスクの実施スケジュールが入れ替わっていたりということがあります。追及すると「現場判断で臨機応変に対応しても構わないような些細なこと」だと思ったといった回答が返ってきます。技能が上がると慢心しやすくなるというのは世の習いですが、ついつい油断をして計画にない行動をしてしまうのでしょうか。「仕込まれたことを繰り返し実行するのは仕込まれた猿と同じ、状況に応じて融通無碍に行動できるのが一人前の人間だ」と、猿へのライバル心を燃やすがうえの行動なのでしょうか。
 プロジェクトマネジメントを実行するにあたっては、様々な技法・ツールの中から、プロジェクトに合ったものを選定します。どんなに優れた技法・ツールであっても使いこなせなければ意味がないので、研修や訓練を行いメンバーの習熟度を上げます。しかしながら、どんなに習熟度を上げても、計画通り行動しない者がいると、プロジェクトは崩壊に向かうのです。決めた通りに実行するということは、プロジェクトマネジメントの前提であり、この部分が成り立たなければ、技法もツールもプロジェクトの足枷になるだけで、役に立たなくなります。
 計画を立てて実行するだけのことができれば、少々へぼなプロジェクトマネジメントであってもプロジェクトが成功する確率はあがるはずです。今、世の中でプロジェクトの成功率についての議論がありますが、プロジェクトマネジメントの良否について検討するのであれば、メンバーが計画を守らなかったプロジェクトは除外すべきだと思います。
 無論、状況の変化に対応できない頑迷なマネジメントを良しとするものではありません。計画変更のためのルールを守り、メンバー全員への伝達が徹底できるのであれば、計画変更は大いに行われるべきです。身勝手な理由でルールを無視する、些細なことだと見過ごしてしまうといったことが問題なのです。
 やるべきことを愚直に実行することの大切さを、今一度思い出してほしいと思います。

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