今月のひとこと
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  愚直マネジメント  

オンライン編集長 深谷 靖純 [プロフィール] :8月号

 夏の花の代表というとアサガオにヒマワリ。「朝顔」「向日葵」と漢字で書くと、暑さの中に爽やかさを感じます。住宅街や公園で目につくのが、サルスベリの紅色の花です。偶に白い花を見かけることもありますが、漢字で書くと百日紅となります。「白」に一を足した「百」と、「ノ」を取った「日」の組み合わせで「白」という洒落でしょうか。「白紅」と書くのをはばかる理由でもあったのでしょうか。「猿滑り」とは書かないそうです。

 先日、軽い食事とお酒を供にプロジェクトマネジメントについて語り合おうという会合がありました。P2M実践事例の紹介や、P2M普及が進まない理由等、様々な話題が取り留めなく展開していました。意見を集約しようという集まりではなく、出来るだけ多くの事例や意見・考え方を聞いて、参考になることがあれば改めて情報交換するということでした。興味を引くような内容も多く、お酒が入っていることもあり、大いに盛り上がりました。予定の時間が近づき、参加者全員が一言ずつ発言して終了することになりました。一人あたりの時間も設定されましたが、勢いがついて止まらない人もあり、終了予定時刻をオーバーするのは確実となった時、その方の話す順番になりました。
 「私は、多くのプロジェクトにマネジャーとして携わってきました。その時メンバーに対して『時間を守りなさい』ということを一番に徹底してきました。本日は、○時までということでした。部下に時間を守れと言ってきた私が、それを破る訳にはいきません。これをもって帰らせていただきます。」
 その方は、そのまま帰って行かれました。
 残された参加者は唖然としてはいましたが、その方の行動について批判とか非難をするということはありませんでした。主旨を伝えるためには、そういう行動をとる以外、適当な方法はなかったのだと、皆さんが思ったようです。
 高邁な革新思想を掲げるプロジェクトにおいても、その現場では愚直に守らなければならないことがあるということを、参加者の一人ひとりが思い出していたのではないでしょうか。その会合に相応しい幕切れでした。

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