例会部会
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『第224回例会』報告

岡崎 博之 : 9月号

【データ】
開催日: 2017年7月28日(金) 19:00~20:30
テーマ: 「なぜ、プロジェクトマネジメントに人間系スキルが必要なのか」

講師: 佐藤 義男 氏/株式会社ピーエム・アラインメント 代表取締役社長

【はじめに】
佐藤氏はPM(プロジェクト・マネジャー)の成功には人間系スキルが重要であるとして、PMAJのITベンチマークSIG/WG(PMの成功条件)の調査研究を主催しました。さらに、この成果を踏まえ、2013年にIT分野向け研修講座「ITプロジェクト・マネジャーのための人間系スキル強化」が開発されました。当該講座では、プロジェクト・チームを効果的にマネジメントするために必要な人間系スキル(人間関係スキルと行動特性)向上のために、4つの人間系スキル(リーダーシップ、問題解決力、達成と行動、コミュニケーション)が取り上げられています。
その後「プロジェクト・チーム・ファシリテーション研究会」(主催は駒谷氏/前エヌ・ティ・ティ・データ)に参加したことが、新しいリーダー像研究のきっかけとなり、その成果として『思いやり型リーダーシップ』の出版を機に前述の講座内容を改訂されました。本例会では、人間系スキルを強化する実践的アプローチをお話しいただきました。

【プロジェクトマネジメントの新潮流】
● 超上流から全ライフサイクルを対象とするプログラムマネジメントに現実的対応を求められる要件が増加している。
● 環境変化に伴い、ビジネスのスピード・使いやすさを重視したシステム化が増えている。
● 人間系スキルが重要視されている。
PMBOK®準拠のPM技術を習得したものの、ITプロジェクトは人間系スキル不足で失敗しています。つまり、人間系の新しいやり方が必要となっているのです。実際にPMI2016 北米大会においては、リーダーシップ等の人間系スキルの講演が多く、3つの基調講演のうち2つがリーダーシップであったこと、また91 の発表のうち人間系スキルの講演が全体の 42%と多く、人間系スキル、特にリーダーシップに高い関心が寄せられていました。

【プロジェクトマネジメントに人間系スキルが必要な理由】
今はデジタル化が急速に普及し、個々人と企業の関わり方が変化しています。さらに指揮・命令型はもはや通用しないと言われており、リーダーシップのあり方が問われています。
また、今後の日本のビジネス社会の担い手となる、Y 世代(1975~1989 年に生まれた世代)の影響力が拡大し、個々人と企業の関わり方がますます変化することが予想されることから、企業はこれに対応する必要があります。このため、プロジェクトマネジメントでも人が自ら動き、自らの働きがいを持ち成果を出す新しいリーダーシップ「思いやり型リーダーシップ」が有効であると考えられます。

【思いやり型リーダーシップとは】
佐藤氏が命名された「思いやり型リーダーシップ」は、
● 変化に適応し、個人がワクワク感をもって仕事をして目標達成するチームを支援する人間系リーダーシップです。
● 「夢」を持ち、成功に挑戦することで、目標を共有した個人の価値観により人が自発的に動く温かいリーダーの資質です。プロジェクトは人で構成されています。人の心をつかみ、人が自発的に動く、ことで目標達成するのです。
● 思いやり型リーダーシップは、現場力とチームワークで企業の強みを発揮する日本人の強みを生かしたものです。

このあと、思いやり型リーダーが活躍する場面、思いやり型リーダーに必要な行動特性についてお話をいただき、思いやり型リーダーシップを育成する講座についての紹介がありました。

【まとめ】
「思いやりは、デジタル時代の有能なビジネス・リーダーを生み出す」というメッセージで締めくくっていただきました。

【所感】
『思いやり』がプロジェクトを円滑に進めることに寄与することは理解できましたが、それがリーダーシップと結びつくという部分・展開は腑に落ちませんでした。講演後の懇親会において佐藤講師より、東日本大震災で訪れた被災地(宮城県)でのボランティア活動において人間系スキル(リーダーシップとフォロワーシップ)の大切さを痛感したことが今回の『リーダーシップと思いやり』が結びついたきっかけであったことを伺い、まさに日本型のリーダーシップのあり方であることに納得できました。

佐藤様、新しいリーダーシップ像を示していただき大変ありがとうございました。

以上

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