「グローバルPMへの窓」(第115回) カザフスタン アスタナ経済フォーラム
6月は、13日から19日までカザフスタン共和国の首都アスタナ市で開催された「アスタナ経済フォーラム2017”Economic Forum Astana”」のスピーカーとしてカザフスタン政府行政統括庁と国際連合開発機構(UNDP)の招待を受け、本ミッションを無事遂行し帰国した。
この出張は1ヶ月以内で2回目となる、5月末の南ロシア遠征に次ぐ、ユーラシア大陸のほぼ中央への旅で(各々片道25時間・18時間)、70歳代の者には過酷といえば過酷だが、なによりも、ホスト国に深く受け入れていだだけると疲れはそれほどでもない。今年は9月末まで、9月第1週のIPMA-世界PM協会連盟の世界大会での重責も含めてフル稼働となる。
今回の旅は、これから3か月の過密スケジュールを考慮し、主催者旅費規程との差額を払って韓国アシアナ航空のビジネスクラスでカザフスタンの最大都市アルマティ―(旧名アルマータ)まで往復した。アシアナは2011年までインドPM大会に10年間基調講演をやりに行く後半によく使用していたが、サービスの雰囲気はかなり変わってきていた。アシアナの初期にはANAが乗務員空連を担当したとかで、かつては日系エアラインと似た雰囲気であったが、現在は、食事とかCAの英語とか、グローバルエアラインを意識している。
アスタナ経済フォーラムでは、招待されていた世界的に著名な日本のエコノミストが参加を取りやめた。勘ぐるに、これは、北朝鮮のミサイル発射危機を考慮してのことだろうか。なにせ、カザフスタンに最短ルートで行くとなると、北朝鮮国境から40キロの位置にある韓国ソウル・インチョン空港経由となる。筆者も、組織人であった時には、躊躇したであろうが、今は自由人であり、度々行くフランスのテロ発生と同じで、ミサイル発射も毎日は起こらないであろうとあまり心配をせずに出かけている(ちなみに、ヨーロッパに行くフライトはすべて、ロシアに入る前に北朝鮮沖を通過せざるを得ない)。日本からインチョン空港に入るにも、中国の北京上空から入るにも、下方に弧を描いて空港に接近する様子がよく分かった。
北京上空からインチョン空港への入り方 |
天山山脈を望むアルマティ―市 |
アスタナ経済フォーラムは10回目の開催とのことで、3500名くらいが参加し、11のストリームを各々異なるオーガナイザー(筆者の参加ストリームはカザフスタン政府行政庁と国際連合開発機構、他にはThe Economist, Morgan Stanley, Booze & Allen, BBCなど)が、別個に企画・スピーカーハンティング・集客・当日運営を行っていた。大きな大会を開催するには良い運営方式であるが、スピーカーになると、他のストリームに参加できないのは不都合だ。
筆者のストリーム”Global Forum-“Managing opportunities: Global Challenges to Leadership”では国連のヨーロッパ・中央アジア統括官、OECDの公共ガバナンス局長、中央アジアの首相経験者、カザフスタンの大臣経験者・副大臣・代表的学者、上海機構の事務局長、アジア開発銀行の副総裁、英国の元労働大臣・公共大臣、米国連邦政府行政学院の理事、アジア各国の行政大学院・国家戦略大学院の学長などがCo-speakerであった。この中で異色である筆者が招かれたのは、カザフスタン政府がプロジェクトマネジメント活用を公式に宣言し、行政大学院のなかに、推進プロジェククトチームを設けたことを受けての一本釣りであった。
昨年11月にPMAJが(一財)日本国際協力センター(JICE) の委託を受けてインドネシア政府行政官のプロジェクトマネジメント研修を実施したが、その案件は世界銀行のファンドによる案件とのことであった。確かに国連や世銀は途上国の政府のPM体制構築や行政官のPM力構築を支援していることがよく分かった。
筆者の招聘元は、カザフスタン政府行政統括庁・大統領直属行政大学院大学と国連開発機構であるので、行政大学院では、大会の前日に、若い行政官と教員総勢50名に向けて2時間半の特別講義を行い、また、国連開発機構のカザフスタン・ハブで、大会前に、チェアマン(元カザフスタン政府の内閣府統括大臣など要職を歴任)を表敬訪問し、政府でのプロジェクトマネジメント推進に関して意見交換を行った。
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大統領直属行政大学院大学での特別講義 |
国連開発機構カザフスタン・ハブ会長と |
経済フォーラムのクロージング基調パネル討議には、ナザルバエフ大統領(76歳)が出席され、15分のスピーチの後、2時間のパネル討議に最後まで参加された。ナザルバエフ大統領は1991年の独立以来大統領職にあるが、国の発展に向けて高質かつ一貫性のあるグランドデザイン政策を連続して掲げておられ、また国民と絶え間なく対話を進める姿は感動的である。
アスタナ市は、中国国境に近いアルマティ―から1997年に首都を引き継いだ。日本の黒川紀章氏がマスタープランを手掛け、今日まで20年かかり整備してきたが、風格のある首都に発展している。まさにプログラムマネジメントによって整備した都市で、道が広いし、緑も多く、高層ビルがそこかしこにあり、シンガポールのようであった。アスタナではGreen Energy, Green EconomyをテーマにしたEXPO2017の開催が始まったところであった。
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オフィスセンターとEXPO参加国シンボル |
政府省庁統合庁舎 |
アスタナ市はユーラシア大陸の真ん中にあり、国自体もちょうど真ん中になる。国民の顔つきは日本人そっくりの人も多く、(約2割のロシア人などヨーロッパ人を除けば)アジア人であるが、心はスラブ人と、カザフスタンはなかなか不思議な国である。 ♥♥♥
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