イベント業務プロセスを学ぶ
東京P2M研究会 鎌賀 信吉 : 6月号
最近は各地で多くのイベント・催しが企画・実行され、お目当てのイベントを探すのも一苦労という状態で、一種のブームになっているのではないかと思うほどです。中でも、市民団体や市民グループが主催するソーシャルイベントまたはコミュニティイベントと呼ばれる種類のイベントが注目されています。住民同士の連帯を深め、地域としてのアイデンティティ醸成に寄与しようというもので、地方自治体だけでなく、大学・研究機関、開発業者、地域企業が連携をとりながら推進されています。中には、社会的なテーマを扱い、次々とプロジェクトを生み出し、ある目標を達成しようとするものもあります。
しかし、これらのイベントの中には事故・問題が発生してしまい、継続を断念せざるを得なくなる例も報告されています。発生理由は様々ですが、それはイベント自体が非日常的なものであることも影響しているのではないでしょうか。普段あまり行わないイベントの「業務プロセス」を知識として理解することは、イベントを開催される方にとって大きなヒントになるものと思っています。
私自身はイベント業界のプロフェッショナルではないのですが、業界の知見を文献・ヒアリングを通して研究を行っております。今回はその一端として、大きな流れをご紹介できればと思います。一般的に、イベントづくりには以下の5つの段階があるとされています。
企画立案 ➡ 計画策定 ➡ 制作・施工 ➡ 会場運営 ➡ 結果の検証
イベントづくりは企画立案から始まります。発想したアイディアを なぜ・なにを・だれに といったいわばイベントの骨格といえるものにまとめていくことです。他のイベントにはない新しさ・違いを盛り込み、多くの人が共感できるメッセージにまとめていくことがイベントの成功の第一歩となります。
こうしてできあがったイベントの骨格は、実現されるために具体的な形に落とし込まれます。これは基本計画とよばれ、プロジェクト計画に相当するものと理解できます。この7基本計画によって、イベント全体の作業を作成し、スケジュール化し、予算に落とし込みます。この基本的な計画書は、実際のイベントづくりの内容を盛り込んだ実施計画のもととなっていきます。
所謂プロジェクト実施にあたる段階のことは、イベントにおいては制作とよばれます。会場を選定・施工し、当日の「プログラム」を設計し、スタッフィング・キャスティングを行っていきます。構成表・進行台本といったイベントならではのドキュメントも必要となります。
そして、イベント当日を迎えることになります。準備期間に対して短い期間になりますし、イベントによっては多くの専門家・ボランティアを投入し運営することとなります。事故やトラブルを回避し、来場者に快適に過ごしてもらい、演者・競技者の満足度も維持するためには、会場運営の優れたスキルと経験が必要とされる高度な業務といえます。一般の人たちが自分たちでイベントを開催する際、もっとも難易度の高い段階になるのではないかと思われます。
イベントの会場運営が完了したら、その振り返りを行ってスポンサーや地域住民に報告を行うことも昨今は行われています。主催が学生の場合、後輩に手順を引き継ぐことも、イベントを継続させるためには不可欠なことといえます。
このように、イベントは日頃企業において遂行されているプロジェクト等は全く異なる進め方で行われています。イベントの特徴・より多くの事例を引き合いにしていくことで、整理していくことが必要になります。今回は触れられなかった「業務プロセス」各論について、今後も機会があれば発信していければと思っております。
参考文献
・ |
「基礎から学ぶ、基礎からわかるイベント」
日本イベント振興協会 |
・ |
イベント業務者能力評価システム高度化事業 事業活動報告書
経済産業省委託事業 平成20年度サービスイノベーション創出支援事業 |
以上
|