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「日本再生“アベノミクス”を成功させるために何が必要か」 (39)
高齢化社会の地域コミュニティを考えよう (15)

東京P2M研究会 渡辺 貢成: 6月号

Z. 先月号では【魅力ある地域公園づくり】というプロジェクトがワークショップを実施した結果、大きな成果をあげたと聞いたが、すこし疑問を感じた。しかし、Iさんはその質問に対し「魅力ある公園づくりはハードの充実ではなく、住民が公園を賢く利用し、楽しく遊ぶ、イベントを考え実施するなど、行政が考えないことをすること」だという。例えば、反抗期に入る子供と親の関係を改善するため、月1回父親集団と中学生集団の遊びや競技、バーベキュー等のイベントを行い、公園を通じて世代間の意思疎通を図るような関係性構築が必要だということを聞いた。この方法には一理あると思ったが、新年度になって、どのような展開になったかな。
I. 住民の世代間交流という話は公園の活性化はハードの充実ではなく、住民そのものの活性化という、29年度の課題です。ここでは28年度に成果をあげた話をします。前回話しましたが、課題検討部会がその成果を認められ、2つの分科会(【魅力ある公園づくり分科会】、【里山健康ウォークマップ分科会】)は併合し、「公園・散策路部会」に昇格し、他の【XX小学校地域交流拠点化づくり】は既存部会に吸収合併となりました。そして私は新部会の部会長になり、仕事がしやすくなりました。
Z. どんなふうに仕事がしやすくなったのかな。
I. これもお話し済みのことですが、課題検討分科会で公園部門は成果をあげることが困難であるという判断から、再生協議会の会長が実力者を傘下に集めてくれました。そして会長自身が参加して協力されたことが成果をあげた原因です。
 実力者が入った会議は、素晴らしい意見を出してくれますが、実力者は典型的な日本的ムラ社会の住人です。発言に行政との駆け引きを含めた話が混じ、阿吽の呼吸的話で終わり、話を文章化してくれませんでした。分科会の時代は私は責任者として、彼らの発言を文書化し、分科会の他のスタッフ全員が分かる文章にまとめてきました。理由は文書化しないと議事録が残らず、次の会議で話が前進しないからです。しかし、今度は部会の責任者です。地位が確保されたため、方針を変えました。
 「Bさん、今のお話は大変すばらしいが、頭のよいBさんの優れた頭脳の中まで見通すことはできません。まして頭脳の中身を文章化する能力を私は持っていません。Bさんのすばらしさは町の行政の発想を理解した上の発想です。でも他のスタッフは最新の町の方針、国の方針を詳しく知っていません。今のお話を文章化してください。なお文章化に際しては絵と表を加えて、理解しやすい文章化をお願いします」と。
Z. それは面白いね。部会長という権力を手に入れると、そこまでできるのかね。
I. 私は、ある意味で「総論ばかり言って、具体論がかけている」と思われてきました。
 日本的ムラ社会の住人は“あいまいさ”が好きです。責任を取らない習慣に慣れています。しかし責任者がムラ社会から離脱したいと思ったら、ある種の工夫で、ムラ社会的発想から離脱できることを発見しました。
 町との会議に際して、責任をもって話をしてもらうために、表と絵をもちいてプレゼンテーションすることを要請しました。
Z. それは重要なことだ。行政との打ち合わせという真剣勝負は大物といえども恥をかくことはできないからな。
I. もともと有能な彼らであったため、彼らは文章化に力を出してくれました。出来上がりを見るとプロフェッショナルな作品です。これで説明すると行政の反応が良いことが分かりました。
Z. 行政はその道のプロで法律や、新しい法規等を学んで行政を実施している。
I. 行政はその道のプロです。しかし一般の住民は素人です。彼らの切実な要請も、予算管理に縛られている行政担当者からみると心を打つ内容になっていません。わがままな要求とみられてきました。
Z. では、行政という日本的ムラ社会の典型は住民に対し、プロ的な要求を求めてこなかった。
I. その通りです。行政というムラ社会はプロ的な要請で成り立っていると考えるより、権威の威を借りて運営してきました。しかし、人口減少で予算の欠乏が表面化した結果、行政としての、権威の威も効かなくなってきました。私が考えますに、今度は町にもエンジニアリング的手法が必要になってきつつあります。権威に頼るのではなく、価値をつくる工夫に頼る時代になったのです。残念なことに日本には欧米が最大限に利活用しているエンジニアリング(Engineering)という概念がいまだ理解されていません。
Z. 恥ずかしながら私もあまり理解していない。
I. 深い意味がありますが、簡単にお話しします。技術(テクノロジー)は道具、情報や知識です。技術者(Engineer)は技術を道具として製品やプラントを設計する人です。機械やプラントを設計するとき、要求される機能を、要求される環境下で、顧客が値段以上と感じる品質で提供する必要があります。エンジニアリングは製品やプラントを単に技術だけでなく、顧客の満足度(機能・コスト)、使用環境下での安全、社会への影響、すべてバランスよく最適な配合で考慮する役割を果します。更にエンジニアリングの最後にあるingは社会の変化に常に追従する意味も含まれています。
 今の町への提案は単にこれが欲しいよという要求ではなく、国や地方行政が求めている“モノ”と“コト”を理解した上での提案が必要だというものです。
Z. 説明が難しくなったが、時代の変化も加味した提案とはまさにプロフェッショナルな提案だな。
I. 最初に私が課題検討部会長から要求された“すぐできるもの”という要求とは明らかに違います。しかし、今私がスタッフに要求している文書化はこのエンジニアリング的要求なのです。
Z. そのような高度な要求を町の住民に求められるかね。
I. 先に申しましたように公園部会は素晴らしい人を配分してくれました。民間で鍛えられていますが、今まで手抜きをしていました。
 頭のよいBさんその他スタッフは見事私の難問をクリアーしてくれました。長くなりましたので彼らの提案の要点を次回に示します。

以上

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