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「ダイバーシティ時代のプロジェクトマネジメント」
~学び合う力~

井上 多恵子 [プロフィール] :6月号

 あなた自身が勤めている組織では、組織内の良い事例をどのように共有していますか?私は、例えば組織活性化のベストプラクティスを共有する際、大項目を決めて、その大項目に沿った形で活動について書いてもらい、それをイントラネットにのせていました。例えば、「概要」「活動の目的」「課題」「実施内容」「改善された点」「ベストプラクティスとして共有できる3つの点」といった形です。それまでは、各自が好き勝手に組織活性化の活動を書いていたので、大項目を揃えて書いてもらうやり方は、「分かりやすい」と好評でした。
 しかし、方眼ノートトレーナーとしての学びを重ね、フレームを使うようになってから、良い事例を共有するもっと良い方法があることに気づきました。方眼ノートというのは、横サイズの方眼用紙を複数の箱に区切り、上から順に、目標や論点、結論、3ポイント、事実、解釈、行動を書いていくものです。
 方眼ノートトレーナー仲間がメンバーとなっているフェイスブック上のグループがあります。そのページの中で、方眼ノートトレーナー仲間や彼らが教えた人たちが、方眼ノートを使って思考を繰り広げたり問題を解決したりした事例が、大量に共有されています。事例自体は、幼児と一緒に作成した絵入りの簡単なものから、主婦が片づけを上手くするために考えをまとめたもの、ビジネスパーソンが仕事上の課題を解決する際に使ったもの、大学教授が書いたものまで、扱っている対象や課題の難易度、それぞれの箱に入れる内容の書き方はバラバラです。それにも関わらず、それぞれの箱に何を入れるのかは予め決められているので、概略は理解しやすく、かつ比較しやすい、ということに気づきました。
 例えば、仕事上の課題。職種が違うと、課題の背景やそれが持つ意味までは理解できないことはよくあります。しかし、フレーム上の箱を一つひとつ順に追っていくことで、何が課題になっているのか、それをどう解決しようとしているのか、なぜそうしようとしているのか、は俯瞰したレベルでわかります。しかも紙一枚にまとめる、という制限があるので、そこに書かれている表現もある程度磨かれたものになっています。皆が同じフレームを使って書く形自体を統一してベストプラクティスを共有することによる理解度の差は歴然としています。
 先日職場で方眼ノートの研修をしたのですが、その際も、全員が同じフレームを使うことの力を感じました。演習を通じて理解を深めてもらいたい、というのがあったので、方眼ノートの型を使ったプレゼン、会議、お互いの悩み相談、研修の振り返りを経験してもらいました。プレゼンは、通常の各自のプレゼンスタイルを変えるものだったので、一回では、ピンと来ない方もいたようでした。しかし、部下が相談を持ってくる際に、上の部分を活用して、「xxの課題があり、yyという3つの点からzzということ(結論)を考えているのですがいかがでしょうか。」といった形にさせたい、と言っていた人もいました。相談の型が決まっていれば、だらだらとした話はなくなり、上司も、「この人は何を言いたいのだろう?」と無駄な脳力を使う必要もなくなり、楽になります。
課題
  1   2   3
結論

 会議は、一番腹落ち感があったようです。会議をする場合、よくありがちなのが、「そもそも何を話すのかが決まっていない」「決まっているけれど、皆がちゃんと認識していない」「議論が白熱してくると、違う方向に進んでしまう」というのがあります。そこで、方眼ノートを使って、論点を皆が見えるところに記載しておきます。いきなり解決策に飛んでしまう人もいます「なぜその解決策なのか?」と尋ねられても、「何となく、、」となりがちなパターンです。それを避けるためには、3つの箱の順番に議論していきます。その際のポイントは、「事実」を洗い出している時は、「事実」だけに皆が集中する、ということです。
事実


解釈


行動


こうして複数のグループが同じ型を使って議論をすると、共有する際も、理解が早くなります。型が同じなだけで、そこで展開される課題は様々なので、トレーナーとしても、飽きることなく、毎回面白さを実感できます。
 研修の振り返りも同じ型ですることで、研修事務局も、各人の理解度や行動の比較をすることが容易になります。どういう事実を大事に思ったのか、どこまで深く考察したのか、研修の内容が行動に結びつくものなのかどうか、といったことが、一目瞭然にわかります。研修生同士も、振り返りシートをお互いに共有すると、お互いの考え方や視点の違いがわかります。また、自分よりもはるかに行動につなげている人がいることを知ると、刺激になります。
 学び合う力は、皆が同じフレームを使って書くと高まります。その一つの手段として、方眼ノートもお薦めです!

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