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「ダイバーシティ時代のプロジェクトマネジメント」
~思わずファンになってしまう企業の力~

井上 多恵子 [プロフィール] :5月号

 3つの質問をさせてください。あなたは、「この会社のファンです」と言える会社をどれくらい持っていますか?あなたは、あなた自身が勤めている組織のファンですか?そして、あなた自身が勤めている組織のファンは大勢いますか?
 売上を上げることは、企業としての生命線。そのために、お客様が求める商品やサービスを提供することは必要です。でも、それ以前に大事なことがあります。それは、企業理念や企業の行動や組織風土に共感してくれる人々や社員がいること。その前提条件が満たされれば、その企業の商品やサービスを使ってみようと思ってくれる人も増え、いきいきと、モチベーション高く働く社員も増えます。では、どうやったら、「この会社のファンです」と多くの人に言ってもらえるような組織にしていけるのでしょうか?これは、私自身、人や組織を育て、元気にする仕事に携わって以来、考えてきた問いです。明確な答えはまだ見つけていませんが、答えを考える際のヒントは、4月にシリコンバレーで得ることができました。そこで今回は、いつもと文章の書き方も少し変えて、シリコンバレーのある新興企業を訪問した際の気づきを共有したいと思います。
  オフィスを訪問してまず感じたのは、「広々としている!」ということでした。だだっ広いという意味ではありません。個々人のスペースは、日本の私の職場でのスペースよりやや広いかな、というぐらいです。でも見晴らしの良さが、広さを感じさせてくれました。会議室の壁はガラスで、中が見えるオープンな形状。備え付けのブラインドを使って外から見えないようにすることもできるけれど、滅多にそういうことはせず、内密に何かを話さないといけない時は、オフサイトなどでするとのこと。社長室も無く、社長の机のサイズも社員と同じで、オフィスの真ん中あたりに位置していました。各自の机は高さを調整することができ、私が丁度見た時は、社長は社員と横並びになって、PCの画面を見ながら、立ったままでお話をされていました。オープンなオフィスにいると、気持ちも明るくなる感じがしました。私がいる日本の職場でも、中に誰が入っているかわからなかった会議室に替えて、オープンスペースの打ち合わせコーナーを導入したことにより、雰囲気が明るくなり、仕事も効率化しました。
 ビジョンやミッションや価値観に共感する人を採用できていることで、社員の意識のベクトルが合っている、という印象も受けました。実際話をした社員の一人ひとりが、「この会社のビジョンに共感したから」「社長を尊敬しているから」「この会社だと、○○ができると確信したから」というように、そこで働くことに決めた理由を明確に語ることができていました。ある上層部の方は、「私は、会社のミッションを実現したいから毎朝起きているのです」という発言をされていました。「この人は心の底からそう思っているのだな」と思った時に、「自分はどうなのか?」と思わず自問自答した自分がそこにいました。私は朝起きた際に、「To Do list」は思い浮かべるけれど、大きな目的は考えていない。共感できる「何のために?」があり、そこに立ち返ることができたら、モチベーションも上がり、効率も質も上がるかもしれない、と気づいた次第です。
 また、イノベ―ティブな考え方や行動が日々求められている、という話も聞きました。実際私も、「今あなた達がこの領域で困っている3つのことを教えてください」という質問を投げかけられました。イノベーションの定義にはいろいろありますが、ユーザーのニーズを新たな方法で充たす方法を考えることがその一つだとしたら、これは正しい問いと言えます。彼らがモットーとしているのは、それらのニーズの中で優先順位が高いと判断したものについては意思決定に長い時間をかけずに迅速に対応する、ということ。自分の要望を迅速に叶えてくれるだけでもファンになりますが、加えて「すごい!」と思ったのは、こちらが先方の対応に対して言ったちょっとした苦言についても一切言い訳することなく、「フィードバックをありがとう。そういう風にあなたが感じたということは、私達にとっては検討すべき点です」と前向きに受け取ってくれたことです。
 彼らと過ごした数日間で、私のワクワク感が増しました。シリコンバレー流組織の在り方に学べる点は、まだまだありそうです。会社訪問以外でびっくりした点を付け加えておきます。ウーバーが日常的に幅広く使われているということです。しかもその便利さと安さと言ったら!オフィスでタクシーを呼ぼうとしたら、ある人には、「ウーバーの呼び方しか知らない」と言われました。シリコンバレーに行かれる方がいたら、ウーバーのアプリをダウンロードしておかれることをお薦めします!

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