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「ダイバーシティ時代のプロジェクトマネジメント」
~楽しみながら結果を出す力~

井上 多恵子 [プロフィール] :4月号

 人生を楽しんで暮らす秘訣を知りたい方へ。元気なフィリピン人と接することで、ヒントを得ることができるかもしれない。彼らの明るさ、人なつっこさ、そして平凡なことでも楽しい経験に変えることができる力は、群を抜いている。
 これまで何度かフィリピン人に教える機会があった。その度に思ってきた。「なんて、素敵な研修生達なのだろう!」と。今年の3月上旬、経産省の外郭団体であるHIDA(一般財団法人海外産業人材育成協会)でP2Mを教えた際にも、そう思った。2週間に及ぶ研修プログラムの内の数日間、以前日本プロジェクトマネジメント協会の理事長をされていた田中教授と一緒に指導させていただいた。
 その時に体験したこと。朝教室に入るなり、皆が口々に、笑顔で挨拶をしてくれた。「お早うございます」と日本語で言ってくれる人もいた。朝から高いテンションだ。教室の前に立つと、皆が興味を持って私の方を見てくれた。私はいつも自己紹介で、自分の名前「多恵子」をホワイトボードに書き、「多く恵みをもらえる子供という意味です。恵という漢字は、父親の名前からもらったもの。ラッキーな子供です。今日も、一緒に皆さんと学ぶことで、多くの恵みを得たいと思っています。」といったようなことを言う。今回もそうしたところ、皆さん笑顔を見せてくれた。
 日本人相手では、残念ながら、なかなかこうはいかない。私自身の反省も含めて言うと、新しい先生が来ると、多少冷ややかな目線で「品定め」をしているようなことがある。よっぽど興味のある話をするか肩書きがすごい先生でもない限り、前のめりで聞く、ということはしない。先生の話に合わせて、笑おうとすることもしない。講師が受講生との距離を近くするような話をしても、表情を変えずにシーンとしていることも多い。
 グループワークをやってもらうと、日本人同士でもさすがにお互いに話をするので、場は盛り上がる。しかし、この盛り上がり方も、フィリピン人とは質が違うように見える。フィリピン人は、「グループワークで求められる結果も当然出すけれど、そのプロセスも楽しんじゃえ!」的なところがある。指定された時間内にワークが終わらないこともあるのだが、それはそれで、「フィリピン・タイム!」なんて言って盛り上がっている。
 今回私が担当したパートでは大きく、3つのグループワークをやってもらった。1つ目は初日の振り返り。ホワイトボード上に9つのマス目を描き、印象に残ったことを絵またはキーワードで、マス目内に書いてもらった。素敵な絵を描くだけでなく、ストーリーで学びを振り返ったチームもいた。

グループワーク

 2つ目は、「2020年東京オリンピックのような国家プロジェクトで、皆がわかるあるプロジェクト」を想定して、そのプロジェクトにおける多義性、複雑性、スケーラビリティなどを整理して発表するもの。当初出た「フィリピンで開催されるアセアン大会」という案は、その時のワークには適さないとして、各グループで代替プロジェクトを考えてもらった。その際の切り替えの早さと、素早く適切なプロジェクトを考え、短時間でグループ内合意を得てアウトプットにつなげた手法は見事だった。
 3つ目は、最終プロジェクトの発表。自発的に、夜などの自由時間も使って、称賛に価する発表を各グループが行った。貧困問題だったり、低炭素社会に向けた取り組みだったりフィリピンが直面する社会課題の解決に真剣に取り組んだ結果には。田中さんも高い評価をされていた。
 最後は、写真撮影タイム。「一緒に撮りましょう!」という人たちが何人もいて、私はにわかにスターになった気分。日本人相手ではこれは経験したことはない。写真好きということなのかもしれないが、人なつっこい。彼らと一緒にいると、こちらまでつられて楽しい気分になる。
 そして、帰国後のメールのやり取り。こんな素敵なメッセージをある参加者からもらった。

I am glad it would give you a warm and happy feeling thinking of our crazily-fun and passionate batch from the Philippines liking and learning a lot from your teachings!
あなたの教え方を好きになり、たくさんのものを学んだフィリピンからのとっても楽しく情熱的な私達グループのことをあなたが考えることで、あなたが暖かくて幸せな気持ちになれることをうれしく思います!

If and when you and your family visit Manila, please remember that you have a family here already--- your students from Feb-March 2017 batch!
あなたとあなたの家族がマニラを訪れることがあったら、あなたにはすでに、マニラに家族―2017年2月~3月の生徒―がいることを覚えておいてください!

こんな素敵なメールをもらって、ますます彼らのファンになった。人生を楽しむ達人の彼らに乾杯!

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