今月のひとこと
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  ひこにゃんの城下町  

オンライン編集長 深谷 靖純 [プロフィール] :6月号

 世の中にはいろいろなことに拘りを持っている人がいます。例えば「こんにちは」という挨拶は10時からと決めている人。汗が噴き出すほど暑くて「おはよう」の気分ではないからと「こんにちは」と声をかけたのに、10時前だと律義に「おはよう」と返してきます。
 江戸時代、時刻は日の出から日の入りまでの時間を等分していました。概ね四つ時が朝と昼の境という感じですが、今の時間に直すと冬ならば10時過ぎ、夏ならば9時頃になります。どうせ拘るなら、江戸標準時間に合わせた方が粋ではないでしょうか。

 先ごろ、所用があって学生時代を過ごした滋賀県彦根市を訪れました。NHKの大河ドラマ「おんな城主直虎」の主人公が育てた井伊直政が開いた城下町です。
 半世紀以上前の大河ドラマ第1作、幕末の大老井伊直弼を主人公とした「花の生涯」(1961年、船橋聖一原作)は、彦根市の観光産業に大きく貢献することになりました。井伊家御用達の菓子補が直弼にちなんで開発した菓子「埋れ木」は銘菓としていまだに人気を保っています。その後、戦国時代を舞台にした大河ドラマがある都度、関連イベントを企画して観光誘致に努めてきましたが、今回は彦根市の開祖のような方ですから、力の入れ方が違います。
 JR彦根駅周辺はもちろん、駅からほど近い彦根市役所には「国宝彦根城築城410年祭」の大看板が飾られていました。ちなみにこの410年祭は3月18日から12月10日までとなっていますので、この間に彦根市を訪れると何らかのイベントに出会う事ができます。詳しくはWEBでどうぞ。
 久し振りに彦根城に登りました。標高50mの小振りの山の頂上に天守閣があります。エレベータのような設備がないので徒歩で石段を登っていくしか方法がありません。この日は、和服姿のモデル嬢の撮影が行われていましたが、大変だなあと同情しました。天守閣近くでご当地キャラの「ひこにゃん」ショーが開催されるので、孫に急かされたおじいさん・おばあさんも、汗だくで坂道を登っていました。観光客の少ない平日に許可をもらってトレーニングに励んでいた学生時代を思い出します。この先、足腰が元気で彦根城に登ることができるのは何年ぐらいだろうというのが、元同級生との最近の話題です。
 なお、この「ひこにゃん」は井伊家2代目藩主が落雷から逃れられたことを由来に出来たといわれる「招き猫」がモデルになっていると聞きました。彦根市内の土産物屋には「ひこにゃん」グッズが溢れていますが、「招き猫」もちらほら見る事ができます。
 有償か無償かは分りませんが、大勢のスタッフが城内の清掃、雑草取り等に取り組んでいました。お城や博物館のあたりで、観光客の質問に答えている人もいます。城下の商店街でも整った景観となるよう、建物の造作に工夫を加えています。彦根市民全体で観光事業に取り組んでいるように思いました。

彦根城

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