例会部会
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『第220回例会』報告

横河電機株式会社 枝窪 肇 : 5月号

 日頃、プロジェクトマネジメントの実践、研究、検証などに携わっておられる皆様、いかがお過ごしでしょうか。今回は、3月に開催された第220回例会についてレポートいたします。

【データ】
開催日: 2017年3月24日(金) 19:00~20:30
テーマ: 「イベントマネジメント ~P2M研究会報告 レガシー創りマネジメント~」
講 師: イーストタスク株式会社 代表取締役 渡部 寿春氏

 今回の例会には、イーストタスク株式会社の渡部寿春氏を講師としてお迎えし、2015年10月から講師らが東京P2M研究会で研究を続けているイベントマネジメントについての研究成果を発表いただくこととなりました。
 内容としては、2019年に日本では初めて開催されるラグビーW杯および、2020年開催の東京オリ・パラ大会のレガシー創りについて東京P2M研究会で考えたことが中心となります。

イントロダクション
 通常のイベントはイベント当日に向けて準備活動し、イベントが終われば関連する活動も終了する「終わるイベント」です。しかし、イベントの後のことまで考えて始める「続くイベント」というものもあります。後のことを計画的にやることで、イベントを通して人生を豊かにする、イベントを戦略的に考えられる、というのが「続くイベント」の特徴だと考えます。
イベントとイベントマネジメント
 東京P2M研究会では、イベントは、ある目的のために、特別な時を演出し、人を集め、何かを印象づけて、その後に価値を生み出す場である、と考えました。
 PMAJイベントマネジメントSIGアドバイザーの株式会社セレスポ サステイナブルイベント研究所所長の越川延明氏は、イベントマネジメントのISO規格であるISO2012の開発に日本代表として参画された第一人者ですが、その越川氏によれば、成功するイベントには、PR内容が分かりやすい、参加者のモチベーションにつながる内容である、拡張性と柔軟性が高いことでそれ以上の付加価値が得られる、連続性を感じられることで次のアクションにつながる、行動・対象が具体的であるといった共通点があるとした上で、レガシー共創のポイントは以下であるとのことです。
 1. ビジョンを掲げる 2.機会を提供する 3.ストーリーを語る
イベントとプロジェクト
 プロジェクトの基本属性として「プロジェクト=価値創造事業」と定義されていますが、これはイベントにも通じます。また、プロジェクトの基本属性である「個別性」「有期性」「不確実性」という特性もまた、イベントに当てはまります。つまり、イベントはプロジェクトの一形態ということです。
 しかし、イベントにはイベント固有の特性があります。具体的には、ステークホルダーとしてボランティアが重要な役割を持つ、投資の回収期間が短い(開催日までに回収)、成果物が物ではなく集客や満足度などの開催結果である、などです。
 イベントをプログラムマネジメントに当てはめて考えると、①レガシー創りの観点からミッションを定め、②スキーム設定(ビジョンを掲げる/機会を提供する/ストーリーを語る)、③システム構築(企画・立案/計悪・制作/実施・運営)④イベント後のサービス提供(継続計画の実施/再編と拡張/目的の実現)を行うということになるかと思います。
 2012年のロンドンオリ・パラ大会は計画当初からレガシー計画を意識しマネジメントされた大会であり、施設面だけでなく、ボランティア精神や地域のコミュニティ活動、長期視点の選手育成など、大会後の現在も当時の活動が根付いています。
2019年ラグビーW杯/2020年東京オリ・パラ大会
 PMAJでは(公財)ラグビーワールドカップ2019組織委員会とともに活動する中で、委員の中田宙志氏にセミナーでご講演をいただくなどしています。組織委員会はチケット販売に特化した組織ですが、中田氏はプロジェクトマネジメントを活用して日本のスポーツ市場を考えようとしていらっしゃいます。
 ラグビーW杯におけるレガシー検討においては、ノーサイドの精神を日本に広める事、ラグビーを日本でよりメジャーなスポーツにすることが考えられています。
 東京オリ・パラ大会については、経済成長政策としての戦略は検討されていますが、組織的なレガシー検討は、昨年ようやく大会組織委員会によってレガシー&アクションプランが発表されたばかりです。東京オリ・パラ大会のレガシーは、大会開催およびその後を見据え、持続的繁栄社会の実現が求められると考えます。

 以上が今回の例会の概要です。

 筆者の感想ですが、今回のご講演で、レガシー創りを見据えたイベントを企画するのに大事なのは、具体的にイメージを多くの人々に想起(各自の頭の中に映像化)させ、その実現に協力してみたいという気持ちを後押しすること、さらにイベントでの成功体験やイベント後にも継続可能なインフラを提供することで文化や風土としてコミュニティ活動などを根付かせる事だと認識しました。
 2019年ラグビーW杯および2020年東京オリ・パラ大会とも、イベントマネジメントの観点からはまだまだやらねばならないことがたくさんあると思いますが、ぜひ2012年ロンドンオリ・パラ大会での事例を参考に、成功につなげていただきたいと思いました。

 最後に、ご講演の資料が紹介されております。興味をもたれた方は、協会ホームページの「PMAJライブラリ(例会・関西例会)」に、発表資料をアップロードしていますのでご参照いただければと思います。

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