図書紹介
先号   次号

見てる、知ってる、考えてる
(中島芭旺著、(株)サンマーク出版、2017年1月5日発行、第19刷、125ページ 1,200円+税)

デニマルさん : 5月号

今回の本は、昨年8月に発売されて以来多くのメディアで取り上げられた。その話題は、著者が10歳の男の子であることと、内容が深く哲学的であることだった。当時のメディアは、紹介コピーで「10歳の男の子の言葉が、深すぎる」「10歳の男の子が書いた自己啓発本」「小さいからだの哲学者」等であった。著者の芭旺(ぱお)君は、2005年生まれ。小学校でのイジメから学校には通学せず、自宅学習を選択した。更に、9歳の頃から著名人のセミナーに一人で参加していて、その時に本を出すことを決意して、この本を出版することになったと巻末に自己紹介されてある。それと、この本が生まれた理由の中で、「お母さんのフェイスブックを借用してメッセージの交換をしながら、ぱお君の言葉から本にする価値があると確信した」、更に、「言葉に力があり、もっと自由に生きていいんだと、ぱお君に教えられた」と出版社の編集長が書いている。筆者も同じ様な衝撃を受けた一人である。

「見てる」とは         ――汚れのない眼鏡を持って見る――
一般的に子供は純真で偏らない見方で世間を見ている。著者は、「同じ場所でも、違う方向を見れば、また違う景色が見える」(47ページ)と書いている。原文は漢字でなくひらがなで書いてあるが、その言葉から純真さを超越した凄さを感じる。それにサブタイトルの「汚れのない眼鏡を持って」も著者の言葉だ。どちらも物事を多面的に捉え、深く考えていることが伺える。学校では教えてくれない、自分で考えて本質を見極める天性に溢れている。

「知ってる」とは        ――世界を知りたいという好奇心――
子供は色々なことに興味を持ち、好奇心の塊の様である。著者は、その好奇心の目を世界へ広げている。「世の中は誰かの思い込みによってつくられている。ということは誰でもつくれるということ」(68ページ)と「常識」について書いている。学校に行くという常識をも、皆の思い込みから出来上がっている。だから学校に行かないことを自分で決めたと言う。親は子供の判断を受け止めて自宅学習とした。この子にしてこの親がありという事か。

「考えてる」とは         ――考える頭も持つ小さな哲学者――
著者は巻末に「本を書くという事は、自分の頭の中を知りなぜそう思うかを考える様になる」と書いているが、「悩んでいた昔の自分にプレゼントする本を書きたいと思った」と本音も語っている。現在は12歳、将来のぱお君の人生設計について「取り敢えず、今の自分でない自分を探したい」「多分学校じゃなくて、興味あることをやっていこうと思っている」とある雑誌のインタビューに答えている。逞しい小さな哲学者が書いた内容ある本である。

ページトップに戻る