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「日本再生“アベノミクス”を成功させるために何が必要か」 (37)
高齢化社会の地域コミュニティを考えよう (13)

東京P2M研究会 渡辺 貢成: 4月号

Z. 先月号でIさんは【魅力ある地域公園づくり】というプロジェクトの責任者となり、「日本的ムラ社会にどっぷり漬かってみよう」という決心のように聞こえたが、その後の展開はどうなったのかな。
I. お陰様で、周囲の人との軋轢もなく、ワークショップ以降も順調に進展していますが、話が長くなるので、タイトルをつけて話をつづけます。
1. 日本的ムラ社会に向けた私の発想の変化
  1 ) アマゾン新刊書の紹介から図書館利用までのいきさつとその成果
日本的ムラ社会の住人に成り下がったか?!
 現在は有能な住民としての立場を維持していますが、再び勉強をしたいと考えました。折しもメールでAmazonから「地方再生と町内会・自治会」、「町で闘う方法論:自己成長なくして、地方再生なし」、「近助の精神:近くの人が近くの人を助ける防災隣組」、「対話する社会」、「“町内会”は義務ですか?コミュニティと自由の実践」、「どこまでやるのか、町内会」、「不寛容の本質:なぜ若者を理解できないのか、なぜ長者を許せないのか」という本の紹介です。
 Amazonは多読の購入者に、近々の購入実績から推定した新書を紹介してくれます。ご覧のように紹介された本は日本的ムラ社会内の葛藤に関連する本です、目下のテーマだけに読みたい本ばかりですが、これ等すべての購入は不可能です。仕方なく町の図書館に行って、類似の本を探すことにしました。理由は2つありました。数年前に出版された本でも多くのノウハウが書かれていると思ったこと。次は新刊書を読み、採用した主張は日本的ムラ社会の住人から見ると先端すぎ、反発される恐れがあるという反省から過去の図書の勉強も必要と感じました。
 幸い図書館の係りの方は、紹介された上記“新書”の著者名で図書館にある本を調べてくれました。
 借り出した本は「あなたの“町内会”総点検」1994出版、「町内会のすべてが解る:疑問難問100問100答」2008年出版です。町内会の役割がどんどん変わってきていることが分かりました。
 3冊目は「住民・行政・NPOの協働で進める“地域再生マニュアル”」2010年出版です。この本は特殊地方自治で成功した実践事例を紹介する本でしたが、現状のどの「日本的ムラ社会」にも通用すると感じ、本書の序章の目次を紹介します。
  序章 地域再生に道筋はあるか
序章だけで、この本の内容が分かります。

3つの成果
 日本的ムラ社会だけでなく、すべての集団は変化しながら存在するが、その集団の関連する環境によって相違がある。しかしいかなる場合でも、集団に参加したら、集団から認知されて活躍しなければならない。この法則を正とすると、
第1の成果:部会長が実施したやり方は地域再生活動では現在では常識的なものであることがわかったが、私が感心したのは彼の戦術です。
“アベノミクス”の地域創生活動で国からの予算が付いたため、町はその活動のために課題検討部会を立ち上げ、検討部会員を住民から募集した。
ここで彼の戦術を紹介する。
地域開発コンサルタントとコンビを組み次の企画をした。
採用公募者に彼の考える町の課題を提出させた。
提案がたくさんあり、その整理のため「すぐできる内容」を選択することを宣言し、多くの議論をすることなく3つのテーマを選び責任者を決めた。
3テーマはプロジェクト内で検討を進めることもなく、「少ない予算ですぐできるモノ」として、ワークショップを行うことを決めた。理由「住民の要望を聞いてから、検討会を進めよう」という提案で、住民の意見を聞くという魔法で、テーマの選定の議論を省いたことは賢者の手法であった。テーマの選定を議論していては年度内にまとまらないと考えたからだ。
第2の成果:私は日本的ムラ社会の新人であったため、掟に従い、静かに賢者の提案を受け入れた。おかげで提案されたテーマのプロジェクト責任者になった。(第一歩を踏むことができた)
第3の成果:コンサルタントはビジネスをつくることに成功したが、ワークショップの成功で、継続的な地位を確保できた。
地位確保のための手法を説明する。
STEP1: ワークショップ成果物の内容を再整理し、解析し、課題の具現化に向けた基礎資料に改編する。
STEP2: ワークショップへの期待と効用
①意見を出す→これに反論・ダメ出しはしない
②人の意見から気づきが生まれる→新しい意見がでる→
 コラボレーションが生まれる。
③関係者に知識があると行動になって現れる→従来にない新しい
 ビジョンが生まれる→明確な展開が期待できる
本ワークショップはこれらの期待に沿った内容で大成功であった。
STEP3: 魅力ある公園:ワークショップの意見をまとめる
住民は公園をどのように使いたいか?
①BBQ(バーベキュ)ボール遊び、多様なイベント
②対象の立地環境を考えて内容を検討提案する
(プロジェクトチームの今後の課題)
③公園の修復→現状に最も適した修復案を出す
・花壇、遊具、アスレティック、冒険広場(子供はリスクにスリルを感じることが好きだ)
・自然の広場を考えることも重要
④誰がどのように整備するか
これから実行する上での課題を考える
・管理運営:担い手は誰か、役割分担、負荷
・見直しの考え方」:立地、特徴づけ、コンセプト、
他の施設との連携
STEP4: 公園の魅力づくり:多くの事例の提案
(提案事例 7件であったが、これからの調査で更に増える)
STEP5: 町づくり行政計画手法と住民による計画手法の相違
町の行政:典型的なプロジェクト開発手法(金と時間がかかる)
将来ビジョンから出発し、リスク検討まで含む方式
住民の手法:将来ビジョンを描くことではない。
「あの公園にハーブの花壇をつくって、皆でお茶しよう」
というリアリティーのある目的をたてて実行する
 
私の感想: 3つの成果はそれぞれ教えられるところが多かった。
しかし四つ目の成果が必要である。それは町が最も望んでいる住民の積極的参加である。「住民・行政・NPO協働で進める最新地域再生マニュアル」によく書かれてある。これが来季のテーマである。
Z. よくまとめてあるね。先が見えてきたのかな。
I. 2つの問題があります。この地域再生には必ずビジネスが絡むことです。金のない計画は魅力がありません。第二が計画のブランド化です。これが日本的ムラ社会に欠けている課題です。日本的ムラ社会の特徴はモノづくり的発想で、職人的倫理観です。外から崩すこと、内から崩すことの両面が必要です。今は自重する時期です。

以上

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