グローバルフォーラム
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「グローバルPMへの窓」(第111回)
アジアと共に低炭素社会を考える

グローバルPMアナリスト  田中 弘 [プロフィール] :3月号

 1月のセネガル旅行の際に北アフリカのクスクスを2kg持ち帰った。クスクス(Couscous)は元々北アフリカのマグレブ3国(アルジェリア、モロッコ、チュニジア)で食されている世界で一番細粒のパスタで、一粒は0.3ミリ程度である。いまはフランスにもクスクス料理店が沢山あり、庶民料理として人気が高い。筆者は旧勤務先でアルジェリア帰りの同僚が現地駐在時に好んで食べていたと聞いて、一度食べてみたいと思っていたが、フランスに行くようになって、食べられるようになった。
日本風クスクス タイカレー風味  クスクスは膨張するので、鍋いっぱいの熱湯で10分くらい茹でて、バターやオリーブ油で軽く炒め、その上に根菜や肉類を、タジン鍋というとんがり三角形の鍋で蒸し煮にしたものを食材から出てきたスープごと掛けて食す。日本では専門料理店以外にはタジン鍋はないので、北海道のスープカレーや、タイ・カレー、あるいは、蓋付き鍋で、ブイヨンスープで根菜や角切り牛肉を蒸し煮にしたものを掛けても結構いける。クスクスはパスタではあるが、大変軽いので、スープ感覚で食べられ胃にやさしい。

 アフリカから帰ったら、今度はアジア・シリーズに変わり、2月は石川県の北陸先端科学技術大学院大学で、キャンパスを覆う深い雪を見ながらモンゴル、中国およびバングラデッシュの大学院生に集中講義を行い、その翌週は、東京で、イランの資源開発企業グループのナレッジマネジャー達の研修を済ませ、今は、フィリピン経営者向けての低炭素社会実現を支援するメカニズム作りに資するマネジメント研修を北千住で実施中である。
 北陸先端大の2月授業は英語・日本語併用であるが、日本語を選んだモンゴルの知識科学専攻の学生3名(博士1名、修士1名)が演習で選んだのは、危機にさらされたモンゴル遊牧民の生態系を保護し、遊牧民文化を観光資源に転換するという興味深いものであった。遊牧とは、家畜を時間と空間的に移動させながら植生、水、ミネラルなどの自然資源を利用する生活と生産様式であるが、気候変動の影響が強く、遊牧民(ノマド)の生命線である家畜の健康が損なわれており、遊牧の維持が困難になっているとのこと。
 筆者は自分でノマドであると言い廻っているが、モンゴルの学生から先生はノマドです、とお墨付きをもらった。
 中国の学生(英語選択)が選んだのは中国農村部における住居のエコ家屋化であり、このテーマでは、中国政府がモデル化を支援している農民向けエコ型生活環境整備に沿ったものであるが、衛生面やエネルギー効率で困難があるものの、伝統的な石造りの家から農民が離れられるのかという大きな問題がある。

モンゴル遊牧民生活(JAIST学生作成資料) 中国農村部モデル・エコスマートハウス(同左)
モンゴル遊牧民生活(JAIST学生作成資料) 中国農村部モデル・エコスマートハウス(同左)

 イラン人に関しては、2010年のイラン制裁時にあってもフランスの大学院で博士課程生の指導を行ってきたが、社会人の研修を行うのは7年ぶりであった。イラン人ミドルマネジャーは意識も知識も高い。そもそも、ナレッジマネジャーという職位を企業に置くことはすごい。イランの悩みは、制裁解除の道筋がまだ見えてないことと、海外により良い機会を求めての頭脳流出が止まらないことだそうだ。

(一財)日本国際協力センター【JICE】主催 イラン・ナレッジマネジメント研修団
(一財)日本国際協力センター【JICE】主催 イラン・ナレッジマネジメント研修団

 そして、2月27日から2週間続く、フィリピン経営者研修は、日本政府の低炭素化支援(気候変動対策)国際協力予算で実施されているもので、P2Mのパラダイムと方法論を使用して、低炭素化社会(Low Carbon Society: LCS)に向けた仕組み作りを案画することを主眼としている。これまでフィリピンの経営者研修を4回実施したが、フィリピンのグリーン思想、サステナビリティ意識、イノベーション・センスは高いレベルにあり、今回も良い成果がでることが期待できる。  ♥♥♥


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