図書紹介
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もう ぬげない
(ヨシタケシンスケ著、ブロンズ新社、2016年12月25日発行、第25刷、980円+税)

デニマルさん : 3月号

今回紹介の本は絵本であるが、第9回MOE絵本屋さん大賞(主催:白水社、2016年12月)で1位を受賞した作品である。この大賞は、月刊誌「MOE」が全国書店・絵本専門売場の担当者からアンケートで選んだ最も支持された本である。更に、今回発表の2位「このあと、どうしちゃおう」も著者の作品であるが、この本も面白い内容だ。そういえば、絵本デビュー作「りんごかもしれない」は、第6回MOE絵本屋さん大賞を受賞し、ここで紹介した(2014年3月号)。その時少し著者を紹介したが、イラストレータで児童書の挿絵、装画、広告美術などの分野で活躍している。絵本デビュー作の発表以来、物事を多面的に深く考えるユニークな発想で、筋書の無い「発想絵本」のジャンルを作り上げた。著者のホームページには、「日常のさりげないひとコマを独特の角度で切り取ったスケッチ集や、児童書の挿絵、イラストエッセイを発表」と書いている。紹介の本は、リブロ絵本大賞((株)リブロが、毎年絵本の良書を選定)でも入賞を果たした作品で、大人でも楽しめる絵本である。

もうぬげない(その1)       ――幼い頃の着替え時の盲想-――
この本は幼い頃、服や下着を着替える時に自分一人で脱げなかった忌まわしい経験をベースに色々な妄想を展開するストーリだ。このまま服が脱げない状態ならどうなるのか。でも幸いに前が少し透けて見える。これなら何とかなりそうだ。でも、お風呂に入る時は、お母さんに脱がせてもらわないと駄目かな。お風呂から上がって、一人で服が着られなかったら、今度は服を着られないままの状態となるが、それでも何とかなるという筋書だ。

もうぬげない(その2)       ――大人(筆者)の勝手な盲想――
大人は普通に服を着たり、脱いだり自由に出来る。なら誰でも、どこでも、いつでも服を脱ぐことが出来るのか。そう簡単ではなさそうだ。いわゆる社会常識で「もうぬげない」という場面もある。もし脱いだらという盲想からは非常識な範疇に入る。しかし、年齢を重ねると一人では、もう脱げないという時がやがて来るかも知れない。これは妄想でなく厳しい現実である。大人だから歳と伴に自然と常識には逆らえない高齢化の現実がある。

もうぬげない(その3)       ――著者の読者への優しい盲想――
著者は、普通の子供が普通に失敗する話を描くことで、誰でも物語の主人公になれることを表現したかったと受賞インタビューで語っている。それと子供が逆境に遭遇したら、それを乗り越えて成長するが、そうでない子供もいる。途中で諦めたり、自分の力ではどうにもならなくてお母さんに助けて貰う子供、そんな子供でも主人公になれる作品を著者は書きたかった。子供だけなく大人が読んでも共感して貰える気持で、盲想を深めたという。

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