トランプ自伝 ――不動産王にビジネスを学ぶ――
(ドナルド・トランプ、トニー・シュウォーツ著、相原真理子訳、(株)筑摩書房、2016年06月10日発行、第3刷、446ページ、840円+税)
デニマルさん : 2月号
今回紹介する本は、現在世界中で最も注目されている話題性の高い人が書いた本である。その名はトランプ氏、昨年のアメリカ大統領選挙で大方の予想に反して当選を果たし、これから世界を動かす人である。筆者はトランプ氏が大統領に当選判明した日に、直ぐにこの本を買い求めた。それはトランプ氏がどんな人物であるか、それとアメリカが氏を必要とする背景とは何か等々を知りたかった。そこで当人も書いた自伝から、選挙中に色々発言された内容を確かめたかった。この本はトランプ氏が30年前の1987年に書いたものだ。そこから我々が知らないトランプ氏の生い立ちから40歳までのサクセス・ストーリを探って見たい。そして、この本が全米でミリオンセラーとなった点も興味ある。もしかしたらこの時点から、30年後に大統領になることを秘かに計画して活動していたのであろうか。実はこの著書に、その点に関する興味ある記述が何箇所かあり、それも含めて紹介したい。
不動産王 ――ニューヨーク・マンハッタン――
本の副題にもあるが、トランプ氏は不動産王である。1970年代にニューヨーク中心街のマンハッタンで不動産ビジネスを始めて財を成した。その象徴とも言われるトランプ・タワー等々を保持して、自己資産は1兆円とも言われる。ビジネスは、ニューヨークのウエスト・サイドの鉄道跡地の再開発、ミッドタウンのホテル買収等で成功を収めている。その中で「取引(ディ―ル)に魅力を感じ、スリルを喜び」「現在に焦点がある」と書いている。
ホテル・カジノ ――アトランティク・シティ――
取得した不動産は、ホテル・カジノや高級住宅やコンベンションホール等の付加価値の高いビジネスに発展させている。ウエスト・サイドの跡地にはテレビジョン・シティを建設、ニュージャージ州のアトランテックシティでは、既存のホテルを買収して「トランプ・プラザ・カジノ」とカジノ施設を作っている。その成功過程は平坦ではなかったが、「最悪を予想して最高を手に入れる。その為に言葉だけでなく断固実行する」と信念を語っている。
第45代大統領 ――強いアメリカを目指して――
この本に、将来大統領になるとは書いてない。しかし、最後に「これからの課題は、手に入れたものの一部を社会に還元する、独創的な方法を考える」と述べている。だが、トランプ氏が2000年に出版した「The America We Deserve(我々にふさわしいアメリカ)」で国家の貧困化や年金・社会保障問題の深刻化を指摘している点を、出版社が補足している。この本から先を予測し難いが、大統領就任以降の世界の潮流変化に強い緊迫感を感じる。
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