東京P2M研究部会
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イベントマネジメント
- P2M研究報告 1/2 「レガシー創りマネジメント」 -

イーストタスク株式会社 渡部 寿春 [プロフィール] :2月号

 イベントは時に脚光を浴び、一過性を持ち、社会、経済、環境に正と負の両面の影響を与える。イベントとイベントマネジメントが明確に意識されることは少ないが、イベントには「特別な時」を演出し人を集め何かを印象付けて、その後の価値を生み出す特徴があり、イベントマネジメントは何かを変えるための「特別な時」の活かし方である。
2012年のロンドンオリパラ大会では、イベントマネジメントの国際規格“ISO20121”を用いてロンドン東部の再生をレガシーとする総合的なプログラムマネジメントが行われた。
今回は、東京P2M研究会で2019年に初めて日本で開催されるラグビーW杯と2020年東京オリパラ大会のレガシー創りについて考えた要点を2回に分けてお伝えする。

【要点】
イベント体験「箱根KIKORI」の思い出
イベントとイベントマネジメント
イベントマネジメントの国際規格
2012年ロンドンオリパラ大会
2019年ラグビーW杯
2020年東京オリパラ大会

1. イベント体験「箱根KIKORI」の思い出
 2001年に小さなイベントを企画し、その後にレガシーが出来た体験がある。森林ボランティアグループ「箱根KIKORI」の思い出である。NPO地球緑化センターの活動だったが、ボランティアが主体的に森林整備を企画し箱根を拠点に林野庁などと連携して作業を行う活動はそれまで無かった。使われていない営林署の小屋を改修し道具置き場にすることから始め、2001年7月に30名程の参加者でバーベキューを囲み開始式を行った。そして、この活動は日本財団の助成を得て今も続いている。これに至る最初のイベントは、箱根の森林散策である。そして、活動の【モットー】と【理念】を話し合った。このグループを 次のアドレスで確認できる。
【モットー】
  箱根の山を「素敵」にし、併せて自分達も「す・て・き」になる。
【理念】
(1) 自然との共生文化を創造する。
(2) 森林資源及び森林財産を市民参加によって保全する。
(3) 森林を社会的なコミュニケーションの場にしていく。

この時に出来た理念や活動方針は今も変わっていない。

2. イベントとイベントマネジメント
 イベントと言えば、運動会や文化祭などの学校行事、個人的な誕生会やパーティー、オリンピックやワールドカップなどのスポーツ大会、展覧会や博覧会、演劇やコンサートなどの興行、地域で行う祭りなどを指すのが一般的である。また、販売促進のために行われる特別セールや有名人のサイン会などもイベントと称される。最近では、イベント情報サイトが多数の講演イベントの販促を行っている。イベントには、営利目的の場合と、そうではない非営利の場合があるが、共通する特徴がある。人を集め、何かを印象付け、特別な時を演出することである。オリンピックや全国高校野球選手権のように4年又は1年毎の周期的に行われるものと、博覧会のように1度限りのものがあるが、いずれも特別な時の演出がある。イベントとは、ある目的のために特別な時を演出することとも言える。そして、特別な時を境に何かを変えることが目的の中に含まれると考えられる。

イベントは、4つの要素で表せる。
イベントは、4つの要素で表せる。

イベントには、ビジネスや一般的なプロジェクトとは異なる固有のマネジメントが必要と考えられる。これを、イベントマネジメントと称す。

3. イベントマネジメントの国際規格
 イベントマネジメントの国際規格“ISO20121”があり、本文に次の記述がある。
 (出典:一般社団法人 日本規格協会 ISO20121:2012)
「この規格は、イベントの持続性を改善するために、イベントの持続性に関するマネジメントシステムの要求事項を述べている。マネジメントシステム規格は、組織のプロセス及び考えが継続的にパフォーマンスの改善を促すことの挑戦であり、そして、組織がイベントに関連する活動を、イベントの狙いから逸脱することなく提供できるような柔軟性を与える。マネジメントシステム規格は、イベントの持続可能性に関する成果の評価のためのチェックリストや報告のフレームワークではない。」

イベントの定義: 体験を作り出す、及び/又はメッセージを伝達するための時間及び場として関心を集めるために計画されたもの。
レガシーの定義: イベントの後に残される結果。
 
レガシーは、イベントの物理的、経済的、社会的、環境的な影響を含む。
レガシーは、イベントの結果として新たに習得することも含まれる。(例.新たな知識、訓練、基準、ベストプラクテイス、技能、組織、システム、関係、パートナーシップ、イノベーション)
利害関係者
A) イベントオーガナイザー
B) イベントオーナー
C) 要員
D) サプライチェーン
E) 出席者
F) 参加者
G) 規制機関
H) コミュニティ

一般的なビジネスは、取引を通じて売上を上げ収益を確保する。開発型プロジェクトは、予定した費用、品質、期間で物を仕上げる。イベントには、・・・ 続きは3月号

<参考文献>
[1] 日本政策投資銀行地域企画部「ラグビーワールドカップ2019開催による経済波及効果および開催都市の取組みについて‐経済波及効果推計 2,330億円‐」、2016年5月
[2] 自治体国際化フォーラムVol.319「ラグビーワールドカップ2015イングランド大会から学ぶ」、2016年3月
[3] World Rugby “競技規則 Rugby Union ラグビー憲章含む”、2016年
[4] Hiroshi Nakata “Sport Market in Japan & Project Management Framework 第22回PMRクラブ”、2016年9月
[5] (一財)自治体国際化協会「2012年ロンドンオリンピックの概要」,Clear Report No. 402, 2014年10月
[6] 東京P2M研究部会「平成27年度活動報告書 イベントマネジメント」、PMAJ, 2016
[7] 間野義之、「オリンピックレガシー」、ポプラ社、2013

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