PMシンポ便りコーナー
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PMシンポジウム2016の評価と「次世代への共創」

PMシンポジウム2016 Project Director 原 宣男 [プロフィール] :1月号

1.スクラップ & ビルドの英国
 10月に19年ぶりに6年間住んでいた英国を旅行した。日本と比較すると時間の流れが穏やかな英国でも木々の成長は確実に進んでおり、かつて毎日のように運転していたルートの景色がすっかり変わっていて道に迷ってしまった。しかし変化はそれだけではなかった。日本でも有名な観光地を再度訪れたのであるが、観光客がやたら多いのだ。ロンドンオリンピックの影響か裕福な中国人旅行者の影響か定かでないが、かつては閑散としていたBathの街や、それなりににぎわっていたStratford upon Avonの街が、今やたいへんな人だかりなのである。
 観光客が増えたので受付の構えを変えたのだろうか、ローマ風呂の受付もシェークスピアの家の入口も昔とは異なっていた。驚いたのはStonehengeの入口だ。かつては遺跡の傍にA344という国道が走っていて小規模な、といっても30台くらいは入る、駐車場があり、歩いて遺跡に行けたのであるが、今はその国道を廃止して、手前のRoundabout(ロータリー交差点)の傍に大きな駐車場を設け、そこに入口を構えて遺跡の傍まで専用道路を小型のバスで送り迎えするのだ。なんと5kmの国道が跡形もなく無くなっているのだ。
 昔から英国は、街を守ろうとする時、通り抜け道路の一端を行き止まりにして、多少不便にはなるが、その街に暮らす人が快適に過ごせるよう、或いはある目的が叶うよう思い切ったことを行ってきた。廃止した道路はアスファルトをはがして土に戻し、かつてそこに道路があったことすらわからないよう復帰してしまうのである。その潔さは、まったく感心するばかりである。
 これに比べ日本は、交通の便を良くすることが街を発展させるとして、今まで、やたら道幅を広くし路面を良くしてきたのだが、結果は言わずもがなである。国道が中央を走る地方の街は、車がやたらビュンビュン走り抜けるだけで、街は廃れてしまっている。一度造ってしまったものは、なかなか直そうとしない。組織の弊害だろうか、このあたり英国を見習いたいものである。

2.PMシンポジウム2016の評価
 さてPMシンポジウムの話をしよう。私は2013年にPMシンポジウムの実行委員となり、トラックリーダや企画リーダを経て昨年はPD(Project Director)を拝命したので、PDの立場から昨年のシンポジウムを振り返ってみたい。
 昨年9月に開催したPMシンポジウム2016は実行委員の英知を結集し、前年以上の成果を得られることができた。その成功要因は複合的で一概には言えないが、少なくとも前年度には無かった施策が効を奏したに違いない。以下に前年度との比較を示してみた。

PMシンポジウム2016の前年比較(企画・実績)

 2016年の目標として、参加者数の1割UPを目論んでいたが、実績はそれを大きく上回った。2日目の講演内容の充実や実行委員全員による懸命な広報活動が効を奏したものと思われる。
 今年のシンポジウムは20回目に当たる。よって、さらなる参加者の増加と内容の充実が期待されている。

3.次世代への共創
 昨年に限らず、実行委員会では、毎年過去の施策を改善するとともに新たな施策に果敢に挑戦し、結果的に集客数の増加を実現してきた。その切り替えの素早さは、どちらかというと上述の英国的である。
 日本でも街おこしプロジェクトで街が活性化した例がいくつもある。中山道の妻籠宿や東海道の関宿など。縦割りの組織で対応するよりもプロジェクトで対応するほうがうまくいくということの証であろうか。
 以前、実行委員会は一つのプロジェクトで、プロフェッショナルの集団、即ち船頭の集まりだが皆意識が高いので決して船は山に登らないと言った。よくよく考えると、彼ら実行委員のメンバーはプロジェクト管理のプロであってもシンポジウムのプロではないので、それでもシンポジウムが成功裏に終わっているのは、短に意識が高いだけでなく、実はもっと大事なこと、彼らがそれぞれ異なったタイプのプロであるからと思えてきた。アイデアを出すことが得意な人、そのアイデアを実施策に落とすことに秀でた人、その実施策をうまく運用することに長けた人、或いは場を盛り上げ、雰囲気を作り上げるのが妙に上手な人。そんな色々なタイプのプロ=「巧」がそれぞれ自分の得意を出し合って協調しながら進めることでひとつの大きな成果が生まれているのだと。これこそ、まさに今年のテーマとなる「次世代への共創」に必要な要素ではないだろうか。こんなことを考えると、今年のシンポジウム及びその準備活動が面白くなってくる。

以上

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