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コミュニケーション・スキルとしての「報・連・相」その2

プラネット株式会社 シニアコンサルタント 中 憲治 [プロフィール] :1月号

今回も前回(2016年10月号)に続きコミュニケーション・スキルの一つである「報・連・相」について述べてみたい。まずは再掲となるが「報・連・相」の定義を今一度記する。「報・連・相」とは「報告」「連絡」「相談」の3つの事をさし、「報告」「連絡」「相談」の3つはどのように違うのかを、最初に明らかにしておく。
「報告」とは上司から指示された仕事(プロジェクト)の経過・結果を上司に知らせること。「連絡」とは自分の意見を付け加えず、事実情報を関係者に知らせること。「相談」は判断に迷う時、上司、先輩、関係先にどうしたらよいかの意見を聞くこと。と定義しておく。(この定義は、組織において報連相という言葉を使う時、これとは異なった定義をすることもあるので、注意が必要である)
「報告・連絡・相談」の3つの言葉のうち、「報告」と「連絡」の2つの違いが判りにくいということをよく聞くので、今回は、この2つについての違いを明らかにしておく。
「報告」と「連絡」の違いを詳しく述べると次のようになる。
「報告」:仕事上の経過や結果を上司(指示者)や関係者に知らせること。指示・依頼されたことに対しての「結果報告」と自分の見聞きしたことを自発的に知らせる「情報提供としての報告」がある。
「連絡」:事実や情報を正確に上司や関係者に知らせること。報告の「情報提供としての報告」と似ているが、自分の意見判断は付け加えず、事実のみを伝える点が異なっている。連絡にも、上司から指示されて「義務」知らせるものと、「自発的」に知らせるものがある。
プロジェクトにおいては、「報告」はスポンサーやステークホルダーに対する進捗報告などが一般的である。「連絡」は進捗会議の開催連絡や進捗に関して、会議を持って報告する、あるいは報告書を出して知らせるまでは必要ないが、ちょっと知っておいてもらいたいことなどを知らせておくことがよくある。
それぞれを行う時の一般的なポイントは次の通りである。
* 「報告」を行う時のポイント
報告相手の都合を考える。
結論を先に、言い訳などの理由は後に。
事実と推測は分けて行う。
質問があることを前提に報告する。
まずいことこそ、早めに報告する。
プロジェクトにおいては、プロジェクト進捗の報告は進捗会議として、予めその内容と時期は決められていると考えるが、その場合は、最初にその日の議題事項を明らかにする。特に、結論を必要とする事項は明確にすることなどが求められるだろう。
又、⑤のまずいことの報告などは、定例の報告会(進捗会議)を待たなくて、中間報告が必要なことは言うまでもない。
* 「連絡」を行うポイント
状況を把握してから連絡する。
悪い結果でも報告する。
言葉の省略には注意する。
重要な事項には確認を怠らない。
早め、早めの連絡を心がける。
「連絡」はよく行われるコミュニケーション手段であるが、とにかく知らせておけば良いと考えて、安易に使われることが多い。しかし、①状況を把握してから連絡する。に関しては、ある指示事項が変更になった時に、報告書を出すまでもないが、とにかく早めに知らせておこうと「変更連絡」を行うことがよくある。しかし、「変更連絡」を受けた側は、何故変更になったのかとの疑問を持つことが必須である。このような案件の連絡は、状況を確認して、変更理由までも添えて連絡することで、仕事の質が向上する。
「報告」に関して、私にはいまだに忘れられない経験がある。まだ若かりし頃、上司が「外部セミナー」に参加し、夕方にセミナー終了後電話を掛けてきた。「私が不在中に、何か問題は生じなかったか?直帰しようと考えるが問題ないか」との電話で、電話は私の先輩がとって、「特に、問題ありませんでした」との返事をした。その後、先輩は上司と2~3分間電話を続けていたが、その様子は叱られて平身低頭といった感じだった。電話が終わった後、先輩に「今の電話は、なんだったのですか?」と尋ねると、「『特に問題ありません』の答えが、問題だったようだ!」との返事だった。訳が分からず、詳しく聞いてみると、上司は、「特に問題ありません」の答えに対し「問題ないことはないだろう、それは君の問題意識(問題状況認識)の低さだ、そこに問題がある」とのようなやり取りだったとのことだった。このことに関しては、その時は全く理解できず、「それなら、何と答えればよかったの?」とずっと疑問に思ってきたが、その後マネジメントを学ぶにつれ、それが問題解決の思考プロセスに関連することであることが分かってきた。
このことは、「報・連・相」の相談に関連することでもありので、次回(2017年4月号)で述べてみたい。

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