今月のひとこと
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PMなんて知らないよ

オンライン編集長 深谷 靖純 [プロフィール] :1月号

昨年は、暑さ寒さが極端でした。ならしてみると年平均気温は過去最高を記録したとか。環境変化への対応能力が落ちている身には、暖かい気候は有難いはずなのですが、ジェットコースターのような激しい上下動が伴うと、何ともいけません。体調を崩さないように、大好きなお酒は控えめにしましょうかね。

かつての同僚に名刺を渡すと、必ずと言っていいほど怪訝な表情をされます。「プロジェクトは分かるが、プロジェクトマネジメント(PM)とは何だ。」(ひょっとして、いかがわしい団体に所属しているのではないか?)一人二人ということではなく、数十人が同じ反応なのです。PMAJのミッションの一つに「PMの普及」がありますが、普及していないことを実感させられます。
どうして普及しないのでしょうか。PM関係の団体はPMAJ以外にもいくつかあり、それぞれ活発に活動しています。にも拘わらず、関係者以外への知名度は決して高くありません。仲間内で仲良くやってはいるものの、対外的に発信するという点で致命的な欠陥があるということではないでしょうか。
「PMなんて知らないよ」という友人・知人が多いという状況を利用して、どこに「欠陥」があるのかを探ってみたいと思います。PM関係者にとっては「言いがかり」だと思われるかもしれませんが、普及への手がかりが見つかるかもしれませんので、ご容赦ください。

欠陥の1. 「PMとは何か」を語れていない。
「PMとは、モノをつくったり、コトを成したりする際の『段取り』のことだ」と説明すると、納得する人が多いようです。ただ、残念なことに「段取り」のイメージからは、それを研究するPMAJのような団体の会員に大手の企業が名前を連ねている理由が思いつかないようです。板前さんや大工さんといった職人が演じる「段取り」には、料理や建築に関する匠の技の添え物のような印象があります。「段取り」ができない職人は板長にも棟梁にもなれないということを語り、「段取り」のポイントを押さえ大規模なプロジェクトをも推進できるようにしたのがPMだというところまで、説明して、PMのイメージをつかんでもらえるかどうかといったところでしょうか。
PMの解説書ではPMとは何かの説明の前に、プロジェクトとは何かの説明があります。「価値創造事業(または活動)である」という説明には、プロジェクトX(人気が高かったテレビ番組)のファンも納得します。ところが「始まりと終わりがある」とか「特定ミッション」といった言葉がついてくると、「おや?」と思う人が多くなってくるのではないでしょうか。世の中のプロジェクトと呼ばれる活動において、始まりがいつかはっきりしているものがどれだけあるでしょうか。むしろ、始まりも終わりも曖昧なプロジェクトが大半ではないでしょうか。しかしながら、PM関係者は、PMのマネジメント対象となるプロジェクトの「始まりと終わり」を定義します。それは、PM関係者の仲間内では、常識かもしれませんが、世間では非常識なことではないでしょうか。

解り易く説明しようとしたり、解説書どおりに説明しようとしたり、いろいろと工夫してみても「PMとは何か」を語るのは難しいですね。そもそもPMの普及にあたり、「PMとは何か」を理解してもらう必要があると考えること自体が間違い(欠陥)かもしれません。
今後、PMがどうして普及しないかについて、「欠陥」という切り口から、時折、探っていきたいと思います。

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