PMプロの知恵コーナー
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「エンタテイメント論」(105)

川勝 良昭 Yoshiaki Kawakatsu [プロフィール] :12月号

エンタテイメント論


第 2 部 エンタテイメント論の本質

6 創造
⑤優れた発想は、「一人思考」だけでなく、小人数の「グループ思考(交流、協力、競争等)」でも生まれる。


●魚PJT
 淡水魚の魅力や迫力を出すため、地球大陸移動の一大激変の歴史と淡水魚を絡ませることなどに関して「理性的発想」と「感性的発想」の観点から、検討チームで何度も、何度も話し合い、議論した。勿論、小人数グループ思考で取り組んだ。

 しかし優れた発想は、直ぐには生まれない。何度も、何度も、考え、考えた末に突然生まれる。従って何度も考えるための気力がなければ人は考えられない。考える気力だけでなく、実現したいという強い願望も特に必要だ。

 また優れた発想が生まれそうな予感を持った場合や過去に何度も優れた発想を生み出した経験がある場合、比較的に容易に誰しも優れた発想に行き着く。とにかく「考え、考え、考える」のである。猿でも考えているのだから。

出典:猿も考える Efficlassroom.com 出典:猿も考える
Efficlassroom.com

 岐阜県職員は、民間企業で働いた経験を持たない。また経営的センスも十分ではない。彼らは公務員としての教育を受け、その仕事にそれまで徹底して従事してきた。しかし水族館プロジェクトの開発チームのメンバーとして彼ら職員は、かなり苦労したが、民間企業の社員に負けず劣らず、立派な成果を出した。

 筆者は、本プロジェクトの「基本コンセプト」を思い付いた以降は、以下の様に本プロジェクトを推進した。
基本コンセプトに沿ってプロジェクトが適時、適切に計画が具体化する事を要所、要所でチェックした。
岐阜県と(株)セガのそれぞれの担当者同士の議論と自由な発想に徹底的に任せた。
両者間のコミュニケーションが巧く機能しない場合や誤解や誤認などが発生した時は、その解決や解消に全力を注いだことなどであった。

 そして思いも寄らぬ優れた発想が両者間で生まれた時は本当に嬉しかった。役人と民間人の混成部隊という異質の「グループ思考」が生んだ成果であった。

●昭和PJT
>昭和村は、岐阜県全体をそのまま計画に投影できるため、地元に詳しい県職員は、グループ討議で次々とアイデアを生み出した。

出典:飛騨高山 岐阜県観光課 出典:飛騨高山
岐阜県観光課

 岐阜県知事は、昭和村の実現に大きい期待を寄せていた。そのため様々な分野の学者、知識人などのアイデアを歓迎し、彼らを筆者や開発部隊に紹介した。

 知事、幹部職員、関係職員、協力する民間企業の社員、上記の学者、知識人、そして地元住民のすべての協力を基に見事な昭和村が完成した。

●一人思考か、グループ思考か
 さて発想は、一人で考えた方がより生まれ易いか? グループで考えた方がより生まれ易いか? これは興味深い課題である。この事については既に本論で議論した。

 日本には昔から「三人寄れば文珠の知恵」という諺がある。そのため多くの日本人は、グループ思考の方が知恵を出し易いと考え、「ブレスト」と称して皆で議論する事を大変好む。ならば「夢工学式発想法」は、どちらの思考を薦めるのか? その答えはどちらも薦めるのである。

 なお筆者は、昔から経験的に「グループ討議は、5人を限度」として実践してきた。例えば10人ぐらいになるとグループ討議で発言をよくする人物と逆に発言しなくなる人物に2極分化する。これでは拙い。グループ・ダイナミックス論の存在を知って筆者の経験則が正しかったことが証明された。

 「優れた発想」さえ生まれれば方法論は何でもよい。しかし多くの事例や筆者の経験から個人思考とグループ思考を繰り返すことがベストである様だ。是非、多くの読者にこの事を薦めたい。


●一人思考とグループ思考の長所と短所
 繰り返しになるが改めて述べたい。「一人思考」の長所は、第三者の意見やアイデアで惑わされず、純粋に自らじっくりと考えられることである。更に数多くのアイデアを思いついたら自らの頭脳が寝ている内に生み出されたアイデアの価値を取捨選択し、不要なアイデアを切り捨てるというメリットがある。しかし独りよがり、唯我独尊、独断偏見などに陥った発想になる短所がある。

 「グループ思考」の長所は、グループ・メンバーの様々な個性がぶつかり、様々な面白い発想を産出せるところにある。しかしメンバーの数が多くなると、各人の発言総量が劇的に増える一方、お互いに議論し、意見を交換する機会が劇的に減少する。その結果、発言や議論に加われないメンバーは沈黙する。そして声の大きい人物、発言に迫力のある人物などの議論が会議を支配するなどの短所がある。

 個人思考とグループ思考を繰り返し、グループ思考は4~5名ですることが最適である。


つづく

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