東京P2M研究部会
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文化創造事業
- Rugby WCP 2019 legacy その2-

東京P2M研究会 内田 淳二 [プロフィール] :11月号

【はじめに】
10月号につづき、ラグビーWCP2019の成功支援プログラムのミッションプロファイリングに関する私案をまとめてみました。
あれから1年、これから3年
2015.9.19:世界のラグビー界の歴史に残る快挙をラグビー日本代表が成し遂げた日から、早1年が経ちました。現在、ジェイミー・ジョセフ新ヘッドコーチ率いるラグビー日本代表は、3年後のワールドカップ日本開催での8強進出に向けて11月5日の対アルゼンチン戦を皮切りに、欧州遠征ツアーを行い世界ランク上位のジョージア代表、ウェールズ代表、フィジー代表とのテストマッチを行うべく更なる高みを目指して再び始動しました。スポーツを見る側・支える側の我々も始動しなくては・・・と思う昨今です。
スポーツ基本法
 さて、我が国は、1964東京オリンピック開催に先立つ1961年にスポーツ振興法を制定し、全国民の支持を得て社会・経済の進歩・発展に大きく寄与すべく見事な成果を上げることが出来ました。あれから半世紀を経て経済成長一辺倒でやってきた日本は、もはや持続可能で安心・安全な社会ではなくなりつつあるようです。
 このような状況の中、2009年にラグビーワールドカップの日本開催が決まり、2013年にオリンピック・パラリンピックの東京開催が決まりました。政府は、2011年にスポーツ振興法を改正し、スポーツ基本法としスポーツ立国を新たな国家目標に掲げたことを世界が評価したことが招致成功の一因にあったのではないでしょうか。
 スポーツ基本法の前文には、スポーツは世界共通の人類の文化であり、地域社会の再生に寄与するものでもあり、健康で活力に満ちた長寿社会の実現に不可欠であるとし、多様な主体の連携と協働スポーツ立国を実現すると謳っています。
 少子高齢化で地方消滅など格差社会を助長する社会現象の克服が国家の使命となっているのではないでしょうか。
ゴールデンスポーツイヤーズ
2019年、2020年、2021年は、ゴールデンスポーツイヤーズと称されているのをご存知でしょうか?世界が注目するスポーツイベントが3年連続して日本で開催されるのです。
(下表参照/『スポーツと地域振興』シンポジウム2016.9.28開催の講演より筆者作成)

開催年度/期間
/開催地
イベント 訪日観戦客 訪日選手・スタッフ
2019/9.20~11.2/
国内各地域12都市
ラグビーワールドカップ 100万人 1,000人
2020/7.24~8.9/
東京周辺都市
オリ~・パラ~ 800~1000万人 15,000人
2021/5月/
関西1府8県
(参考URL)
ワールドマスターズゲーム 20万人 50,000人
(30歳以上であれば
自由に参加)
  2019を起点にして観光ビジネスとスポーツビジネスの相乗効果で、再び我が国の社会経済が世界に開かれた持続可能な発展軌道に乗るであろうことが期待されています。 第一走者となるラグビーワールドカップの成功は、その意味で日本全体にとっても重要なイベントと言えます。
【ありのままの姿】
スポーツのレガシー
スポーツのレガシーは、下記の5つに分類(前出セミナー資料より)できますが
1 スポーツ スポーツ施設-スポーツ振興
2 社会 文化・教育-社会的包摂
3 環境 緑化-生物多様性-新エネルギー
4 都市 都市開発-交通インフラ
5 経済 経済成長-企業振興・雇用創出-観光
筆者は、2項に注目したミッション達成をラグビーワールドカップ2019のレガシ-となって欲しいと願うもので、本稿ではここに的を絞ってみました。

ラグビーの魅力
ラグビーには、球技と格闘技の要素が合わさった他のスポーツに無い特徴があると思います。球技における自由度の高さ格闘技における規律の厳格さがその要因と筆者は考えています。特徴をWR※1が発行する”Laws of the Game2016”より要約しました。
ゲームの本質
双方15人のチームがボールの争奪と保持継続により、相手側陣地へボールを置くこと(トライ)で得点(ゴール)を争う
球技における自由度の高さ
1. ボールを持って走ることが出来る、
2. 相手を捕まえることが出来る、
3. 出来ないこと・・・ボールは前にパス出来ない(キックは出来る)※2
格闘技における規律の厳格さ
以下のようなプレーは、ラグビーゲームの本質である“ボールの争奪・獲得保持”の手段として許されておらず、反則には厳しい罰則(ペナルテイ※3)が科せられる。
1. 危険なプレー(手・腕・肘・頭・膝/殴る・打つ、足・脚/蹴る・踏む・引っ掛ける)
2. オフサイド(相手側にあるボールを相手側からプレーすることで、故意の場合はズルい汚いと看做される)
3. 危険なタックル(ハイタックル、ステイッフアームタックル、ジャンプ中の選手へのタックル)ならびに危険なチャージ・ノックダウン(相手を掴んで止めることなしにするぶちかまし、ラック・モールへの参加もぶちかますような突っ込み参加はダメ)
ラグビー精神
上述のような特徴を維持しラグビーを魅力あるスポーツとして成り立たせるためには、プレーヤーやスタッフ、レフェリーさらに観客も含めた全ての関係者が共有する価値を創出することが求められています。ラグビーワールドカップ2019組織委員会では、WRの掲げた憲章(Playing Charter)を日本風にアレンジし、これを以下の3つの言葉にまとめています。
本気でぶつかる
恐れず前へ
闘う相手へのリスペクト
ラグビ-は、これらが無くては成り立たないゲーム(永く続くことは無かったスポーツ)であり、ラグビーが広く日本に文化として根付いて欲しいと筆者が思う理由でもあります。
ラグビーが置かれている現状
一方で現状改善には厳しい条件があります。それはスポーツレガシーの分類で上げた項目の内、施設の整備改善や選手の待遇改善向上などを、どう実現していくかという問題ですが、スポーツをビジネスとして成り立たせるためのアイデアが不足していると指摘されています。※4
エンターテインメント性を備えたラグビー場の不足(最新ICT技術未導入)
トップリーグの完全プロ化の未達成(企業頼みから脱却)
観戦サポーターの組織化未達成
などなど。

【あるべき姿】
  リスペクトは、味方、相手、レフェリー、そしてその試合に関わった全ての関係者に対するものであり、最も大切なものであります。WCP2019日本大会は、アジアで初めて開催される大会です。ラグビー精神をいかんなく発揮してプレーヤーのみならず、我々、見る・サポートする側もラグビー精神を持って大会成功に貢献したいものです。

【最後に】
  今月に予定されているPMR例会では、ここにご紹介したミッションをさらにひもとき、皆さんと一緒に大いに議論したいと思っています。
ご参加をお待ちしております。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
                          
以上

<参考文献>
[1] World Rugby “競技規則 Rugby Union ラグビー憲章含む”、2016年
[2] ラグビーをひもとく~反則でも笛を吹かない理由~/李スンイル

※1: ワールドラグビー。ラグビー競技の国際統括団体、本部は、アイルランド/ダブリン、サッカーのFIFA、オリンピックのIOCと同じ役割を果たす国際機関。
LawsoftheGame(全212頁)は、インターネットで無償でDL可能。
※2: ノックオン・スローフォーワードとして、その地点での相手側攻撃権によるスクラムとなる。
※3: ペナルテイ(罰)として相手側が直接ゴールキックを狙う権利もしくは、キックによるリスタートする権利が与えられ、反則した側はリスタートの地点から10メートル後退していなければならない。
※4: 10月4日付け日経電子版記事/改革待ったなしラグビー界「失われた1年」

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