文化創造事業
- Rugby WC 2019 legacy -
当研究会では、昨年始めたイベントマネジメントの応用テーマとして2019年に予定されているラグビーワールドカップの日本大会について検討を行っております。2012年のオリ~・パラ~ロンドン大会で誕生したイベントマネジメントの国際規格であるISO20121は、今年のリオ大会でも適用され、2020年の東京大会でも適用される予定です。この規格は、環境、社会コミュニティー、経済収益バランスを図ることを目的に持続性のあるイベントを開催することを意図しており、レガシーの重要性が強調されています。2012年ロンドン大会では、ロンドン東部の再生をレガシーとする計画が当初より中心的なコンセプトとなっており、競技施設やメダルの数、ボランティアの動員やアーティストの演出などを含む総合的なプログラム構想計画が行われました。大会後のレガシーは計画的に運用されたことで全国的なスポーツ振興が実現し、今年のリオ大会でもメダル数が伸びマネジメント効果が表れています。
ラグビーワールドカップは、世界的なスポーツイベントであり夏季オリンピック、サッカーワールドカップに次ぎ3番目の規模です。このイベントを公開されている情報をもとに下記の様に整理しました。
ラグビーと言うスポーツのレガシー価値を生むには、日本では既にプロ競技として野球やサッカーが定着しており、更に、ラグビーがどの様に普及するのか、どのような姿が望ましいのか、何故、ラグビーを普及する必要があるのか検討し、関係者間で目指す姿を共有する必要があります。現在、プロリーグとして、ジャパン・ラグビー・トップリーグがありますが、2019大会後も今のままでよいのか。それとも、開催12都市を中心とした地域をベースに自立的に国際イベントを行う文化システムを創り、地方創生に貢献することは出来ないか。など、様々な可能性、拡張性が検討可能です。東京2020大会は、殆どの競技が東京で行われますが、WC2019大会は7週間に渡り12都市で開催されます。2019大会と2020大会を総合的に計画することで、より効果的なレガシーを生むことも可能ではないか等、様々な検討余地があります。
2016年9月8日(火)第22回PMRクラブにおいてラグビーW杯組織委員会の中田宙志様より、大会プロジェクトマネジメントを行う立場から下記の話題を提供頂きました。
① |
大規模スポーツイベントを取り巻く環境。 |
② |
スポーツイベントにおけるプロジェクトマネジメント。 |
③ |
日本スポーツ界の未来と課題を軸に、実際に現場で起きている生の実態。 |
交流の中で「ラグビーが普及すると社会は良くなると思うか?」と言う話題が始まると、参加されたラグビーの経験者で、且つ、熱いファンの方は「良くなると思う」と率直に答えておりました。そして、ラグビー憲章に示されている精神が理由とのことでした。
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品位(Integrity) |
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情熱(Passion) |
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結束(Solidarity) |
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規律(Discipline) |
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尊重(Respect) |
ラグビーは、ルールが複雑で怪我が多く、集団でぶつかり合う激しい競技です。一般的には、手軽なスポーツとは思われていません。しかし、近代スポーツの起源が「気晴らし」、「レジャー」から生まれたのと同じく、ラグビーも楽しむことから始まりました。日本ラグビー協会の掲げる理念は、 “We are Rugby Family 「ノーサイドの精神」を、日本へ、世界へ”です。価値観、美意識、ラグビーそのものが持つ力の発信です。
話題では、「プロジェクトは大会準備に向けた取り組みで精一杯、レガシー検討までは至っていない」とのことでしたが、2012年ロンドン大会がレガシー検討から大会内容を構想したように、新たな文化創造事業としてWC2019大会を開催すべきではないかと思いました。文化は、ハード(施設)、ソフト(ゲームを楽しむプログラム)、ネットワーク(人と地域を結ぶコミュニティー)で構成されるシステムとなることで持続的となります。このシステムを開催都市の自治体を中心とする関係者間でイメージを描き、大会のプロモーションに反映できれば、良い結果が得られるのではないか。当研究会は、今後もラグビーWC2019大会をP2M実践活動の一環として応援したいと考えおります。又、これを目的とした専門のSIG設立も視野に入れております。
ご関心のある方は是非、お申し出下さい。お待ちしております。
以上
<参考文献>
[1] |
日本政策投資銀行地域企画部「ラグビーワールドカップ2019開催による経済波及効果および開催都市の取組みについて‐経済波及効果推計 2,330億円‐」、2016年5月 |
[2] |
自治体国際化フォーラムVol.319「ラグビーワールドカップ2015イングランド大会から学ぶ」、2016年3月 |
[3] |
World Rugby “競技規則 Rugby Union ラグビー憲章含む”、2016年 |
[4] |
Hiroshi Nakata “Sport Market in Japan & Project Management Framework 第22回PMRクラブ”、2016年9月 |
[5] |
(一財)自治体国際化協会「2012年ロンドンオリンピックの概要」,Clear Report No. 402, 2014年10月 |
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