東京P2M研究部会
先号   次号

プログラム・プロジェクトマネジメントの新しい取り組み(活動状況報告)

東京P2M研究会 デリア食品株式会社 藤澤 正則 [プロフィール] :9月号

「「ラグビーワールドカップ2019年日本大会で、レガシーを遺す」をプログラム化して、実現する」

1.はじめに
 東京P2M研究会では、ミッションプロファイリングの基礎研究やビジネスの業務改革などでのP2Mの実践研究を進めてきた。2015年度より、イベントマネジメントの研究(渡部氏)が新しい取り組みとして始まり、2016年度の研究テーマとして、「ラグビーワールドカップ2019年日本大会で、レガシーを遺すには?」について、議論を進めている。ラグビーワールドカップについては、8月のオンラインジャーナルで、詳細を述べているので、ここでは省略するが、7月の例会での「想いをどう合意形成し、展開して、計画、実行し、レガシーとして遺していくか」を議論した内容を報告する。

2.スポーツとビジネスの関係性
 スポーツは、ビジネスとは異なり、遊びの要素がベースとなって、始まったといわれるが、日本においては、2次的要素(体育、鍛練など)が加わり、独自に進んできた。
 スポーツは、大規模化、グローバル化が進むにつれて、ビジネス的な要素が大きくなってきており、イベントのビジネスとしてみると、「夏季オリンピック」「サッカーワールドカップ」「ラグビーワールドカップ」の順の規模の大きさとなっている。スポーツイベントとして、レガシーを遺した事例は、2012年に開催されたロンドンオリンピックが挙げられる。

3.P2Mの見方・考え方・進め方でのアプローチ
 これまでの実践事例より、ミッションプロファイリングから3Sモデルへと展開する問題発見から課題設定に至るP2M式アプローチを下図のように分かりやすく再構築し、実際に活用してきた。今回の事例においても、この見方、考え方、進め方でアプローチしている。

図1 ミッションプロファイリング 図2 入り口+3Sモデル
図 1 ミッションプロファイリング 図 2 入り口+3Sモデル

 本研究では、「イベントからレガシーを遺す」をプログラムとして考え、「イベント=システムモデル」「レガシー=サービスモデル」「全体企画構想(想いを展開して、形にする)=スキームモデル」がつながることにより、スパイラルアップをしながら、イベント終了後も、継続した形にすることを考えた。
 なお、プログラムを構想する場合の重要となる事項を下記のようにまとめた。
プログラムの入り口は、熱い想いから入り、綿密な計画につなげる。
関わる人の立場により、価値基準が異なるので、合意形成が重要となる。
イベントで成功するには、「そのスポーツは、何を目指すのか?」から入り、
「勝つこと:強い」「お金になること:事業」「普及すること:流行る」。
イベントから継続したモデルにするには、「このイベントを通じて、同じ場で体験できること」
「継続できるコミュニティの場の構築と運用」が必要。

4.プログラム化するために、イメージを形にする
 この内容を図式化すると下図のようになる。

図3 プログラム化のイメージ図
    図 3 プログラム化のイメージ図

4-1 入り口での価値基準の合意形成をすることは何か?
価値基準が異なると、実行時に総論賛成各論反対となる。
下記に立場による違いを示す。
主催する側の想い:イベントの成功・収益性・普及
興行する側の想い:イベントの成功・収益性
参加する側の想い:勝つこと・将来性
既存の人や組織(競技者、愛好者、ファン)の想い:勝つこと
新しく関わる人や組織(行政、ボランティア、ファン):楽しむ、喜ばれる、成長

合意形成を行うのは、企画構想から場の構築と運用を推進し、実施、実施後までの継続できる形にしていくことが重要である。

4-2 検討事項
ラグビーを通じて、何を目指すのか?
⇒ラグビーの生い立ちと全体の想い。日本のラグビーの文化は?
勝つ
⇒ベスト8以内
お金を得ること
⇒興業として成功する(総観客数140万人)
普及する
⇒ラグビー人口(12万人→20万人)
同じ場での体験
⇒参加者:行政、ボランティア
コミュニティの場の構築と運用
⇒事務局、地域のラグビー協会、プレイヤー、ファン、ボランティア、行政

5.今後の進め方
 現在、ラグビーワールドカップに関する情報の入手、プログラム化をするための進め方の検討を行い、今回のミッション「2019ラグビーワールドカップjapanで、レガシーを遺す」を実現するためのフレームワークの構築し、提案する予定である。
 興味のある方は、是非、参加をお願いいたします。

参考資料
1 ) CLAIR REPORT 2012年ロンドンオリンピック・レガシーの概要
 (一財)自治体国際化強化 ロンドン事務所
2 ) ラグビーワールドカップ2019 日本開催が意味するもの
 国土交通省 ホームページより
3 ) スポーツビジネス最強の教科書
 (著)平田竹男 2012年9月1日 東洋経済新報社
4 ) GACCO スポーツビジネス入門講座
 2015年9月2日~
5 ) 2015年度東京P2M研究会報告資料
6 ) 日本プロジェクトマネジメント協会
「改訂3版 P2Mプログラム & プロジェクトマネジメント」、
 日本能率協会マネジメントセンター、2014

ページトップに戻る