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「日本再生“アベノミクス”を成功させるために何が必要か」 (32)
高齢化社会の地域コミュニティを考えよう (8)

東京P2M研究会 渡辺 貢成: 11月号

Z. 先月号でIさんはXX町の外部の人間という立場から、内部の人間という立場になったことで、具体的な提案ができたと報告された。提案は成功したかな。
I. 先月は内部の人間という立場で、町役場から情報をいただき、立派な提案ができたことを書きました。今回は課題検討会で実施した内容を説明します。
( 1 ) わたしは2回目の会合を開く前に、部会長へこの提案を出し、簡単な説明をしました。部会長は即座に「身の丈に合った提案でないと通らない。今回はこの話は出さないでほしい」と。私が心配した日本的ムラ社会的反応でした。私の提案は町が実行しようとしている案を学び、この案をグローバル的手法でまとめるとこのようになるというものでした。しかし、会議に出席する人々は海外の人たちと交流した人はすくなく、しかも高齢者です。典型的な「日本ムラ社会」の住人だから、このままでは通らない、ことは理解しています。しかし、町がおかれている現状は、変化しないと町が吸収合併の憂き目を見る。この現状を乗り切る案を考えたという展開をしたかったのです。
 だが、現状を理解すると、部会長の反応にも一理あり、部会長の案をのみ、ポジティブ度を減らした提案書を書きました。どこの社会でも新参者は信頼されてからしか仲間入りできないからです。
 当日は結局、住宅供給公社専務理事の話が主でした。私は簡易化した提案書の提出(簡単な説明だけ)で終わらせました。
 公社専務の提案は地方創出の簡単な事例5点ほどと、公社の空き部屋の話とそれのリフォームによる若い世代への入居勧誘のはなしでした。
出席者から比較的簡単な提案が出されました。
( 2 ) 3回目の会合は都市開発専門家の話と各位の提案です。
 都市開発専門家は県下の地方自治と多く接触しており、種々の提案事例を披露してくれました。未提出の部会員からの提案があり、私の提案を参考にし、発展させたものもあり、説明に深堀に対する評価が書かれていました。
( 3 ) 4回目の会合では、提出済みの提案書の掘り下げた案が提案された。会議では個々のテーマに対する賛否を求められたが、各位からの提案はそれぞれラップしているので、集合できるものはまとめた形のテーマとして、検討会を開くことを提案した。

( 4 ) 5回目の会合は事前に3名のステアリングで整理し、3つのテーマでプロジェクトを組むことになった。
 1. プロジェクトテーマ
里山遊歩道整備
一色小学校のコミュニティスクール化に対する地域交流拠点化
魅力ある地域公園づくり
 2. 取り組み方
年度内は検討部会の分科会とし、各リーダーを置き、検討部会メンバー、それ以外のメンバーを集めて調査研究をおこなう。年度内はメンバーの公募はしない。
事前調査にあたってはコンサルタントを積極的に活用し、情報収集、専門家との意見交換、町との意見交換をおこない、公民連携の可能性を探る
 3. ワークショップの開催
上記取り組みを進め、ワークショップを開催する。
プロジェクトテーマについて、地域の若者、女性たちの意見を吸収するため、「地域課題発掘ワークショップ」を開く。参加者は公募、各地区推薦者などとし、当部会員を中心に今回取り上げる3テーマを含め、地域を担う次世代の意見を積極的に吸収。
関心ある人財は分科会メンバーに加わってもらう。

Z. 先月号でIさんは課題の内容の掘り下げ、対案として種々のアイデアを考えていたが、折角作成された提案書を検討もせずに、テーマだけきめて、皆で検討することになったということかね。それではIさん意見は全く採用されず、結果的には敗北したことになるのかな。
I. 反論があるかもしれませんが、部会長からすると私の提案が出されると、メンバーから反発され、今後の協力が得られない。どのような良案でも、協力者が出なければ廃案と同じだと、考えるべきでしょうね。長年実施されてきた日本的ムラ社会の手法かもしれません。
私は数回転職しています。私の数回の転職の経験では、その職場、業界で、すぐ活躍する人は、一見目立ちますが、究極的に信頼されていません。その業界なり、社内の業務内容、業務習慣を理解するまで目立った動きを避けることが必要であることを学びました。2年間、転職先の業務遂行のノウハウを覚えてから発言するようにしました。「この業界での経験は少ないのですが、この業界ではこのように考えていると理解しています。しかし、ここはこのような発想が適しているのではと考えます。言葉を替えると、2年間辛抱して、あなた方の考え方を勉強してきました。しかし、この場合はこのような理由で新しい提案をしますと発言することで相手に安心感を与え、尊敬されることを実践で学びました。“慌てる乞食は貰いが少ない”という諺があります。
諺はともかく、部会長が決めた日本的な手法は、プロジェクト進行の途中で、議論が原点に戻ることがままあります。何のためにこれをするのという質問がでます。これは振り出しに戻ることです。そして、このテーマより重要なテーマがあるではないかと質問されます。
今回の課題検討会で、最大のテーマは老人の健康管理ではなく、「若い人々の町への移転、若い人々への就職口の提供」です。第二が町への人の流れを増やす政策です。しかし、最近出版された「地方創生大全」によれば、市町村どこでも都市開発プロデューサの活躍により、特徴のない同種のテーマが選ばれ、ハード(道の駅等)に国の金が使われ、その維持管理に破たんをきたすものが多いと書いてありました。道の駅の成功事例は道の駅の償却をコストに入れてないための成功のようです。
したがって負けと断定するのは早計です。戦いはこれからかもしれません。

以上

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