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「日本再生“アベノミクス”を成功させるために何が必要か」 (31)
高齢化社会の地域コミュニティを考えよう (7)

東京P2M研究会 渡辺 貢成: 10月号

Z. 先々月号でIさんはXX町の外部の人間という立場から、オンラインの記事を書いてくれた。先月号では内部の人間という立場になったことで、大きな変化があったそうだが、そこのところを要約してくれませんか。
I. 内部の立場で提案することになると、XX町の現状を自らが知らなければなりません。町の広報を調べて、町が“アベノミクス”による地方創生事業の提案に成功し、XX町総合戦略の策定、それに基づく中期計画(上期・中期・下期)が策定され、現在は中期計画の段階であることが分かりました。上記計画は都市開発の専門家を含めて町で策定したものです。私はこれらの町が策定した資料を全部読み、地方創生プロジェクトを実行する部署の担当官にお会いし、町の会議での発言に備えました。これらの計画書はPM経験者から見てもよくできたものでしたが、幾多の課題も発見しました。しかし町の担当官にはその内容の追及は求めませんでした。

( 1 ) 課題検討部会とそのメンバー
課題検討会議出席者の所属と、メンバーの専門とPM能力レベル
i ) 町の関連部署:地方創生事業プロジェクト実施部門の実行担当官(Bレベル)
ii ) 町会議員(Bレベル)
iii ) 都市開発の専門コンサルタント(Aレベル)
iv ) 県の住宅供給公社XX町担当の責任者(Aレベル)
v ) 町からの委託業務の関連機関(町の社会福祉協議会、自治会、民生委員、老人会等) (Bレベル、Cレベル)
vi ) 私(町が募集した地方創生事業に対する課題検討をする部会の一員で、課題検討部会長の検討部会運営に関する補佐役。主に次回の会議用資料の作成)
課題検討部会長 Bレベル、私はAレベル
第1回会議内容:自己紹介、簡単な提案事項
第2回会議は県住宅供給公社専務理事による課題とその説明(書類提案者3名)
第3回会議 都市開発プランナー(コンサルタント)の地方創出事例の数々の事例説明
        (書類提案者3名)
第4回会議 検討委員から3つの提案事項
第5回会議 各提案の検討とりまとめ(予定)

( 2 ) 課題に対する提案書の分類
いまだ各論に対する議論を交わしていないが、主に4種類の提案があると考えていい。
分類1: 住民が不便と考えている事柄に対する町への要望
  健康へのさらなる努力への提案

分類2: 住民の創意工夫と関係者による連携協力による地域の活性化、住民相互の交流、地域活動の促進で全世代がコミュニティ活動に参加できる
  現在価値があると思われる資産の活用

分類3: ニュータウン再生で目標を決めて取り組む(都市開発プランナー案)
都市開発プランナー)の提案:オールドタウンからニュータウンへの変身
町が急速にオールドタウン化し、消滅自治体となる事実を指摘し、ニュータウン化への手順を指示。
長期にわたる持続可能な自立・自律型のエリアマネジメント機能を備え、将来において特段の再生の必要が生じない「長期耐用近隣住区」への再生を勧めた。
ニュータウン再生に係る政策課題は、都市、住宅、土地に関するものから、福祉、交通、コミュニティ等に至るまで広範多岐にわたり、包括的に対応する施策体系を整える必要があるため、これらは地域、行政の双方において、プラットフォーム(議論の場)をつくり、大胆な取り組みで、社会実験事業に着手する必要があるとの説明と、実践事例の提示。
  実践のための参考資料(文献による)
地方創生に関し、参考になる書籍が出版されており、これらを参照は事業進行に有利に展開できる。参照されたい。
[1] 笹谷 秀光著 ビジネス思考日本創生、地方創生「協創力が稼ぐ時代」
[2] 飯田 泰之他著「地域再生の失敗学」
[3] 鈴木 俊博著「稼げる観光」
地方自治は「稼ぐ」という過去に実施してこなかったことを、有力関係者を集め「プラットフォーム」の持つ機能を活かして、自律、維持可能性をもった提案をすることを目的としている。

分類4: 小学生の入学数の減少があり、将来は小学・中学校連結のコミュニティスクール案の提案を町から要請されている。

( 3 ) 提案に関する検討部会員間におけるビジョンの相違
ア. P2Mの手法でいえば、まずビジョンがあり、ビジョンに基づいて戦略があり、プログラムの使命・目的・目標が決まる。この申し入れを課題検討部会長は「本計画は町の計画である。PMの専門家はいない。そのような厳しいことを言っては誰も提案書を出さないから、最初はなんでも提案させよう」ということにした。(至極当然なり)

イ. 提案のまとめ:提案者の経歴によって明確に相違がでた
「欧米先進国の優れた手法」と「日本的村社会の伝統的手法」の相違の理解:
欧米契約社会の発想に『「賢者は歴史に学び」、「愚者は経験に学ぶ」』がある。
P2M資格者は前者を手本としている。日本的村社会は後者に属する。後者は高度成長期を成し遂げた日本的村社会の手法である。「企業の意思決定」は稟議制度であり、経験者の集団が経験上正しいと感じたものを採用して今日に及んでいる。

ウ. 筆者の提案への発想
提案がグローバル社会でも通用する内容とする。
今現実に存在しなくても、その存在が町の将来に貢献できるもの。
完成が複数の機関に関連してもプラットフォームを活用した、コラボレーションによる成果を確立し、成功に導く戦略を採用する。
従来やられていないが、成功を裏付ける要素があり、採算計画が確立できること。
町の戦略とは他の自治体とのゼロサムゲームに勝てる内容であること。

エ. 筆者が考える町の持つ価値と住民の持つ価値を活かす具体的事例
事例 1:子育て若年家族のXX町への転居募集計画
i ) コミュニティスクールでの教育システム改革
「日本型読解力」方式から「PISA型読解力」方式への転換
「日本型読解力」は日常生活に必要な、「話す、聞く、書く、読むなどの基礎的な内容を繰り返し学び語学能力を育成する」(この文科省方式→欧米流に切り替える)
「欧米PISA型読解力」は文章を読み、感想、評価、反対意見等を考え、与えられた資料から社会現象などを理解するという社会の変化に追従できる方式に切り替える。
あえて当町の児童能力の増強を考え保育園の追加設置をおこなう。ここで3,4歳児むけ「ペリー就学前(3,4歳児向け)幼児教育の採用」で、これからの町の幼児教育は認知的能力(IQ,学力、記憶力)+非認知的能力(意欲、自制心、やり抜く力、思いやり、社交性)を学ぶ。その結果は社会へ出ての成功率が高いことが集計されている。
保育園、小学校で脳科学活用の教育をあたえる。
従来の東大合格を目的とする方式から、グローバル社会で活躍できる能力を学ばせる。
ii) 子育て若夫婦むけのキャンペーン
子育て支援コミュニティ俗称【孫育て知恵袋ババコミュニティ】の設立
働く女性をコミュニティ全体で支援する組織をつくり、ボランティア自らは、自分たちの孫を育てる感覚で、紙芝居、絵本読み、折り紙、あやとり等の伝統文化の伝達も範囲内で実施する。
子育て家族にリフォーム空き家を提供。
保育園の提供(エリート小学校への入学可能)
3点セットでXX町移住希望者募集を行う。
30家族を募集すると町の住人が約100名増加可能。

事例 2:町への人の流れを増やし、ビジネス機会を増やす企画
公園改革計画を利用した観光客増強とビジネス機会の増大プロジェクト
i ) 利用されていない価値を探してみよう
吾妻山への観光客が大きな利益をもたらしていない(年間多くの観光客がくるが活かしきれていない。
73ある公園が子供の遊び場としても、多目的活用にも貢献していない。
子供のための木・花の育成、観察、昆虫育成と観察で教育的目的をつくる。
他校のための木・花の観察、昆虫教育(図鑑と実物による観察)。
湘南の海でありながら活用されていない。昔見晴らしの良いレストランがあったが、人流がなくとりやめ。復活したい(トレッキングコースの南端)。
73の公園の花壇化で観光客のためのトレッキングコースをつくる。
緑が丘の温水プールをトレッキングコースの北端とする。含む蛍公園。
プールの活用者の増大、温泉入浴者の増大、体育ジムの利用増を狙う。
人の流れができると交通網の増加が期待できる。
各公園を利用した東海道53次(絵葉書、版画による道中説明観光客用)。
伊勢参り、大山詣の宿や地域の歴史的勉学、現地産土産物販売。
公園での「コンテナー花壇」の活用を考える。
団地内有力者による自宅の花壇化。
職業的植木職人の育成。
海外観光客へのWeb広告と二世帯住宅の空き家利用。
海外の人々のためのホームステイの提供。
日本人と外人との交流による新しい文化を築く。
これらを利活用する文化人・アスリートコミュニティの設置。
秩序ある野外音楽会開催。

事例 3:ユニークコミュニティの構築
レベル1コミュニティ: 町からの委嘱事項のボランティア活動
社会福祉協議会、自治会、民生委員
レベル2コミュニティ: 老人会所属の知的・健康的・音楽的サークル
レベル3コミュニティ: 価値創出のためのユニークコミュニティ(上記事例等)
レベル4コミュニティ: ①介護に関連する生きるための支援コミュニティ
レベル5コミュニティ: ②心安らかに死を迎えるためのコミュニティ
レベルA評価活動コミュニティ:ボランティア活動者の評価システム構築
レベルB住民の幸福度評価コミュニティ:
レベルCXX町をブランド化するコミュニティ:
Z. いろいろとアイデアがでますね。
I. 人と出会うと“ゼロベース発想”がでてきます。人と会うことは真剣勝負なので、こちらの脳が活性化していないと、相手を理解することもできません。脳が活性化されると、不思議なもので、アイデアが天から宇宙線にのって、脳に到達しますから、アイデアが出てきます。
問題は検討会です。アイデアが出ない人の意見が問題です。アイデアの出ない人と出る人の相違は簡単です。権威を尊重する人々は提案に対する困難な点を見つけて反論します。反論することで経験の範囲内で権力を発揮を維持できるからです。アイデアの出る人は、人生で最も苦手なのが退屈です。面白いことを考えるのが好きです。そして一段高みに登って、生活をエンジョイします。私が恐れているのは権威主義の日本的村社会の存在です。ビジネスの勝負であれば、今掲げた提案を押し通す勇気はありますが、地元の老人とのお付き合いです。検討会がどの方向で動くか、あまり無理をしない方向で進めたいと考えています。

Z. 町の行政でも首を突っ込むとやることがいろいろとあるね。これからの成り行きを、高みの見物で見守っていますよ。

以上

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