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「日本再生“アベノミクス”を成功させるために何が必要か」 (30)
高齢化社会の地域コミュニティを考えよう (6)

東京P2M研究会 渡辺 貢成: 9月号

Z. 先々月号でIさんはXX町の外部の人間という立場でオンライン記事を書いていた。先月号では内部の人間という立場になった。何か変化があったかな。
I. 今回の会議は「経験豊富な関係者の話を聞くこと」でした。XX町地方創生に従来から関係している住宅供給公社の方の話でした。私にとって真新しい話ではありませんが、関係者が何を考えているのか、そのレベルはどの程度かを知るよい機会でした。
まず、わかったことは国内的にみれば進んだ提案でした。しかし、私が求めている内容はグローバル社会に通用するものです。検討部会の面々は、会社や役所経験者ですが、海外プロジェクトを実施した関係者はいないと感じました。ここで私案を出しても、国内問題になぜ海外に向けた提案をするのかと、反発されるだろうと感じました。今回は提案の内容を変えるつもりでいます。
Z. 第3回目の会合はどうだったかな。
I. 第3回は都市計画の専門家の提案でした。専門家としての多面にわたる話をしてくれました。
ありがたいことに、地方自治の危機的問題点を指摘した上で、これをどのように乗り越えるかという内容です。危機的問題点を下記に示します。
ニュータウンがオールドタウンになる
縮小する教育施設と有効活用
オールドタウンの再生
地方創生、変わる国の制度(規制改革)
市民によるコミュニティ再生の試み
これらはすべて、人口減少によってもたらされるものですが、人は都合の悪い話に、自分たちだけは最悪の事態にならないと思い込んでいて、なんら対策を講じていないのが問題だと指摘された。
ニュータウン⇒オールドタウンへとは:新興都市が人口増になった軌跡が、頂点を過ぎると同じカーブで人口減が始まるそうです。その結果
世帯分離による若者の減少:地域活動の担い手の減少→活気の衰退
世帯の減少:空き家の増加→地域活動の衰退化→身近な店舗の減少
公共施設利用者の減少
行政サービスのニーズの変化
ではオールドタウンはどう対処されるべきかという問題を国土交通省は以下のように見ている。
「現在の地域再生活動は支援団体ごとに発想が違い、ニュータウン再生というビジョンがないまま活動している。そこで総合マネジメントができる主体をつくることが重要だと言っている」。
国も、地方自治も人手不足、予算不足です。そこで官・地方自治は地域の資産は人財だといい始めています。トップで指揮している人は現場人の言葉が理解できないでいます。昔のように住民を命令で使うことができなくなりました。考えてみれば高度成長期の戦士が元気な老人となって、ゲートボール、グランドゴルフをするだけで、長年地方自治の役に立っていない。今や心もとない状況で高齢者の活性化が望まれている。言葉を変えると、官や地方自治は「あなた方が達成したい目的があるならば、自分たちで知恵を出し、目的別コミュニティをつくり、メンバーを活性化させ、コミュニティ間で複数課題を調整し、整合性をとって成果を出せ」と呼びかけられていると思ってください。これを理解したうえで第3回目の会合の説明を読んでください。
専門家(都市開発プランナー)の提案:オールドタウンからニュータウンへの変身
専門家は地方自治の町が急速にオールドタウン化している事実を指摘し、ニュータウン化への手順を講演してくれた。
ニュータウン再生では目標とすべき町の姿を明示すること
  長期にわたる持続可能な自立・自律型のエリアマネジメント機能を備え、将来において特段の再生の必要が生じない「長期耐用近隣住区」へと再生すべきである。
ニュータウン再生に取り組む本格的なエリアマネジメント主体の構造とすること
  各地域は主体的に再生ビジョンを策定する、しかしこれを共有するためには全体の取り組みをマネジメントし、全体と各地域との整合性をとることが求められている。
ニュータウン再生を主目的として包括的に対応する施策体系の整備が必要
  ニュータウン再生に係る政策課題は、都市、住宅、土地に関するものから、福祉、交通、コミュニティ等に至るまで広範多岐にわたるため、ニュータウン再生を主目的として、包括的に対応する施策体系を整える必要がある。

これらは地域、行政の双方において、多くの課題、隘路が存在するため、大胆な取り組みで、社会実験事業に着手する必要がある。そのためには多様な組織、グループの柔らかいプラットフォームの存在が求められている。

A. 専門家の発想はIさんが心配していた、日本ムラ発想とは異なり、現代的だと思う。この発想に対し、Iさんはどう考えるかね。
I. いま、議論している地域創生事業に関しては綺麗ごとではいけないという実践的な本が、多く出版されています。共通認識は地方自治も『稼ぐ何かを持たないと、再生は成功しない』の立場で、書かれ本が何冊かありますので、紹介しておきます。
[1] 笹谷 秀光著 ビジネス思考日本創生、地方創生「協創力が稼ぐ時代」
[2] 飯田 泰之他著「地域再生の失敗学」
[3] 鈴木 俊博著「稼げる観光」
私はこれらを読んで地方創生は稼ぐ何かがないと成功しないという現実を認識し、地域開発の研究を進めてきました。
また、都市プランナーの専門家は「稼ぐ」ということと、「プラットフォーム」という提案があり、現状をよく理解していることに満足しています。

実は町の総合戦略がすでに実施されているという話を聞いたので、戦略の実行機関である町役場の地域政策課、企画政策課を訪問し、総合戦略の実施状況について話を聞きに行きました。まず、総合戦略は完璧に近い形で策定されていたことへの賛辞を述べ、実行業務の遂行状況を聞きました。
話を聞いて、プロジェクト実行に問題点があることに気が付きました。町が実施しているプロジェクトは町の担当者がいくつもの仕事を兼務しながら実施していることです。民間企業のプロジェクトで掛け持ちプロジェクトは必ず、担当者の裁量でどこかが実施されていません。役は決められているが、全部処理できるだけの人員が不足するからです。多分問題が発生すると思います。そこの今問題を解消する何らかの提案を課題として取り上げるつもりでいます。二番目は現場経験の薄い担当者が困難に直面しても問題を解決できる能力を持ちません。この問題も何らかの手を打つ必要があります。経験のある住民にボランティア活動させることも視野にいれることを検討します。

また、私は第4回会議で何を議論するかというアイテム(課題)をまとめ上げる役割を担っています。次回はその話をします。

以上

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